しま・しましまさんとの「いちごつみ50tanka」

ツイッターにて、しま・しましまさん（https://note.mu/simashima）と「いちごつみ」(相手の短歌から一語(いちご)摘んで、次の自分の短歌に詠み込む。詳しくはこちらをどうぞ→http://kohagi-orz.jugem.jp/?eid=2349)をしました。 奇数（1,3,5…）：しま・しましまさん　偶数（2,4,6…）：とわさき芽ぐみ

１．
録画したテレビ映画に何度でもよみがえってくる速報：失恋

２．
＜＜早戻し　＞再生　録画を見返して人生のアリバイを探した

３．
アリバイのつもりで小さく挙げた手が膝に帰って不思議に淋しい

４．
甲子園の土ではないけどやわらかいあなたの庭に膝をついてる

５．
やわらかい敗北でした泣きに来た木陰にねこが陣取っている

６．
ボリュームをゆっくり下げて敗北はニュースとともに飲み下される

７．
ゆうべ見たニュースをちがう人が読みバターはパンをきしきし進む

８．
溶けきったバターの浅瀬さんさんと朝陽が照らすから食べれない

９．
でもまだだ浅瀬に足を濡らしても桃はここまで流れてこない

１０．
踏み出した足が背負った全わたしすぐ次の足出すから待って

１１．
まよなかのコップにみずを満たすのはだれかを待っているのに似てる

１２．
吹き消した火をまた満たす祝福が愛の形でありますように

１３．
サンダルでまだらに甲をやいたりなど迂闊な夏の愛の形は

１４．
滑り止めつけてたはずの心臓が迂闊な夢で動いてしまう

１５．
夢できみを泣かせたことは言わないし謝らないし忘れはしない

１６．
早々と散る花火なのに閉じ込めた罰だったんだ、あなたを泣かせた

１７．
蝉が出ていってしまった抜け殻の裂け目に花火きらきらとふる

１８．
陽だまりの裂け目のような影のなか休めばせかいの外にいるわたし

１９．
ヤクルトにストローちくり永遠はこわいせかいと聞いております

２０．
水面に放つ口笛永遠に溶け込んでゆけ魚まどろみ

２１．
半分も言葉に出来ればいいんじゃない？口笛、吸って鳴らせうらごえ

２２．
この月を半分にして…なーんてね言うと思ったかこれは大根

２３．
劣情も私情も捨ててすりおろす夏大根のじんじんからい

２４．
玉葱を微塵切りにする涙にも劣情滲ませ潔白だとか

２５．
真円にもっとも遠い玉葱から選ばれてゆく午後のキッチン

２６．
脈略のないお話を続けてよもっとも弱く作られた星

２７．
脈絡を辿ってゆけば海だった 氷ののれんがはためいている

２８．
きはやかにのれん揺れては忘れてゐた障子の破り方思ひ出す

２９．
ぐうの音もでないぐらいの爽やかさ（正しい約束の破り方）

３０．
チョコミントアイスクリームぶちまけて爽やかさとはアスファルトの染み

３１．
何味のガムだったのかアスファルトにべったり夏が張り付いている

３２．
張り付いている白いひげよく動きナットクラッカー実を割り続ける

３３．
口約束だから大事にするんでしょ もやしのひげ根ぷちぷちつまむ

３４．
潰す音ぷちぷちと呼ぶひとたちの何か潰れたような靴底

３５．
喪失を光と誰が呼ぶまでにみずうみは何度も夕立の中

３６．
さっきまでつかまえていたはずなのに手のひらが喪失の温度だ

３７．
誰の手も握っていない手のひらだからてんとう虫がほら 飛び立ってゆく

３８．
わたくしとあなたのあいだの沈黙のドットを背負っててんとう虫は

３９．
沈黙の気配を知ってバーボンがアイスキューブをぱちりと鳴らす

４０．
切り取り線に沿ってぱちりと錠剤のシート切り取る　あしたのいのち

４１．
今すぐにかるくなりたいゴミの日を待たずに棄てるふるい錠剤

４２．
手近にある緑も棄てる　バラン、バラン　草原だった頃はどんなに

４３．
歯みがき粉のスペアミントがしんみりと草原を出たあなたを冷やす

４４．
照らされてねむたくなった窓冷やすあずきバー齧るわたしもたれて

４５．
ここからは本気で行こうあずきバーはぶつけたぐらいじゃ欠けたりしない

４６．
たいていの月は欠けたりしてるけど光ってるでしょだから、大丈夫。

４７．
大丈夫、カラスは飛んで行きました気のすむまでの距離を歩いて

４８．
ピザから肘への距離ですか？(ここはどこ？)実は誰にも分からないのです

４９．
食べかけのピザを置いたらじわじわと夜の帳にあぶらが染みる

５０．
わたくしの四肢がじゆうにウゴカナイあぶらの差し方間違えたかな

しま・しましまさん、ありがとうございました。