入社三年目、ただいま奮闘中。二階よりお届けします
東京都現代美術館内には実は、100本のスプーン以外にも姉妹ブランドの二階のサンドイッチがあります。そこで店舗責任者として活躍する平野さん。新卒入社から3年目、奮闘中のいま、お話を聞いてみます。
苦戦した就職活動、自分に嘘をつくことなく入社したいと思えた
ー平野さん、大学も食関係の分野を学ばれていたかと思いますが、どうしてだったんですか。
実家が約120年代々続いているお魚屋さんなんですよね。お魚を捌いたり、お弁当やお惣菜を作って売っているそばで育ったので、それが当たり前のような感じで自然と大学もその分野に進みました。
ー120年!すごい老舗。そのルーツがあったからだったんですね。新卒入社当初は100本のスプーン所属でしたが、選んだ理由は。
実ははじめはスープストックトーキョーの方で面接を受けたんです。手応えなかったな…と思ったら案の定落ちてました。(笑)
たくさんの会社をばんばん受ける就活スタイルが苦手で、一個ずつしか集中できないタイプなので、次はどうしよう…と悩んでいたとき、就職課の方に100本のスプーンもちょうど募集がきたところだよってタイムリーに教えてくれて。当時は株式会社スマイルズ所属のブランドだったので、再度100本のスプーンの面接に挑戦することになりました。
ースープストックトーキョーや100本のスプーンは自分に嘘なく入社したいと思えたということですか?
はい。企業理念や会社の事業に共感したのはもちろんですが、スープストックトーキョーの面接のときに本社の雰囲気がいいなって思ったり、もともと祖母がPASS THE BATONのファンで会社のことは知っていて、ハード面にも惹かれるところがあり、感覚的に合っていそうだなと思いました。
ーおしゃれなお祖母様ですね!
フルサービスからセルフサービスへ。転機と責任
ーそれから無事100本のスプーンへ新卒入社となりましたが、もともとはキッチン希望だったんですよね?
いつか自分でお店をやってみたいという気持ちもあって、やるなら手に職をつけたいという思いでキッチンを志望してました。あいにく埋まっていたためサービス所属となり、働きはじめて半年ほど経ったころに、二階のサンドイッチに異動という話がありました。
ーそのときはどういう心境でしたか。レストランのフルサービスからセルフサービススタイルの販売で変化が大きかったと思うのですが。
もともとキッチン志望で商品づくりに携わりたいと思っていましたし、接客もできるし、前向きにやってみたい!と思いました。
実際やってみてからは、短い時間で接客をしないといけなかったり、仕込みもあるし、パフェやドリンクメイク、全部のポジションをフォローしながら進めないといけないので目まぐるしかったです。特に展示の最終日はものすごい行列になるので必死でした。
はじめのころは店長の三枝さんに、音をよく聞きなさいって言われてました。リヒート(サンドイッチを温める機械)の音やレジの音、仕込み場に入っていて目が使えなくても耳を使って状況把握するみたいな。でもそのおかげで、いまはレジが詰まっているな、そろそろサンドイッチが切れるな、キッチンの様子どうかなって、どのポジションにいても視野が広くなったと思います。
ー三枝さんからの学びが大きかったんですね。
大きかったですね。三枝さんは何をするにもアクションが早くて。課題を見つけたと思ったらもう改善してる!スピード感に驚きました。でもわたしがパンクしないようにペースを見ながら段階的に教えてくださいました。
最初の数ヶ月は現場に一緒に入って教えてもらいながら、いまは三枝さんが100本のスプーン二子玉川店と兼任で店長をされているので、基本的に営業はわたしの方で運営しています。社員数が多いレストラン業態と違って、プレッシャーも大きかったですね。
ー責任感が格段にあがりますね。チームの雰囲気はどんな感じですか?
みんな本当に仲がいいですね。基本的には主婦さんと学生メンバーで、三枝さん以外はみんな女子チームでわいわいやっています。笑
営業時間が10時〜18時なので、入の時間はポジションによって若干違うのですが、終わりは基本的に一緒なのでリズムが作りやすく、温度感も共有しやすいです。
回せば回すだけ売上に直結するので、アクションが目に見えて結果につながるところも面白いところです。少人数で各ポジションを回している分、目標も共有しやすく「今日は売上達成したね!ここの連携よかったね!」という会話ができる環境で、一体感のあるチームですね。
ーそれはチーム運営冥利に尽きますね!
お客さまのペースに委ねる、セルフスタイルのおもてなし
ー100本のスプーンでの経験を活かせた場面はありますか?
セルフサービススタイルなのでカウンター越しだと、お客さまが質問したりなにかをお願いしたりするのはなかなか難しいと思うんです。でもそんなときに100本のスプーンで培った「感じ取る」精神が生かされていると感じます。あ、この人聞きたいんだなと思ったら話しかけるし、ベビーカーであかちゃんを抱っこしているお母さんがソフトクリーム食べたいなら、諦めなくていいように押してあげるとか。当たり前のことかもしれないけど、そういう行動は割と自然と取れていると思います。
でも、逆にセルフサービスのお店だからこそ距離の詰め方は難しいなとは思っていて。以前ハンディキャップのあるお客さまがいらっしゃったことがあって、「良かったらお取りします」とお声掛けするととても恥ずかしそうにされていて、結局自分で取って席に行かれました。しまった、と思いました。
ーセルフスタイルだからこその距離のとり方、難しいですね。
「なんでレストランじゃなくうちに来るんだろう」って考えることがあります。レストランが満席だから来てくれる人もいるけど、そうじゃなくてあえて二階のサンドイッチを選ぶということは、自分のペースで何も気にせず食事したい、時間を過ごしたいっていうことだと思うんですよね。
そういう人たちに対してよりよい空間を作るには…と考えると、丁寧な会話やサービス以外のアプローチとして、もっとわかりやすく利用方法を伝えるためのHOW TO看板を作ったり、レイアウトで工夫などをしています。セルフスタイル流のおもてなしの方法を学びました。
…まあ、そうかと思えばもっとおすすめの説明など接客してほしいというお声をいただくこともあるので、まだまだ勉強中ですね。難しいです。
ー平野さんの自分に厳しく謙虚な姿勢が伝わってきます。
全部やるから大変だけど、全部できるから楽しい
ー二階のサンドイッチでちょうど1年を過ごしてみて、次の1年はどんなふうに働いていきたいですか?
年4回、展示会が切り替わるタイミングで展示とコラボしたパフェやメニューの入れ替えなどを行っているので、今年こそ自分の開発したメニューをやりたいです。休館中も館内の職員、近隣のお客さま向けにテイクアウトメニューの販売を試みているので、そこの販促をもっと工夫していきたいですね。あとは物販ももっと充実させたい。そして、「三枝さんがいなくても平気ですよ!」ぐらい、言えるようになりたいです。笑
…まだまだたくさんやることがありますね。
ーますます楽しみです。どんな人なら二階のサンドイッチで楽しんで働けると思いますか。
料理、接客、空間づくり、なんでもやってみたい!という人にはぴったりだと思います。開発、仕込み、販売まで一貫してできて、アクションの成果も見えやすいので。100本のスプーンに隠れて忘れられがちな二階のサンドイッチですが、まずはぜひ、遊びに来てください。誰でもウェルカムです!
撮影:藤﨑杏菜
取材・執筆:本間菜津樹