デネブ

秋分の日を過ぎ、闇の時間の方が増えた10月も頭。
既にちょっと季節外れですが、夏の大三角形の1つを構成する恒星のデネブの話を。
夏に聞いた話がずっと頭に残っているので、残っているうちに残しておこうと思いまして。

阿智村。
ご存知ですか?
多分、天体好きの方はよくご存じなのではないかなと思います。
日本一星空が綺麗に見える場所と言われているところです。
場所的には岐阜県よりの長野県というところでしょうか。
阿智村にあるのが昼神温泉郷。
勿論、温泉も良い温泉なのですが、恐らくここに来られる人はその星空が目的な方が多数なのだと思います。夜がメインなのに、”昼”の”神”って面白いなといつも個人的には思っていました。

私はもともと星空は好きで、好きで…というよりも、
綺麗な星空に憧れがあって、学生の頃から1人でプラネタリウムによく脚を運ぶような、そんな人間でした。
天体に詳しいわけでもなく、勉強をしているわけでもなく、
それなのに、綺麗な星空だけは見たいという…。
それに加えて、元妻も綺麗な星空を見てみたいという人だったので、
是非、この阿智村で日本一の星空というものを見てみたいと思い、
過去に2回ほどチャレンジしたことがありましたが、2回ともダメ。
一度は完全な雨。もう一度は日中晴れていたのに、夜になったら曇り。
旅に出ない全然関係ない日にたまに阿智村の天気予報を見る時もあったのですが、私が天気予報を見ているタイミングが悪いのか、見るたびに曇り。
阿智村っていつ晴れてるの??と勝手に思っていました。

そんな阿智村に夏休みにふらっと寄りました。
夏休みはちょっと頭と心の整理のために1人で福井や愛知や岐阜を回り、円空さんゆかりの地を主に巡っていました。
(ここら辺の話はまた機会があれば後日書きます。)
岐阜から割と近いのと、ちょうど昼神温泉が車中泊プランなるもの(温泉は入り放題)をやっていて、高速が混む前の明け方には帰ろうと思っていたので、ちょうどよかったので、それに予約を入れていたのでした。
今までどおり、この日も曇り。また曇りかいと笑ってしまいました。

ただ、昼神温泉に着いて、温泉に入って、日暮れ頃になるとなんと晴れてきました。びっくり。これはもしや見られるのではないか?と思い、天空の楽園ロープウェイに行きました。
星空を見るつもりなんて無かったので、標高1,500mくらいの気温に耐えられるような服装も持ってこず、地面に敷くシートのようなものも持って来なかったですが。とりあえず。
そして、この星空を観に行くという行為、なかなか中年の男性1人でする行為ではないため(苦笑)、私が見る限り、1人で観に来ている人はほぼ皆無だったのではないかと思います。

このロープウェイ運営の仕組み的に、ロープウェイのチケットはオンラインで購入し、事前に人数を絞っています。なんでだろ?と思っていましたが、とりあえず、地上の人を一気に上にあげるんですね。
理由は山頂の電気を全部消すために。(その代わり、帰りも混むんですけどね。)
私は半袖の服を重ねるという意味不明な暖の取り方(ほぼ取れていない…。)をし、バッグの中にたまたま入っていたニトリの超巨大なビニール袋のおかげで、何とか寝そべって星空を観るという格好を取ることができました。全員山頂に上がってくるのに、30分以上は待ってだいぶ身体は冷えましたが、電気が消された瞬間、そんなことは忘れるくらいでした。

イベントのような感じでMCの方がいらっしゃって、その方が星の説明をしてくれるのですが、
「それでは、電気を消します」と言った後、
多分、その場にいた全員が口にしたと思います。

「わぁ!!!」
と。

私も既に星が綺麗に見えていたし、きっと本当に綺麗なんだろうなと想像をしていましたが、その想像を遥かに超えてきたので、無意識に声が出ていました。
以前、私は上高地に宿泊し、その晩、好天に恵まれ、こんなに星空って綺麗だったのかと、衝撃を受けた経験をしていたので、上高地くらいかな?と思っていましたが、確かにここは、日本一星空が綺麗に見える場所…でした。北海道でも綺麗な星空を何回か見ましたが、少なくとも私が見た星空の中では人生一でした。

