イワンコッチャナイ
「君に嫌われたらどうしよう、あの日の言葉に震える」と始まるこの MONO NO AWARE の曲が僕は大好きだ。きっと主人公は大した恋愛経験もない素直で純朴だがどこか変な青年であるに違いない。しかも絶対ムッツリ野郎だ。そういう人間は見所があって大変よろしい。常に周りの人間を楽しませてくれるだろう。
そういう上から目線な筆者はどうなのかというと、まったく目を当てられない悲惨な状態で東京のゴミ溜めに蹲っている。先日、いわゆるデートというものをしていたが、果てしてあれが世間一般のデートの定義のうちに収まるものだったのか甚だ怪しく、別れた後ポツンと取り残された私は一人原宿界隈を彷徨っていた。周りは友達や恋人と青春を謳歌している様子の若者で溢れていて、同じく若者であるはずなのに一人の私は街から浮いている気がして、何も見ずにそそくさと電車に乗って逃げ去ってしまった。
人に嫌われるのは嫌だ。ましてや好きな人に嫌われるなどそれはそれは耐えがたい苦痛であるに違いない。恋愛は難しい。相手に嫌われずにうまいこと自分の気持ちを伝えなければならないのだから。デートの後、頭の中でずっとイワンコッチャナイが流れていた。「唐突な気分の高揚でランチなんかに誘うからいざ当日に緊張すんだ。言わんこっちゃない」と言われているような気がした。もう二度と誘うもんか。勤勉に生きてやる。と心に誓っても、電車に揺られて家に着く頃にはそんなこと忘れて、じっと次の機会を伺っているのだから救いようがないアホである。言わんこっちゃない。