Change the world
自分の指導を振り返る。vol.21
「お兄ちゃん!ここにいるの勿体ないねー!ホストやりな?」
「顔が無いから無理っすよー」って謙遜した。
「顔は関係ないよー!」
滅茶苦茶、失礼…。ドンマイ俺。次の記事の続きである。
この言葉を機に、新たなチャレンジに出たのは言うまでもない。自分を作るのはいつだって、他者の存在なのだ。
大学2年の冬、ホストへの挑戦の火蓋を切った。
嘘です。すいません。定番の流れです。
ホスト=女性を騙す(ゴメンなさい、当時の誤った偏見です。)という感覚があり、躊躇した。接客の力試しを繰り広げられる、次なる舞台の捜索スタート。新たな発想は、いつだって行動して作られる。
吉祥寺(ちなみに寺では無い。)私のホームグラウンドである。この町、いや寺!ではなく、町には、想像を駆り立てるものがコボレている。悩みは必ず、この場所で解決できる。そう、過去は美化され勝手にそう思い込んでいる今日この頃。
「アルバイト募集」の張り紙に目が留まる。
「bartender急募」お洒落なbarを発見し即突入。行動力は我ながら見事。過去の自分もいつだって直感頼りである。
その店は、昼はシルバーアクセサリー屋で、夜はバーに変わるらしい。オーナーが今はいないという説明を受け、電話で繋いでもらった。
『今日の夜、来て。』電話の口調から、マダム風な香りがプンプン漂った。女性だ。おばちゃんだ!ラッキー。
焼肉屋でのバイトの店長も女性。超可愛がってもらった。過去の成功体験は、いつだって自分の強い味方となる。
よし、いける。絶対にいける。俺は、今日からバーテンダーだ!なんて発想に、全力で浸った。
夜
面接試験
面接=元気。この等号は、どこでも通用すると認識し、第1声はとびきりの爆音ボイスで攻めた。
『こんにちは!面接に来た加藤利光です!よろしくお願いします。』
間違いなく、マダムの心にクリンヒット。一糸乱れぬテンプレート発言。だった…はず…。
マダム『ちょちょちょちょちょ。ちょっとコッチ来て。』人差し指を立て、黙れ!と言わんばかりのリアクション。
隅に座らされる俺。反省部屋。御仕置部屋。
マダム『何あんたの声!何あんたの髪の毛!何あんたの服装!』出会って早々、カウンターパンチがクリンヒット。5秒でノックダウン。ギネスに認定されているそうだ。(笑)
マダムの連続パンチの雨あられ。負けじと軽い発言を繰り返す加藤利光。
「へ~そうなんすか~(笑顔)」をどれだけ言った事か、日本野鳥の会にカウントを依頼しておけば良かった。
即解雇。いや雇われていない。話は、途中で盛り上がりを見せた(マジ)。だけど、雇ってはくれいない。何故?
意気消沈した俺に、マダムはラストトーク『うちは無理だけど、あなたみたいな人が、No.1をやっているバーあるわよ。完全歩合制の、最低賃金が崩壊しているバーが。紹介してあげようか?』
圧迫面接を乗り切った直後に、神は微笑む。『初めっから言えー!』って見事な粗末力を発揮しようと思ったが、チャンスを捨てる可能性のある時限爆弾を踏むのを、珍しく控えた。
マダムに別れをつげた。
橙色のフラミンゴの置物がお出迎え。怪しい雰囲気を醸し出すbarに到着。完全歩合制&最低賃金が崩壊というマダムワードが先入観を形作り、その発想に至らせたのだろう。
恐る恐る、いざ入店。
バーテンダーの理想像、七三分けのワックスベッタリ、スーツにベストは当たり前、言葉遣いや心遣いに気を配った気品溢れるメンズ。
とは、
真逆のオーナー登場。
唯一の違和感は、出された名刺。
名刺に刻まれた、4文字のアルファベット。
「B・O・S・S」 ボス?
