【ATH】fWAR17を上積みせよ ~三塁編~【オフシーズン展望その3】
ヘッダーはMLB.comから
チームとしてfWARをいかに上積みするかという観点から、オフの補強を考える記事の第3弾。今日はfWAR0.3と低調なパフォーマンスに終わり、将来の見通しも不透明な三塁について考えます。
三塁は補強ポイント
ルイス・セベリーノを獲得し、ひとまず先発補強という大きな課題に目処がついたアスレチックス。次なる課題は三塁手です。
ウインターミーティングを終え、デイビッド・フォーストGMも「チーム内にも候補者や、少し経験のある選手もいる。だが、メジャーリーグでの経験がもっとある選手を探し続けるのが妥当だと思う」とコメント。三塁補強は確実に行われそうです。
アスレチックスの三塁手は2024シーズン、合計でfWAR0.3と苦戦。
しかも、fWARの稼ぎ頭が既に40人枠外のタイラー・ネビンと、将来に向けた見通しが少しも立たなかったのが痛いところです。
また、球団内の有望株もダレル・ヘルネイズ、ブレット・ハリス、マックス・マンシー、そしてドラフトされたばかりのトミー・ホワイトと、絶対的な候補となる有望株もいないのが現状。アスレチックスは長期的な三塁手のオプションの確立も見据える必要があります。
一方、フォーストは「トレードの話し合いはほぼ行われていない」とし、今季の補強はFA市場から行われそうです。
球団内部のオプションはどうなのか
ダレル・ヘルネイズ
ヘルネイズは混沌とした三塁手事情の中でも、最も期待される選手です。
コール・アービンとのトレードで2023年に加入したヘルネイズは、加入後にブレイク。2023年はAAからAAAまで昇格し、131試合でwRC+117、打率.321で傘下の首位打者に輝きました。
それぞれ20-80評価で55がつけられる高いヒットツールと安定した遊撃守備で、今季開幕前は球団No.7有望株(ベースボール・アメリカ)にランク付けされていました。
ただ、MLBデビューを飾った今季は苦戦。wRC+は50に割り込み、さらに二塁・三塁の守備でも苦戦(二塁でOAA-3、三塁で-1)したことで、fWARは-0.5でした。
それでも昨季は苦戦したAAAでは、35試合で打率.331、wRC+116と着実にステップアップを果たしているのも確か。Futuru Valueは依然として50レベルでしょうし、A'sとしてはヘルネイズがブレイクするのが最善のシナリオになります。
Steamerの来季成績予測では、wRC+98、ディフェンス貢献度(Def)2.6、fWAR1.3と成績向上が見込まれています。二塁・三塁守備では苦戦したとはいえ、遊撃守備ではOAA+1(133.1イニング)と平均以上の守備力を発揮しています。そのスペックをもってすれば、三塁守備に慣れればプラスディフェンダーになる可能性は高いでしょう。
一方で、打撃では来季の予測にあるwRC+98程度が天井となるリスクもあります。AAAでもxwOBA.295、バレル率(/BBE)も3.3%と目立った数値は残せていません。三塁に回る以上、やはり打撃でバリューを示すことは必要不可欠。fWAR1.0~2.0を残せる選手にはなれたとしても、大きなプラスをもたらすレギュラー選手になる将来図は現状、描けません。
マックス・シューマン
ヘルネイズ以上に堅実なオプションといえるのが、今季ロールプレイヤーとして存在感を発揮したマックス・シューマンです。
2021年シーズンから通算出塁率.390を記録した出塁能力、7ポジションを守った経験があるユーティリティ性でマイナーの階段を着実に上がってきたシューマンは、今季メジャーデビュー。怪我人が相次いだ遊撃のレギュラーに抜擢されると、そこから意外な活躍を見せました。
遊撃で788.1イニングを守ってOAA+1と健闘すると、打撃でもwRC+85と破綻していないレベルのパフォーマンス。92パーセンタイルにあたる21.4%のボール球スイング率(Chase%)を記録して、10.2%の高確率で四球を稼いだ選球眼、14盗塁・BsR2.3を記録した高い走塁IQを武器に、fWAR1.3を残しました。今季の躍進はシューマンがよく遊撃の穴を埋めてくれたことに大きく助けられたと思います。
ロールプレイヤーとしては非常に優秀なシューマンですが、三塁のフルタイムが務まるかはやや疑問です。
ただ、遊撃で発揮した守備力はもちろん、平均レベルの打球初速89.0マイルを記録するなど極端にパワーレスというわけでもなく、今季のパフォーマンスから期待できる要素が多いのも事実。Run Value-9、打率.182と苦しんだ4シーム対応がマシになれば、成績向上につながるはずです。
ブレット・ハリス
長らくunder the raderのプロスペクトとして期待されてきたブレット・ハリスは、ついに今季デビューを飾りました。
しかし、wRC+は65に過ぎず、fWARはマイナスの-0.3に落ち込みました。
