【エッセイ】金色の衣をまといてラムの海に降り立ちし禁断の菓子を食す
11月某日。季節外れの陽気の中、私はある場所に向かっていた。
目指していたのは「湘南クリエイティブガトー 葦」。湘南地域に11店舗を構える、洋菓子店の老舗である。
ここでとあるケーキを買った。
今回は、そのケーキのお話。
◇
買ったのはこちら。
「サバラン」という名で売られている。
ホームページの説明はこう。
そう、サバランとは、ラム酒シロップを染み込ませた形が基本の、何とも危険な香り漂うお菓子なのだ。
◇
このお菓子の起源を少し。
18世紀初め、ロシアの干渉により国を追われた元ポーランド国王が、フランスに亡命していた際に生まれたと言われている。
ある日、元ポーランド王がおやつ(?)のクグロフにラム酒をかけたところ、これが大ヒット。
彼はフランス王ルイ15世の舅でもあった為、これが亡命先〜ヴェルサイユ宮殿〜パリへと広がり、のちの菓子職人が食通の友人の名にちなんで「サバラン(サヴァラン)」と名づけたのだとか。
ポーランド王がラム酒をかけてみた理由は、クグロフが固かった、或いは歯痛があったからと言うことで食べやすく柔らかくしようとしたのだそう。
◇
湘南のサバランに話を戻す。
通常「サバラン」で画像検索して頂くと出てくるのは、もっとこう、少ない素材で勝負しました!みたいな、ツヤツヤのブリオッシュにトッピングは生クリーム程度のシンプルな作りが多い。
しかし葦のサバランは鮮やかな黄色のクリームをまとい、2種のベリーと黄桃でおめかししたデコラティブな作りとなっている。
そして既にお気づきだろうか、「ラム」と書かれたスポイトが刺さっている。
これは「追いマヨ」ならぬ「追いラム」ができる、ラム好きにはたまらない配慮である。
では御託はこのくらいにして、いざ実食。
まずはラム無しで。
スプーンを入れて、ひとすくい…
…
…
じゃん。
ブリオッシュの上にカスタードクリーム&たっぷり生クリームが層を成している。
元ポーランド王のおやつも、初めからこれくらいクリーミーにして差し上げれば良かったのにと思うほどのなめらかな味わい。
更に掘り進めると、こんな感じ。
写真が下手で写りが残念だが、底にたっぷりシロップが隠れている。
既にこのシロップにラム酒風味がついているので、お酒が苦手な方は追いラムなしでも要注意。
またホームページには書かれていないのだが、中にオレンジピールが仕込まれている。
これがカスタードクリーム、生クリーム、ラム酒シロップのまったり感を適度に引き締めて、実に良い仕事をするのである。
◇
そして半分ほど食べた所で、いよいよ追いラム投入。
私はラム酒が好きなので、ここは勢いよく全部入れである。
パクリ。
おぉう、これは…
…
…
白昼堂々食べたらダメなやつ(いやダメじゃないけど)。
背徳感がすごいすごい。
気分は禁断の果実を口にしたアダムとイヴ。
でも最後までペロリと頂いた。
ラムが染み染みというかむしろシャバシャバのサバラン。
◇
そのあと子供が学校から帰宅。
何食わぬ顔で迎えたつもりだったが、持ち帰りのケーキにくるりと巻いてくれる紙を処分し忘れ 息子に「これなあに?ねえこれ何〜?」としつこく聞かれたのは、また別のお話。
こちらは、みらっちさんの企画#サバランさん同好会 参加記事です。
みらっちさんの元祖サバラン記事はこちら。
サバランの歴史について、もっと詳しく分かりやすく書いて下さっています。
本企画のおかげで、自分だけのためにケーキを買うという超久しぶりの経験をさせて頂きました。
購入〜実食まで、とても贅沢なひとときを過ごしました。
みらっちさんありがとうございます!
ここまでお読み頂いた方も、ありがとうございました。
参考
トップ画像: Freepik
・Wikipedia
《 ババ (菓子) 》
《 スタニスワフ・レシチニスキ 》
《 ポーランド継承戦争》