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【OAK】トレードデッドラインの振り返り

サムネ撮影*私

トレードデッドラインで2人放出

先日のトレードデッドラインで、アスレチックスは2件のトレードを成立させました。

アーセグをロイヤルズにトレード

OAK獲得
メイソン・バーネット(Mason Barnett) RHSP/AA
ウィル・クライン(Will Klein) RHRP/MLB
ジャレッド・ディッキー(Jared Dickey) OF/A+

KC獲得
ルーカス・アーセグ(Lucas Erceg) RHRP/残り5年半

セットアッパーのルーカス・アーセグをKCに放出し、見返りとして3人の有望株を得ました。

結論としては、十分フェアなトレードでリリーバーの利確に成功しました。

今夏のトレード市場は売り手市場。特にカルロス・エステベスのトレードに代表されるように、リリーバーは良い値が付きました。

トレードの噂が立っていたブレント・ルーカーやメイソン・ミラーを早々にキープする意向を示していたものの、同じくコントローラブルであるアーセグを放出した判断は正しいと思います。

再建中とはいえ、再建3年目のアスレチックスは徐々に未来が見えつつある状況。コンテンドの核となるルーカーやミラーをキープする一方、リリーフを使ってファーム層を補充する選択は理に適っています。

昨夏もアスレチックスはサム・モールをトレードに出し、剛腕ジョー・ボイルを獲得。そのトレードの成功を覚えている方も多いでしょう。そして2017夏にショーン・ドゥーリトルらを放出し、ヘスス・ルザルドやブレーク・トライネンらを得たトレードも思い起こさせるトレードでした。

アーセグはこのsavantページが示すように高いポテンシャルを示します。しかし、既にトップティアのリリーバーかと言われればそうではありません。同様にコントローラブルだったモールと比べれば、比較的フェアな見返りを引き出すことができたと言えます。

赤いぜ!

パッケージの目玉は23歳の先発右腕メイソン・バーネット。成績が示す以上に高いポテンシャルを誇り、良いピースだと思います。アスレチックスの補強ポイントはなんと言っても先発の有望株。ドラフトなど自前の育成でまるで生えてこない状況下、これまでの主力放出で得た投手の有望株も目減りしていました。バーネットはまさに理想的なターゲットと言えるでしょう。

バーネットは94-98マイルの4シーム、チェンジアップと縦割れのカーブに高評価を受けます。先日の移籍後初登板では右打者に対して上手くスライダーを使えていました。スライダーとカーブの使い分けは課題のひとつだったようなので、これがクリアできれば強力な4球種のレパートリーが完成しそうです。ストライクを投げるのにも全く苦労しないタイプなのも◎。

上手く育成できれば、フロントスターター級になれる可能性を秘めている投手だと思います。スタッフとフロアーを両立という点で言えば、今のA+以上の傘下プロスペクトでも一番と言えなくもないかも…(ルイス・モラレスはスタッフ寄りすぎ、ガナー・ホグランドはフロアー寄りすぎ)。

そして、2番目のピースが剛腕リリーバーのウィル・クライン。

平均96.9マイル・IVB17インチと良質な4シーム、空振り率29.7%のカーブ、空振り率52.4%のスライダーを武器とする剛腕ですが、いかんせん制球力が壊滅的。AAAでの与四球率は16.3%と行き先はボールに聞いてくれというタイプです。

しかし、アスレチックスは近年、制球力の悪い投手を好転させた成功例を多く持っています。交換要員となったアーセグもまさにその典型。クラインの制球力改善にも期待しています。

ひとまず抜群の空振り率を誇るスライダーを増やしてみてもいいかもしれません。クラインがA's Castに語ったところによれば、スライダーは大学時代に投げていたもののプロ入り後数年は投げていなかったとのこと。スライダーを増やし、その代わりにマイナーではxwOBA.355と速さの割に打たれた4シームの割合を徐々に減らしていくのも手でしょう。

3番目のピースが外野手ジャレッド・ディッキーです。

パッケージの中では目立たない存在のディッキーですが、カレッジの超実力者です。米大学球界史でも有数の好チームだった2022年のテネシー大で、1年時(レッドシャツ)から猛打を振るっていたのがこのディッキーでした。

ジョーダン・ベック、ドリュー・ギルバートの2022年ドラ1コンビ、今年のドラフト上位だったクリスチャン・ムーアやブレーク・バーグといったとんでもないメンツを揃えていた当時の無敵艦隊テネシーにおいて、ディッキーは圧巻の活躍。OPS1.174はチーム2位、打率.380、出塁率.484(min:100PA)はチーム1位と、出世していったチームメイトたちをも上回る数字を残していました。