自分の事をBOSSって名乗る人は、この人ぐらいであろう。
『明日から来れるか?』
採用決定。ほぼ会話も無く、マダムからの『No.1の子に似てる』の情報だけで、バーテンダー加藤利光が誕生した。大丈夫か?この組織?
翌日
早速、バーテンダーと化した。昨日との唯一の違いは、スーツを纏い、バーカウンターの中に立ち位置を変えただけ。先輩と共にバーテンダーを演じる。いや、演じたのは自分だけ。偽物の自分。お酒の知識「0」の自分が、異空間に立ち、客の難解な横文字の数々に世界史の名前暗唱と記憶が重なった。
「ブッカーズ、クレメンタイン、ブラッディ・メアリー、キューバ・リバー、マッカラン、ロンサカパ、・・・。」
「レモンハート151」年号まで出てきたのか?いや違う、アルコール度数だ?えっ151度?そんなのは存在しない、何故かは不明だが、÷2する。75.5度だ。バーテンぽいだろ?
俺の役割は、「いらっっっしゃいませ~」のなんとも言えないイントネーションで客を迎え入れる。このテンポは何だ?初日に、マスターしたのは、それぐらい。郷に入っては郷に従えである。(前回はここまで書いて消えた。)衝動に駆られた自分の記事をどうぞ御覧ください。
6日間の研修という名の実践終了。7日目に、一人営業開催。可愛い子には旅をさせよにも程がある。びびった~。やれと言われたらそりゃやりますよ。一連の内容は、仕入れ、鍵オープン、ロック用の丸氷の作成(すごいでしょ)、カンペのCocktail本を冷蔵庫内にセット、20時オープン、朝5時閉店。ちなみに、BOSSが経営する店舗は20店舗くらいあって、そこをスタッフ皆で回し、売上勝負の祭典が日夜行われる。
深夜営業なのに、最低賃金はなんと
650円。ウケタ。間違いなく違法。マダム正解。俺は経験を買ったんだ、だから気にしない。
えっ?一人営業初日?
どうなったかって?
来客
0人。
売上0円。
記念すべき幕開けは、シビアな人気商売の洗礼を浴びた。先輩がいるbarの様な活気は無く、静けさの中に響く、レコードからリピートされる エリッククラプトンchange the worldに、孤独の世界が変わることを期待した。
あいつらとの出会いで一気に変化した。週3のシフトで、吉祥寺や武蔵小金井の大型barに駆り出されることもある。そこで客を作って、小さなbar(武蔵境のビブロスが自分のホーム、今は経営者が変わったようだが、店が残っている。いつか行こう。思い出の場所)への客引きを意味していると勝手に理解した。
「フレンチ・コネクション」を下さい。カッコつけの中年とボディーピアスに襟足三編み小僧の2人組からの注文だ。舐められる訳にはいかない。そう、俺は手慣れた雰囲気を醸し出し、聞いたことすらない名称をバーボンゾーンに救いを求めて必死に捜索。
「はははははははははは😁」で、決着。襟足三編み小僧の笑い声。素人加藤利光カッコなんてつけられません持ち前のテンションで勝負ですバーテンダーが誕生した瞬間であった。知識「0」、トーク「100」でこの道を獲れるかどうかの挑戦が始まった。羞恥心を浴び、開き直った。いや、直れた。