もともとマイナーでも平均打球初速は86.6マイルと低く、パワーレスは懸念されていました。それを選球眼で補うスタイルでボール球スイング率(Chase%)19.1%、四球率13.8%と持ち味は十分発揮できたと思います。それでなおこの数字というのが、ハリスの苦しかった部分です。
さらにゴールドグラブ級と評されていた三塁守備でも苦戦。280イニングでOAA-1、DRS-4と、マイナー時代の高評価からは打って変わって低調でした。
AAAでも74試合でwRC+108と傑出した数字ではなく、出場機会を与える想定で開幕を迎えられるほどのクオリティは現時点ではないと思います。
理想のターゲットは
A'sにとって理想的な三塁補強のターゲットは、これらの要素を持った選手だといいなと思っています。
トータルの貢献度であるWARにつながれば、守備型でも攻撃型でも構わないかもしれません。ただ、守備力がある選手が好ましい理由があります。
それは、来季以降のA'sにとって守備力は今まで以上に重要性を増しそうだからです。
もともとA'sの投手陣は奪三振力が高くありません。今季もチームK%は20.5%でワースト3位。さらに新加入のルイス・セベリーノも奪三振力は平均以下のゴロ系投手です。
これまでのA'sは広大なオークランド・コロシアムのおかげで、(主にフライアウトから)フィールドに飛んだ打球をアウトに取るのが比較的容易でした。しかし、新天地のサッターヘルス・パークはコロシアムより狭く、さらに気温も高いため打球が飛びやすくなる懸念があります。
よって、これまで以上に三振を奪うこと、そしてゴロを打たせて取ることが重要になってきそうです。
しかし、A'sの守備力は球界最低レベル。チームOAA-46はホワイトソックスをもしのいで球界ワーストです。特に三塁はOAA-9と大きなマイナスを吐き出しました。
二塁には守備に定評があるザック・ゲロフ、遊撃には守備力が評価されているジェイコブ・ウィルソンが起用されるため、できれば三塁にも名手を配置したいところです。
また、2つ目のプラトーンが組める左打者というのも一応重要なポイントです。現状の移籍市場で、フルタイムを任せられる三塁手はあまり出回っていません。微妙なレベルの選手にヘルネイズらを差し置いてフルタイムの出場機会を与えるなら、育成もこみでプラトーンを組んだ方が合理的。もっともヘルネイズは予測成績も上々なので、使わないのはいささかもったいないでしょう。
FA市場の選択肢
ジョシュ・ロハス
ロハスはまさに「守備力」と「プラトーンのしやすさ」を兼ね備えるドンピシャの候補です。
ロハスの強みは三塁でOAA+6、二塁で+2を記録した守備力にあります。
さらには今季もwRC+91、2021-22の2シーズンではフルシーズンでwRC+100オーバーをマークした経験もあり、攻撃力も平均的に備えています。右投手に対して通算wRC+95、左投手に対して通算+85とプラトーン向きなのもメリットです。
今オフは3.1Mの調停をマリナーズにノンテンダーされFAに。それでも十分安価ですし、上手くいけば2026年まで保有できるのも魅力的だと思います。
UTとしてのロハスへの需要はそれなりに大きいはず。ただ、アスレチックスは出場機会の保証という点で他球団に対してアドバンテージがあります。
また、アスレチックスは前年fWAR2.1のベテランUT、ジェイス・ピーターソンに2年契約を提示した過去もあることですから、ライバルに競り勝つために2年契約、あるいはオプションとバイアウト付きの契約を提示するのも無しではないと思いますね。
ポール・デヨング
ポール・デヨングは今季、ソリッドなパフォーマンスを見せました。24本塁打を放った長打力で、アプローチの拙さをカバーして平均レベルに収めてくる攻撃力、さらに守備力でfWAR1.7を稼ぎました。
個人的には、デヨングが三塁守備でOAA+5、特に内野守備指導に定評があるロイヤルズ移籍後は短期間でOAA+6をマークしたことが良いなと思います。
右打者ではありながら、通算で対右wRC+97に対して、対左は+80。今季も24本塁打中19本塁打を右から放つなど、不思議なSplitの持ち主でもあるので、プラトーンも組みやすいと思いますね。
ホセ・イグレシアス
ホセ・イグレシアスは今季、歌手として華々しい成功を収めた一方、フィールドでも往年の輝きを取り戻しました。wRC+137の打撃はフロック感が強いものの、三塁でOAA+2、二塁で±0の守備力は流石の一言。
ここで挙げる候補の中でも際立ったfWAR2.5をマークしており、実現すれば良い補強になること間違いないです。特に2013年の定着以降、出場しさえすればfWARは必ず1を超えている安定感も魅力的。
プラトーン候補というよりはレギュラーとして招聘する形になると思います。なんとか元同僚のセベリーノの誘いに乗って西海岸に来てほしいもの。