ポジションが両翼に限定されること、パワーツールが抜けきらないことは気がかりかもしれません。ただ、プロ入り後も平均以上の成績を残しています。ちょうどA'sのマイナーデプスとしては、カレッジの実力派強打者枠のジョニー・バトラーよりも2段くらい上の存在に。良いマイナーデプスになると思います。


ブラックバーンをメッツにトレード

OAK獲得
ケイド・モリス RHSP/A+

NYM獲得
ポール・ブラックバーン RHSP/残り1年半

何より驚きが勝ったのがブラックバーンの放出でした。

ブラックバーンの放出はこのデッドラインではないものと思っていました。まず、ブラックバーンはデッドラインの最後の最後まで故障中で、7月末に復帰して1先発をこなしたのみ。成績もそこまで良くはなく(ERA4.41 / bWAR0.6)、良い対価が提示されることは無いだろうと踏んでいました。

そして、良い対価でなければ、アスレチックスはブラックバーンをキープするだろうと。アスレチックスは過去2年の再建期でも、オフには必ずベテランのデプススターターを補強しています。しかし、昨年が藤浪晋太郎とドリュー・ルチンスキ、今年がロス・ストリップリング(トレード)とアレックス・ウッドという補強例が示す通り、まともなスターターを見繕うのに苦労してきました。

そして、来年はサクラメントでマイナーの球場を間借りするとあって、さらにベテラン先発探しは難航することが見込まれていました。現に今年のウッドの補強も、ウッドの前所属が同じベイエリアのジャイアンツだったという地理的恩恵が大きかったはず。マイナーの施設を使うチームに行きたいFA選手なんているのかな~と思うところですよね。

もっと言うと、去年ストリップリングを獲得するのには有望株を費やしています。その有望株も今回の対価よりはちょっと格が下(FV35-40)ぐらいというレベル。オフに先発補強に動くのにまた有望株を使うようなら、ブラックバーンを残せばいいんじゃないとなる可能性もありそうでした。

そういった理由から、残り1年半で安く付くブラックバーンはキープの公算大と踏んでいました。

しかし、結果はまさかの放出。

放出に踏み切った理由は2点あると思います。

まず1つが良い対価を提示されたということ。対価として来るのは23歳の先発右腕ケイド・モリス。

今季はAとA+の19登板でERA3.53、K/9は8.9とまずまずの成績を残しています。さらにカタログスペックも◯。ジャンクボーラーにしてはスペックが良い感じです。最速97マイルで平均93マイルの4シーム、空振りを奪える4シーム、タイミングを外せるカーブとチェンジアップ、コマンドに最高評価の55が付きます。ちょうど昔のブラックバーンのよう。

FVも堂々の45が付き、Baseball Americaの球団ランクでは23位に(FV45が23位にいるあたり、ずいぶんマシになった涙)。

ちなみに大学はネバダの超打高環境バカでない限り野球をする場所に選ばない で、スタッツの見栄えは良くなかったものの、ドラ3の高評価で指名を受けています。それでいて出身は北カリフォルニアに位置するモデストなので、まさしくベイエリアから砂漠を目指すアスレチックスのような人生を辿っています。

ケイド・モリスでポジるのはさておき。ブラックバーン放出の2つ目の理由は、ブラックバーン自身の耐久性の低さだと考えています。

ブラックバーンは今季もILに入って2ヶ月以上離脱。さらに過去2年も21先発程度と、離脱する期間も長い投手でした。

ブラックバーンはよく離脱するにもかかわらず、アスレチックス自体はブラックバーンがいないと途端に勝てなくなる甘ったれたチームだったため、本当に困ったものでした。

つまり、ブラックバーンは超重要なピースでしたが、離脱も多く、期待するベテランのイニングイーターの役目が務まらない可能性がある。それならば、良い対価が提示された今のうちに利確してしまおうというのは、理に適った決断だと思います。モリスはそれに足るだけのピースだと思いますね。


心に穴が空いたよう。2人の放出

とここまではトレードの分析。2人の放出に添えて私感を書いていきます。

見出しにもありますが、「心に穴が空いたよう」とはまさにこのこと。ブラックバーンがついにチームからいなくなってしまいました。

ブラックバーンは8年間アスレチックスに在籍しました。8年です。

MLBを応援する人にとって、特にスモールマーケットを応援する人にとって、8年という時間がどれほど無常なことか。アンドリュー・マカッチェンやエバン・ロンゴリアといったフランチャイズの英雄にしか与えられない長い時間が、なぜかブラックバーンには与えられました。