「ブランデーとアマレットだよ。」カッコつけの中年が得意気に発した、横で小僧は、俺を小馬鹿に「ははははははははは😁」と終始笑顔。煙草の吸い殻を山盛りにして、一体何本吸ってんだ?「なんだ、その三編み!」って突っ込んだかどうかの記憶は無いが、今でもあのやんちゃな雰囲気だけは鮮明に覚えている。まさか、俺と同い年のハタチで、barという大人の世界に足を踏み入れ、こんな高額な酒をシコタマくらっている奴がいようとは。互いに自分の立場を認め合った。やけに気が合って、記念すべき俺の最初の客となった。今では、こいつのブログに何度、嫉妬し、負けてらんね~って感情を抱いたことか。
あいつとの記憶が鮮明に刻まれている「うんこの日記」。バレてはいけない過去も記載?フルオープンで行け!俺。
もう一人、「トッシ~」ってガラガラ声で登場し、現在シニアの部で水泳の日本チャンピオンのあいつ。簡単に言うとめんどくさい奴。だが、周囲の客と仲を築き、性別は定かでは無いが、周囲は女性と認識し、オッチャンの喜びを作り上げる暇人。人の心を繋ぐ架け橋的存在に君臨。
この2人が加藤利光barに必要不可欠な存在となっていた。
この2人とは、今でも交流がある。年に0回。10年に1回ぐらいの。切っても切れない関係である。もしかしたら、切れている。
他にも、破天荒なクラブのママのんちゃん(酔うと脱ぎだす)や、ゴードンジン一杯で帰宅する大工のスーさん、野口っていう名字だけで「英世」と言われるタトゥー野郎、後輩のぶっ飛びマツケンに容姿端麗のあやの。あの頃の記憶は凄い鮮明である。最高の飲み仲間が集う、最高の馬鹿集団だった。みんなの照らす光で、俺は輝かせてもらった。
みんなの輝いた時期はいつだ?
俺は、
毎日だ。
こんな調子で、数カ月後には、30人弱いるバーテンさんの中、
堂々
4位🌟の記録を叩き出した。(しかも、週3日で。自慢してごめん😁)
肩書が、ビブロスの店長ってなってた。(大学生で店長?ウケタ)
時給は、2000円弱まで伸びた。(俺、自力で稼ぐ経験してたわ😁)
月間で発表があり、上位10人はキラキラ会っていう食事会に誘われ、豪遊する。やっとバーテンの仲間に加わった気がした。(このキラキラ会ってのが、現在のハイレベル補習の名称になっていることを、誰が想像できようか😁)
次の月は丁度、夏休み!週5日入って。No.1になって引退しようと決意した。夢実現への教員採用試験もあるしね。
直後に、苦手な先輩からの電話が鳴る。
「今からビブロス来れる?」
「今っすか?まー来いと言われれば行きますが…。」
「来い!」
自宅からは、1時間弱だが、誘われたら断らない精神の加藤利光は直行。到着したのは、営業前の19時頃。ビブロスに入っているスタッフ4人が集結した。(4人で日々回していて、バーテンさんが異なると売上も異なる、不思議な店舗。店長は俺?らしい)みんなで会うのは、お初である。
到着するや否や、反省会のスタート。売上と仕入れ値のバランスが悪いという問題点の反省会であった。
みんな下手な覚えたてのセリフ?違和感たっぷりのミーティング。お遊戯会の方が10倍上手いセリフ言うぞ!なんだ、この胡散臭さ。
自分の番だ。ラストにコメントを述べようと……いや、喋ろうとした瞬間に、先輩からの熱の入ったコメントが遮った。
さ~何が始まったか想像つく?
