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わたしの本棚115夜~「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」
岸田奈美さんのエッセイが好きです。帯に阿川佐和子さんが「この本を読んだら強くなれる、たぶん。泣きながら笑う技と、怒りながら信じるコツが書かれているからね。」と書かれています。納得、というか、この本、読んでいて気持ちが癒されます。書くことで救われることがあるなら、読むことで救われることもあるはずで、わたしにとっては、岸田さんのエッセイが今、その状態です。
☆「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」岸田奈美著
小学館 1300円+税
本のなかにある17本のエッセイとはじめに、あとがきを含めて19本の文章の中で、特に好きなベスト3は、「母に「死んでもいいよ」といった日」「アサヒスーパードルゥゥァイいかがですか」「弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった」です。
母に「死んでもいいよ」といった日
中学2年生のとき、父親を心筋梗塞で亡くすという岸田さん。高校1年生のとき、母親が自宅で倒れます。一命はとりとめたものの、車いすユーザーになった母親は、気丈にふるまっていましたが、2年に及ぶ病院生活のなかで、陰で看護師さん相手に「死にたい」と泣いていたそうです。そんな姿を知った岸田さんの言った言葉は・・・。
先日、岸田奈美さんと岸田ひろ実さんの親子対談がオンラインでありました。
noteの編集部の志村さんのMCで、ふたりが「もうあかんわ日記」に書かれている日常について話されていましたが、内容が面白くて、話すのが上手で、本当に素敵な母子でした。「死んでもいいよ」といった過去もあれば、ひろ実さんの今年の大手術のときには、「生きといてや」といったそうで、胸が熱くなりました。
「アサヒスーパードルゥゥァイいかがですか」
甲子園球場の売り子のバイトににホットコーヒー売りがいるとは・・。気がつかなかったです。アサヒビールの売り子の採用試験、顔面偏差値が高いことは、販売業なので仕方ないかもしれないけれど、ビールでなくホットコーヒー売りという特殊な立場の売り子がおられる事実談。岸田さんの学生時代のアルバイト体験談です。
わたしも学生時代、京都の河原町にある老舗百貨店のデパ地下で、某ホテルのケーキ&総菜コーナーのアルバイトを、軟式庭球部の友人数人としていました。主として、夏季休暇や試験休みに入って、店頭販売です。店長さんがアルバイトを集めて、その日のシフトのなかで、ケーキ、総菜、まだ揚げてない揚げ物に配置を決めるのですが、たいがい、美人はケーキ売場へ、次が総菜、おばちゃんしか買いにこない揚げてない揚げ物(揚げる前の衣の状態)の順に名前を読んでいきました。こちらは、日によって、入るメンバーで変わってくるのですが、悲喜こもごもあって、だから、甲子園球場の売り子の話を読んで、懐かしく思い出しました。
弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった
優しさがつまったエッセイです。岸田さんが住む神戸の北の街もスキになるし、コンビニの店員さんも。そして、お母さん、弟さん、みんな生きているって、人間っていいなあ、と思ってしまった涙ありのエッセイでした。19本のなかで、一番好きなエッセイです。
#家族だから愛したんじゃなくて 、愛したのが家族だった #岸田奈美