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窓からみえるは
大きな窓から見えるのは、青々と茂った葉っぱの中にぽつんと咲いた紅い椿の花。
つぼみもところどころに見える。今は一つだか咲いているが、もう少しで満開に花が咲きそうだ。
青く茂った葉をつけた枝は、片手で折れるだろうが、きっと、バキッ、と折られてなるものかと言わんばかりの力強い音を出すだろう。
葉っぱの青さからして今、この生垣の生命が一番溢れている時だ。
窓枠を額縁に、庭の景色を風景画に見立てるのは京都の『泉涌寺 雲龍院』、または『源光庵』などが有名だ。
椿の花を愛でながら、片手には抹茶をすする、、、、
わびさび。。。
と思いきや、私の左手にあるのはお味噌汁だ。
そして場所も京都ではなく、九州の田舎。
自宅から車で30分。
古民家を改装して最近オープンした古民家カフェだ。
パスタ、スープ、ステーキと洋食好みだった私だが、妊娠して重いつわりが明けるとなぜだか無性に和食が食べたくなっていた。
特に煮物が食べたい。
急いで自分の本棚から基本の料理本を探し、煮物のページをめくる。
本通りに作ったはずだが、せっかち且つ雑な性分のせいかいる作ってすぐだから味がまだ染みていないのか、どうも味が薄い気がする。
どうしても食べたい。でも、自分で作れない。
スーバーの冷めたお惣菜ではなんだかダメなのだ。
となると、外食できる場所を探すしかない。
女将のいるような小料理屋は財布の問題で諦めざるを得ないので、こじんまりとした個人経営の場所を近場で探したところここがヒットしたのだった。
不定休とのことだったが、無事営業しており、オーナーは心優しく出迎えてくれた。
平日のお昼なのでお客さんも少ない。
ちょうどいい。
庭の景色がよく見える窓側の席に座る。
趣を出すためか、窓には網戸もガラスもないようだ。
椿の花、緑の葉っぱが目に眩しい。
席に座って少しすると、お盆を手渡された。
お味噌汁、古代米入りご飯、お漬物の他はバイキング型式で好きなおかずを取っていくらしい。
なになに。
今日のお惣菜は、昆布巻、だし巻き卵、地元でとれた野菜の天ぷら、野菜の煮締め(煮物)、ピーナッツ豆腐、ほうれん草と豆もやしのナムル、紅白なます、きんぴらごぼう、ぶり大根、豚軟骨の柔らか煮物。。。
一昔前の私なら、食べなかったであろうメニューばかり。
どうしよう、、、。
全部食べたい!
お腹の空き具合と財布の中身も判断材料に、お惣菜トーナメントを頭の中で繰り広げた。
私のお盆に載せられた者たちは以下の通り。
お盆の左から、古代米ご飯、昆布巻、だし巻き卵、野菜の煮締め、豚軟骨の柔らか煮、お漬物、具沢山お味噌汁。
誘惑に負けてデザートの手作りぜんざいにも手を出した。
思うのだけどバイキングのお盆、トレーって人間性が出ると思う。
バイキングってやっぱり、自分の好きな食べ物を取る。
たくさんの種類を少しずつ取る人、カレーを大皿で食べる人、何度もおかわりする人、たくさん取ったのに残す人。
就職試験や採用試験で使えないかな。
私のお盆はどんな人間性が出ているのだろう。
早速お椀に入ったお味噌汁を飲む。
おいしい。
五臓六腑に沁み渡るとはこのことか。
野菜の煮締めも味が染みている。
一番の名物らしい昆布巻。こちらも味が染みていて美味しい。昆布が蕩けるぐらい柔らかい。かと言ってドロドロに柔らかいわけでもない。絶妙な硬さ。
昔は祖母が年末に作る煮締めや昆布巻が嫌いだった。
祖母自体が嫌いだったから、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いなのかもしれないが、食べる人の気がしれないと思っていたのに、今の私はこれ。
幼かった頃の私が見たら怒るかもしれないな。
あっという間に食べ終わり、お腹も心も大満足だ。
何だか心も体も満ち足りている。
自然からのエネルギーと食べ物からのエネルギーをもらった気がする。
メニュー表を見ているとバイキングのお惣菜メニューはその日によって違うらしい。
産休はまだまだ始まったばかりだ。
出産までにあと1回、子供が産まれてしばらくしたらまた訪れよう。