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【ATH】fWAR17を上積みせよ ~左翼編~【オフシーズン展望その2】

*サムネイルはSportsnetから

先日、オフシーズン展望の記事第1弾を出しました。

この記事では大きな上積みをする上では、コアプレイヤーを確立しなければならないと提言。

ただ、いくらコアっぽい選手が出てきても、デプスがしっかりしていなければ元の木阿弥。過去2年の結果から過大な期待はできないものの、補強にはトライしなければなりません。

今回は野手補強(左翼)にフォーカスしていきます。

まずはペイロールチェック

デイビッド・フォーストGMは、ペイロールを増額することを示唆しています(これ以上下げようがないからな)。

ここでは、今季閉幕時点の63Mを超えるペイロールで開幕すると仮定しましょう。

つまり、オフの現時点でのコミットメントが53M(ノンテンダー候補の調停選手を含む)なので、ざっと15M以上は使うと思います。


FA補強は厳しいか・・・トレード市場も注視

しかし、いくらペイロールを増やすと宣言しても、FAの選手がアスレチックスに来たいと思うかはまた別の話です。

フォーストGMも、FA選手をサクラメントのマイナー球場に呼び込むのは困難と考えているよう。そのため、トレード市場にも注力すると発言しています。

フォーストGMは
「そのプロセス(FA選手との交渉)を開始したら、向こう側でどんな答えが出てくるか分かっていると言ったら嘘になるだろう」
「FAの選手がサクラメントに来る可能性をどう考えているかがはっきりするまで、我々はトレード市場で積極的に活動する必要がある。それが、FAが始まる前に我々が各クラブに働きかけている原動力だ」
とコメント。

ここからみると、FA選手との交渉は未知数な部分が多くありそうです。(現時点の交渉段階ではあしらわれたりはしていないそうですが)。

https://www.sfchronicle.com/sports/athletics/article/a-s-gm-david-forst-long-run-team-eyes-19893759.php

https://www.mlb.com/athletics/news/athletics-2024-25-offseason-questions

フォーストは既にドジャースとヤンキースを除く28球団にコンタクトを取っているとのこと。トレードが一件も起きないとは考えにくい状況です。


弱点は三塁と左翼

簡単に2024シーズンのポジション別fWARのグラフを出してみました。

最も低いのがfWAR-1.6の左翼、ついでfWAR-0.6の一塁、0.3の三塁、0.5の遊撃です。

この内、一塁と遊撃は光明が見えています。先日の記事でも紹介したコアプレイヤー候補生のタイラー・ソダーストロムとジェイコブ・ウィルソンが、来季からフルタイムでレギュラーを務めることになるためです。

しかし、左翼と三塁は未だ見通しが不透明

左翼は今季、主にミゲル・アンドゥハーが務めました。

左翼

アンドゥハーはwRC+103の打力でOAA-7の拙守をカバーし、fWAR0.5を記録。しかし、前半戦不振に喘いでいたセス・ブラウン、優秀なx-statsが最後まで結果に現れなかったダズ・キャメロン、2023年盗塁王が足を引っ張り、ポジション全体では大きなマイナスとなってしまいました。

三塁は前半戦はトロとネビン、後半戦からはハリス、シューマン、ヘルネイズがメインで務めました。

三塁

しかし、軒並み苦戦。WARトップが一時期だけ好調だったタイラー・ネビン(先日40人枠外へアウトライト)というのが、編成が上手くいっていないことを示しています。


三塁と左翼を除けば、捕手ランガリアーズ、一塁ソダーストロム、二塁ゲロフ、遊撃ウィルソン、中堅ブレデイ、右翼バトラー、指名ルーカーとレギュラーは定まっており(ないす)、オフの野手補強はこの2ポジションを巡るものになるはず。

今回は左翼(外野)の補強に絞って、色々書いていこうと思います。


左翼問題:ブラウンとアンドゥハーにテンダーすべきか

実は、左翼には来季も保有可能な2人のベテランがいます。それがアンドゥハーとブラウンです。

この両ベテランは共に調停権を持っており、そのパフォーマンスがコストに見合うかどうか、それを見極める必要があります。


パワーレス&守備難のアンドゥハー

まずアンドゥハーはというと、守備・パワーに期待できない一面が今季で露呈しました。

かつてはシーズン27本塁打を記録したパワーも、今季は4本塁打・7バレルに低迷。コンタクトが巧みとはいえ、フリースインガーぶりは変わらず、アベレージ頼みの打撃スタイルとなっています。

