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守る

自分の指導を振り返る。vol.40

『ここは警察じゃない。学校なんだ!』

忘れもしない。
教員なりたての新米時代。
退学になるかならないかの瀬戸際、全体がこの案件は致し方ないと腹落ち。


そんなタイミングの一言である。


一人の教員が最後に述べた発言に、自分は心を打たれたんだ。
自分が教師になった意味を
教師の在り方を
自分の指針を
その一言が、今の自分を形作っている。
潜在的にあったのではない、
今の自分は全て過去が作り出した産物である。

幼少期

裕福でない家庭に生まれ育ち、団地住まいだったあの頃。
多くの仲間には恵まれたんだ。
3つ上のお姉ちゃんがいて
世代を超えた仲間と陽が落ちるまで遊び呆けていた。
今そんな世の中でないのが残念である。
言いたいことはそこではない。

ある時、近所のお兄ちゃんが
「秘密基地発見した。来いよ」
最高にワクワクした。何故子供は秘密基地が好きなのだろうか?
いや違う、今の俺も好きだ。
子供だけじゃない。

早速行ってみる。
単なる林の中にある、お兄ちゃんが作り出した基地でなく。
古民家であった。
普通の一軒家という表現がマッチしている。

物凄い基地を手にしたと、大喜びした記憶がある。


だって、家の中は電気がつく。ラジオはつく。

「おらさこんな村いやだ〜♪」の真逆?
住める環境だった。


俺は棚の中にあった
「あれ」を取り出し興奮のあまり奏でた。

そう、リコーダー!
宴会の始まりだった。


だけど、楽しい時間はすぐに終わりを迎えた。

おじさん登場。

「人の家に入って、何やってんだ!!」


物凄い怒号が響き渡った。


今考えれば、人が住んでいる状況であるのは安易に想像がつく。
だって、電気がつくんだもの。

7人くらいのお兄ちゃん、お姉ちゃんと一緒に直立不動。
直ぐに、お母さんたちも呼ばれ、
母親が、何度も何度も頭を下げている姿は
幼心にも響き、心に深く刻まれた。

その後、団地前の広場でみんなと話をしていた。

「お前が先に入ったのが悪い!お前のせいだ!」

一気に、一番年下の自分が悪役になった。
誘ってくれた優しいお兄ちゃんが、
距離は近いのに、一気に遠のいていった。
何故、自分・・・。

リコーダーを吹いたからかもしれない。
自分のリコーダーの技術がもっと高ければ?
と何度も何度も自分を責め立てた。(嘘)


俺の責任・・・。何も言い返せない。
そんな時に、団地の4階あたりから気迫ある声が鳴り響いた。


「利光だけの責任じゃないでしょ!!」


それはドギツイ声。
だけど、「ひとりぽっちの心」を、そっと支えてくれた
温もりある、お母さんの声であった。
その声が
今にも泣き崩れそうな自分を、立ち返らせてくれたんだ。

大きな声で、みんなを叱る。
息子の自分を守る一声。
いや、違う。
人の責任にするな!仲間だろ!
っていうメッセージだったのかもしれない。


守る。
という美学が芽生えたのは、この母親の一言のお陰であろう。
お金はなくても、溢れる愛情で十分だった。


「ここは警察じゃない。学校なんだ」


生徒を守る一言に響く心を持てたのは、
他でもない最愛なる
お母さんの教育を受けた事が、きっかけなんだと感じた。


「ミスをしても挽回はできる!」そういう視点を
いざの時に守るという姿勢が、成長を促すという視点を
それこそが、
日本の将来を担う、掛け替えの無い生徒の人生を大きく変える。


そう信じて、俺はまた教壇に立つ。


ありがとう。お母さん。
あなたのマインドを、俺は譲り受けているみたい。


どんな状況でも、生徒の将来という日本の将来をみて



「きょういく」に励みます。

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加藤利光
生徒に還元😁子供に還元😆