さはらやさんとの「いちごつみ50tanka」

ツイッターにて、さはらやさん（https://twitter.com/0ya5udon）と「いちごつみ」(相手の短歌から一語(いちご)摘んで、次の自分の短歌に詠み込む。詳しくはこちらをどうぞ→http://kohagi-orz.jugem.jp/?eid=2349)をしました。 奇数（1,3,5…）：とわさき芽ぐみ　偶数（2,4,6…）：さはらやさん

１．

開いたら路線図のような線ばかり手のひらにある　どこへ行こうか

２．

路線図をたどれば空が笑うけど自由の檻の先が知りたい

３．

なまざかな　視線をたどればまだ海の光が見えるようなまなこで

４．

海ばかり青い地球であなたへと届けぬ想いが積もった小島

５．

サラウンド響き渡れよ地球ごとあなたをさらうんだ、さらうんだ

６．

ビル風が鳴らす寂しさふるさとの響きに似てしまった空咳

７．

タンバリンの記憶でしょうかひとしきり鳴らす私と鼓動が同じ

８．

タンバリン秋のかかとを叩いたら君の眼鏡に映る青空

９．

向かい風も追い風も好き挟まれた青空がとてもやわらかそうだ

１０．

追い風が背中を叩くもう君の隣でなくても僕はしあわせ

１１．

かつさらふ君によく似た色といふ色　クレヨンの背中を剥いで

１２．

クレヨンで描いたような輪郭で何かの死体と未来がだぶる

１３．

あれはたぶん鰯の死体　空に爪立てて猫らが食いちぎる雲

１４．

猫といる部屋に溜まった午後の日を猫と一緒に吸い込んで寝る

１５．

文庫本開き直って光にも晒されてみる溜まったほこり

１６．

冬の日のほこりは舞ってきらきらと意味のないものほど美しい

１７．

珈琲のしづくの茶色　起こされる神経の美しい稲妻を

１８．

二人分の珈琲静かに注ぐときあなたの微笑みを思い出す

１９．

雲を描くときのカモメの連なりを黒鉛はまた思い出すのだ

２０．

カモメまた明日晴れたら笑ってるみたいに鳴いて泣いて泣かせて

２１．

薄切りのレモンは歯車　あかるさといふ字の入る明日をまはす

２２．

紅茶にはレモンと砂糖と幸せと君の命日だね、寂しさと

２３．

珈琲が売りのお店で買ふ紅茶のまだ覚えない茶葉の名前を

２４．

珈琲が飲みたい深夜高速のサービスエリアで十円拾う

２５．

拾うこと。落とすこと、それをまた拾うこと。昨日見た影がなかった。

２６．

本棚にいくつも本の影ありて夜こんこんと降る文字の雪

２７．

すべりゆくひかり　磨きのかけられた革靴の夜　ひかりすべりゆく

２８．

ホーム踏む革靴あまた朝の陽の渡る線路を踏むこともなく

２９．

鍵盤はまた下り坂指で踏む度に沈むよ明るい音で

３０．

でたらめなリズムで走る下り坂あなたといれば弾むスウィング

３１．

固まった絵の具をほどく水だけがでたらめな透明をあいする

３２．

透明な朝、透明な悪意、透明になりきれない死にたがり

３３．

縫うときに込めた悪意を滲ませて人形の眼に黒い虹だよ

３４．

人形になりたい夜に目玉から涙あふれてあふれて海だ

３５．

でも、でも、デモ、あれ、何に反対をしたのだろうか　海が海で見えない

３６．

反対のホームを歩くあの人はたぶん平行世界の私

３７．

動くな。　と言われて止まる　あの人はマネキン　これは誰の声だろ

３８．

マネキンのような顔して可愛いね生きていくのは難しいから

３９．

乾くのが正解だった食用のわかめ泳いでわあ可愛いね

４０．

鍋の中増えたわかめがもっこもこ俺も増えたらきっとこんなん

４１．

くっついて俺の一部と成り果てた米粒たちと離別する朝

４２．

くっついたままでいいのに触れ合った小指居酒屋君はノンアル

４３．

指切りを人差し指で　指紋って移ってしまったり、しないかな

４４．

夕焼けの色が移って友達がほおずきみたいに笑うバス停

４５．

まだ何も始まらなくていいね、まだ何もないから夕焼け　燃えろ

４６．

秋の日のつるべ落としにまだ闇が追い付けなくて光る信号

４７．

音だけが座って待っている夜の闇に溶け込む耳のふちから

４８．

耳、みみって可愛い名前へんてこな形も愛されているんだね

４９．

人の声に押し流されて落ちてったくしゃみのういるす、名前があるのに

５０．

くしゃみした瞬間宇宙が瞬きをしたけど君は気づかなかった

さはらやさん、ありがとうございました。