今は、夜空に投射できる超高輝度のポインターがあるので(以前、木曽に泊まった時に天体好きのお兄さんがそれを使って説明をしてくれたので、その存在は知っていたのですが)、まさにリアルプラネタリウム状態でMCの方が色々天体、星座の説明をしてくださいました。
数十分の間に流れ星も5つほど、2つはかなり長く尾を引いているもの、金星、火星、土星も見ることができました。

全ての説明が興味深く、とても面白かったのですが、
最後に説明されたのが、「デネブ」についてでした。

夏の大三角形を形作る星は、こと座のベガ、わし座のアルタイル、そしてこの白鳥座のデネブ。
この3つの中で一番暗く見えるのはどの星ですか?との問い。

明らかにデネブでした。

後から調べると、 それぞれ、ベガが0.0等級、アルタイルが0.8等級、そしてデネブが1.3等級。等級は小さい値の方が明るいそうなので、三つの中ではベガが一番明るく、デネブがもっとも暗いことになります。
ただ、実際、一番明るいのはデネブだと。

その理由は、地球からの距離。
デネブは他の二つの星に比べて遥か遠いところにある星なのだそうです。
それぞれの星の地球からの距離は、ベガが25光年、アルタイルが17光年と比較的近いらしく、それに対してデネブは約1,800光年で、アルタイルの100倍以上遠いと考えられているそうです。星の明るさは、距離の二乗に反比例して暗く見える。つまり、遠くにあればあるほど暗く見えるので、もしも、この3つの星を地球から同じ距離に置くと、デネブはベガやアルタイルに比べて10,000倍近く明るく見えることに。
もしベガと同じ距離にあったら、金星の15倍の明るさ、私たちが普段見ている三日月と同じ明るさの光源として見えるようです。
想像もできないですが、凄いですよね。
質量で太陽の15倍、半径は108倍。デカさも凄い。

有名な星でしょうし、星好きの方からしたらそんなの基礎だよーということなのかもしれないですが、デネブの輝きを観ながらされたこの話は無知の私に何故かとても響きました。
最後方から一番輝いてるなんて、なんとカッコいいんだと感じました。
星の話ですけどね笑。

私が何故、心にそんなに響いたのかもわからないですし、MCの方が何故説明の最後にそのデネブの説明を持ってきたのかもわかりませんでしたが、私の心情的に少し暗くなっていたのは事実ですので、この最後方から頑張って輝き続けているデネブの存在がなんかその時の自分を勇気づけてくれるものだったのだと思います。

Life is Contentsを書いてから約1ヶ月。
悲しいかな自分の時間というものが、
結婚をしていた頃、
子どもを育てていた頃よりもできたので、
この時間を何に使うか。
そんなことを考えながら過ごしてきましたが、ちょっと自分なりにチャレンジしたいことも出して、それに対して動き出し始めました。
そんな計画通りにはいかないけれど、少しづつ。

最後に、阿智村で撮ったiphoneの写真を載せておきます。
何の加工も、何の技術もなく撮った1枚にしっかりと映る、北斗七星。
しっかりと柄杓の姿を確認できると思います。

前に昼神温泉の宿に泊まった時に、
宿の女将さんが仰っていたこと。
「日本一星が綺麗ってことは、日本一暗いってことなんだよね笑。
灯りも少ないしね。ただそれだけのことなんだけどね笑。」

日本一、星が綺麗に見える場所は、
日本一、闇が深い場所。

闇が深ければ深いほど、
コントラストで輝く星がとても眩しく、綺麗に見える。
人も同じかもしれませんね。
深い闇を知れば知るほど、人のちょっとした優しさの有難さを痛感します。

3度目の正直、そして、その3度目の正直はこの感動を共有できない1人という、何とも勿体ない感はありましたが、ちょうどいいタイミングで、ちょうどいいモノが見られたのかもしれません。

最後の余談。
北極星は実は数千年周期で交代していて、
デネブは西暦8,000年後の約西暦10,000年の頃には北極星になっているそうです。当然、私は生きていませんが、その頃も無事に地球があり、人類が在るといいですね。(そういえば、「チ。~地球の運動について~」は非常に面白い漫画なので、リアルで私に会う方でご興味があれば御貸し致します。)

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