先輩「お前さ、この間、鳥取でラーメン屋やっているって奴、来たろ?」
俺「はい」
先輩「あいつ俺の友達。お前の営業日が怪しすぎて、刺客を送った。注文したのは、パスタとメーカズマーク。パスタの量ハンパなかったでしょ?メーカズマークの量もハンパ無かったでしょ?お前ここの店長だろ?」
俺「いや~サービスです。皆は、自分で店のお酒を飲んでいる分を、自分は、客にサービスしちゃいました~ははは。」
先輩「ふざけんな。怪しいと思ったんだよ。だから、お前の入店前と営業後に来て、全てのボトルの量を測って、調べたよ。そしたら、〇〇のボトルの量が2cm減ってた。本来なら、2杯つけられるのに、伝票みたら1杯しかつけてない。これはやばいでしょ。もうBOSS呼ぶしか無いでしょ。」
あのドヤ顔は忘れない。
俺を落とし入れる、なんとも悲惨な会議だったのだ。先輩の売り上げを超えた僻みからくるものだと一瞬で察した。歩合性のもたらす残酷な世界。
俺「・・・(気合いスゴッ!お酒は好き勝手に飲んで大丈夫だよって、あなたに指導されたのに…。この店の責任を全て俺に?)」
何も口にせず。
余裕ぶって。
「へ~そうっすね~」をかました。
数分後
BOSS登場。
漲る緊張感。
入ってくるや否や、先輩が説明をし、一気にBOSSは沸点へ。
『ふざけんじゃねー加藤』想像を絶する、罵声。こんなに激怒した声を過去聞いたことすら無いボリューム。
『クビだ!鍵を返せ!』
冷静を装い、冷静に返却。
罵声は続く。
『加藤!一日1000円の罰金として、100日働いたとして、100万円の借金だ。』
「・・・。(んっ?計算ちがくね・・・。)」って思ったが、
覚悟して。
「はい。わかりました。」意地が上回った。妙なプライドがある。
BOSS『おい、外出ろ。車に乗れ!』
海に沈められるのか?どこに連れ去られるのか。俺の人生は?終わったのか?何なのか?頭はぐるぐる周るが、やけに冷静な自分がいた。何故だろう。覚悟ってヤツだ。
車内。
BOSSの表情が一変し、空気が変わった。
BOSS『やられちゃったな?』
さっきの空気感とは真逆の、それは温かい。温もりの世界。自分を可愛がってくれた、いつも通りのBOSSに戻った。
話は続く。
BOSS『俺は、お前の店が好きだった。俺の知り合いにも紹介した。売上も上げてくれたし。期待した。だけど駄目だ。店の酒を使っちゃ。何度も言ったろ。』
心がヨジレた。結んでいた口が、滑らかに動きだし、放った言葉は、弁解の一言。
俺『BOSS。みんな、やってますよ。自分で飲んでますよ。俺は飲んでません。』
BOSS『あの場で言えよ!さっき言えよ!あいつ(先輩)をクビにしたかったんだから。俺は知っているんだ。みんなが、勝手に店の酒を飲んでいることも、お前が飲まずに、店を盛り上げるために、勝手にお酒を振る舞っていることも。だけど、駄目だ。何度も言ったことだ。こうなったら、クビにするしか無いんだ…。』
俺『・・・。』
流れる涙は、俺の好きなBOSSがBOSSらしく包んでくれたこと。それに、反した行動をし続け、信頼を裏切ったという自分がどうしても許せなかった。気づけなかった。みんなの当たり前に乗っかり、大事な存在の信頼を守ることすら出来なかった自分が情けなかった。自分のために、豪遊や優しい言葉の数々を提供し、知識は無いが売上を上げるって、思いっきりアクセル全開でぶっ飛ばせた事実。そのガソリンをくれた、BOSSをいとも簡単に裏切っていたのだ。情けなすぎた。カラダ全身で衝撃を感じ、溢れ出した涙。冷静な自分が壊れた。
その裏切り行為と、客いや、仲間と最高の空間を二度と味わうことができない衝撃も伴って。車で、泣きじゃくった。
泣いても、結果は変わらなかった。
クビ。
BOSS『じゃーな。100万円はいらない。お前は、間違いなく売り上げで、叩き出したから。』
失敗をした人間を許すようになったのはここからだ。大きな失敗でも、許すことで、人は成長する。許せる人間は心のデカイ人間だとも感じた。そんな教育をBOSSから、勝手に学んだ。
だから、意地でも信頼には応える人生を歩むべきだって決意した。俺は成長した。クビになって良かったのかもしれない…。
間違い無く言えることは、
吉祥寺を歩いた自分がそこにいて、
勢いでバーに入った。
その、行動の1つが、
その一歩が、
自分の世界を
1歩、2歩、
いや間違いなく1000歩くらい
Change The World
させた。
色々な経験をしろ。俺。
追伸
後日、後輩マツケンから、『あいつクビにしときました』と一本の電話。そんな事どーでも良かったが、後輩からの愛は感じた。