さらに左翼守備でも強肩で存在感を見せるシーンはあったものの、OAAは-7に落ち込みました。

ある意味、安定したツールであるパワー・守備に期待できず、下振れのリスクもあるアベレージにバリューを頼っていると見ると、アンドゥハーにはなかなか期待できないと思います。今季の成績を再現できることはあっても、今季以上の成績を残す可能性は、ここから下り坂になる可能性よりよほど低いのではないでしょうか。

また、細かい故障で離脱を繰り返したのもマイナスポイント。


後半戦復調したが・・・なブラウン

一方のブラウンは、アンドゥハーに比べるとより難しい決断になるかもしれません。というのも、ブラウンは後半戦に大きく復調したためです。

ブラウンは6月16日を最後にDFAされるまでは、63試合でwRC+62 / fWAR-0.7と大不振。しかし、AAAで復調し、7月11日にメジャーに復帰すると、61試合でwRC+119 / fWAR0.5と持ち直しました。

ブラウンの場合、ネックとなってくるのは、4M程度と見積もられる来季のサラリーでしょうか。

後半戦、大きく持ち直したとはいえ、前半分のマイナスを取り返せずにシーズントータルでfWARは-0.2。そこそこ打っても劣化した外野守備が原因で、バリューが伸びません。


MLB昇格間近の有望株コルビー・トーマス

トーマスは今季、AAとAAAで計575打席に立ち、31本塁打 & wRC+131と存在感を残しました。

AAAでの73試合でも既に結果を残しており、スプリングトレーニングから定位置獲得のチャンスが与えられていいと思います。

ただ、AAAでは三振率30.3%、wOBA.382に対してxwOBA.292と一抹の不安を残すのもまた事実。それでも、本塁打量産力は目を見張るものがあり、昨季25盗塁 & 今季15盗塁の走力、アンドゥハー&ブラウンよりは高い守備力から、十分期待していい存在です。

さらにAAの116試合で13本塁打・36盗塁、wRC+120と不振に苦しみながら立派な数字を残したデンゼル・クラークもいます。AFLでも活躍中のクラークがAAAで来季開幕を迎える可能性は高く、来季後半から昇格する可能性もあるでしょう。守備に高評価を得るクラークを中堅に据え、ブレデイを左翼にスライドすれば丸く収まる感じもあります。


この成績にしては高すぎる2人

ここまであらゆる点から来季以降のパフォーマンスに疑問を呈してきたブラウンとアンドゥハー。予想調停額は2人合わせて6.6M(ブラウン3.8M、アンドゥハー2.8M)と、このパフォーマンスにしてはぶっちゃけ高くないか?とうお値段です。

また、Steamerの来季予測成績を足し合わせると、2人でfWAR1.3という計算になります。今季の2人の合計fWARが-0.2であり、そこからWAR1.5を上積みするという予測はかなり楽観的に思えます。

確かにFA市場では1WARの値段が9Mとも言います。ただ、6.6Mあればもう少しマシな選手を見繕えそうなのも事実。

ここからは外部補強のオプションに目を向けていこうと思います。


外野手FA市場はなかなか豊作か

FA市場には24人の外野手がいます。その内、フアン・ソトのような手が届かない格の選手もいますが、十分射程圏内のベテランもいます。左翼の外部補強に関しては、トレード市場よりもFA市場に目を向けた方が良いでしょう。

ここでは、2年前にアレドミス・ディアスに与えた2年14.5Mを基準に、獲得してほしいな~と思う良い選手から意外な候補までを挙げていきます。


マイケル・コンフォルト

2024年成績
130試合 wRC+112 fWAR1.3

紅だあああああああああああああ(X-stats JAPAN)

31歳のコンフォルトは今季、fWAR1.3とまずまずの成績を残して市場に出てきます。Trade Rumorsでは2年18Mの契約が予想されており、ギリギリ射程圏内。

ただ、この真っ赤っ赤な期待値指標を見る限りでは、人気物件となりそうなのは確か。

サンフランシスコでプレーしていたこともあって、ほど近いサクラメントを選んでくれる可能性はゼロではないと思います。ただ、コンテンダーからのオファーもたくさんありそうですし、厳しいですねなかなか(T_T)


ハリソン・ベイダー

2024年成績
143試合 wRC+85 OAA+10 fWAR1.3

紅だあああああああああ(FRV JAPAN)