あらゆる意味で、二度とこんな選手は現れないでしょう。

わずか1年半の在籍でしたが、ルーカス・アーセグも印象深い選手でした。

地元出身、野手としてプロ入り、アルコール依存症と鬱に陥り、そこから投手転向でキャリアを切り開くという、特異な経歴の持ち主でした。

アスレチックスに移籍したのを喜んでくれたのが印象的でしたね。鯖は赤かったものの、バビった安打でピンチを招き、四球で傷口を広げる登板もいくつかありました。ロイヤルズ移籍後はそこを直して、リーグトップクラスのリリーバーになってほしいところです。


レンタルリリーバー売れ残りはMLBのせい?

ブラックバーンとアーセグ以外のトレードはありませんでした。

特に放出が確実視されていたレンタルリリーバー三人衆(TJ マクファーランド、オースティン・アダムス、スコット・アレクサンダー)は全員が残留。

まともに考えて借金20でレンタルリリーバーをキープするチームはおらず、売れなかったことが推測されます。

ただ、これはフォーストGMの失策というよりは、現行のデッドラインのルールに限界が見え始めたという一端ではないでしょうか。

今のデッドラインが昔と違う点は2つ。フロントにとっての大仕事であるドラフトがデッドラインの3週間前にスライドしてきたこと、そしてプレーオフ出場枠が増えたことによって“コンテンダー”の数も増えたことです。

ドラフトがデッドラインの直前に行われるようになり、フロントは極めて忙しい7月を送ることを強いられています。ドラフトにかかる選手は700人近く。ドラフト外FAを含めれば、何人の選手をスカウティングし、リストアップすればよいか。そして指名をし、契約をまとまるまで。それは途方もない作業のはずです。

これまではオールスター前にトレードされて、オールスターに出られない選手も多々いましたが、最近ではめったに見ません。実質的にデッドライン手前の1-2週間で交渉を完結しており、それは折り合わないトレードも出てくるわなというところです。

加えて、プレーオフ出場枠が増えたことにより、プレーオフにまだ可能性を残す球団の数は増えていました。それ自体は非常に良いことですが、買い手か売り手かこの段階ではっきりと判断できない状況にあったチームも多かったはず。7月末で全てのトレードが締め切りだとなかなかやりづらいでしょうね。

上に挙げた3人のベテランは、同じくレンタルだったカルロス・エステベスほどのクオリティではありません。しかし、これまでのデッドラインであれば、どこかしらのお呼びはかかるであろうリリーバーではありました。リリーバーなんてなんぼあってもいいんですからね。

アスレチックスの他にも、ロッキーズやエンゼルスなど在庫を空にし切った売り手は少なくありませんでした。

トレードできなかったのは残念ですが、逆にポジティブにこの3人には来年も再契約してほしいななんて思っています。


“売れ残った男の子”アンドゥハー(あとトロ)はオフに絶対売却!

個人的に残念だったのはミゲル・アンドゥハーが売れなかったこと。

アンドゥハーは若手の渋滞解消のためにもトレードしてほしかったです。現状、時折“錯乱の呪文”にかかったかのような珍プレーを見せながら、ボロボロの守備でレフトを守る(守る?)アンドゥハー。

しかし、内野の渋滞に煽られ、やや扱いづらくなってきていました。現状の正遊撃手マックス・シューマンは、有望株のジェイコブ・ウィルソンやダレル・ヘルネイズが本格的に起用されれば、外野へのスライドが濃厚。さらにAAAには猛打を奮うコルビー・トーマス、再昇格を目指すライアン・ノダもいました。

来年を見据えれば、そろそろ出しておきたいところでした。しかし、前述の通り市場の停滞が痛かったですね。

加えて、エイブラハム・トロも残留。トロも内野の氾濫のあおりをもろに受ける存在です。ただ、トロに関しては7月の大半を故障で棒に振っており、仕方ない面もありました。

トロに関しては、UT性も今オフ時点で残り2年のコントロールもアンドゥハーより上。野手陣のデプスとしてはこれ以上ない存在であるため、キープもあり得るかもしれません。それでも、他のポジションの補強ためならば放出も視野でしょう。

また、ルーカーとミラーをキープしたことについても、別件で触れられたらと思います。あでぃおす。

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