何もターゲットは両翼の選手だけとは限りません。中堅守備の上手いハリソン・ベイダーを確保し、JJ ブレデイをスライドさせるのもWARの上積みという観点では大アリです。

Trade Rumorsでは1年8Mの契約が予想されており、移籍候補にはなんとアスレチックスの名前も挙がっています👍️

ただ、ベイダーは西海岸でのプレー経験がゼロ。ニューヨーク出身の都会っ子にとって初めての西海岸が、馬鹿みたいに暑い謎のマイナー球場になるとは考えづらいです。

中堅守備のスペシャリストはあらゆる層の球団から需要があります。そのためベイダーも引く手数多になるはず。

wRC+50と引くほど打てなかったとはいえ、依然OAA+11の好守を誇るマイケル・A・テイラーは、アスレチックスにとって現実的な落とし所になるかもしれません。


ランドール・グリチック

2024年成績
106試合 wRC+139 fWAR1.5

純粋な打力という意味では、ランドール・グリチックに優る候補はいないと思います。

グリチックは6Mの相互オプションを破棄してFAに。33歳という年齢からも、2年契約をオファーできればチャンスはありそう。さらに今季はプラトーンだったことから、フルタイムの出場機会を保証できればそれも強みになるかもしれません。

ぜひサクラメントで再建の柱を担ってほしいところです。


ジェイソン・ヘイワード

2024年成績
87試合 wRC+94 fWAR0.8

なんでそんだけ肩強いのにArm Valueマイナスなんだよ

35歳のベテラン、ジェイソン・ヘイワードも候補に挙げたいところです。

OAA+2と好守は健在で、ブレデイをメインで使いながら、時折中堅でヘイワードを使うことも可能になるはず。wRC+94と打力もまだ耐えています。

そして何よりヘイワードを補強するメリットは、彼の人間性。若い選手が多いアスレチックスにとってポジティブな影響をもたらしてくれるはずです。逆の理由からトミー・ファムは一旦割愛しています。


ベン・ギャメル

2024年成績
38試合 wRC+115 fWAR0.0

ギャメルは他球団のレーダーには入らない(under the rader)候補でありながら、良いピックアップになる可能性を秘めた選手です。

今季はメッツとアストロズで38試合に出場し、wRC+115を記録。特筆すべきは四球率18.2%で出塁率.384を記録した出塁能力。さらにバレル率もキャリアハイの10.5%で、xwOBAも平均以上の.347と、今後の伸びしろに期待できます。

通算OAA-27と守備力に期待はできないものの、この出塁能力は魅力的です。

さらに今季のサラリーは1.2M。これまでの最高サラリーも1.8Mと、リーズナブルになりそうなのも魅力的です。少なくともブラウンの調停予想額である3.8Mは超えない規模になるのではないでしょうか。

ブラウンと4M程度で契約するなら、ギャメルを確保する方がベターでしょう。


現実的には・・・

FA市場におけるオプションを見ると、自前のオプション(ブラウン&アンドゥハー)よりも魅力的に見えます。

ただ、現実的な落とし所はどちらかの残留になりそうです。

アスレチックスはオフシーズン開幕と同時にダズ・キャメロンを金銭トレードに出しました。

キャメロンは今季fWAR-0.4と苦戦はしたものの、x-statsは優秀。左腕に対してはOPS.817と、安上がりなプラトーン候補としてカウントできるくらいにはアピールしました。

このムーブを見る限り、比較的安価なアンドゥハー残留の可能性は高いのかな・・・と。アンドゥハーは健康時には上位打線での重用も多く、フロントからの期待の高さも窺えました。

実際、フロントがアンドゥハーのポテンシャル、ブラウンの後半戦の復調を買って、この2人体制で開幕するならそれはそれで悪くはないと思います。問題はこの2人のパフォーマンスというよりも、コストパフォーマンスにあります。

したがって、この2人で開幕するというなら、調停を回避して安価な契約を結ぶ。あるいはテンダー期限ではテンダーせず、他候補も物色した上で、値切ってここに落ち着くとか、そういうのがほしいですね。


結局のところ、挙げたFA候補も、そしてSteamerの予測によるブラウン&アンドゥハーも、来季のfWARはよくて2程度でしょう。

たかがfWAR2。されどfWAR2。今季の左翼fWAR-1.6のアスレチックスにとっては、もし左翼がfWAR2になればfWAR3.6の上積みになります。なかなかの大補強ですよね。

左翼の補強に成功すれば、アスレチックスは目標とするfWAR17の上積みに大きく前進することでしょう。




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