身なり
先日、何かの記念式典があった。自分も出席することになっていたから事前にウェブから手続きすると、じきに受付用のQRコードが送られて来た。コードの下に、ビジネスフォーマルで来るようにとの注意書きがある。上着とネクタイがいるということだ。今時珍しいことを云うものだと感心しながら、スーツとネクタイを用意した。
会場は遠方である。パーティもあると云うので新幹線で行った。
移動中にPCで事務処理などをやるつもりでいたが、実際乗ってみると新幹線は満席で、すぐ隣に知らないおじさんが座っている。この状況でPCを開けば画面がおじさんに丸見えで、何かと問題がありそうだ。それで事務は現地のカフェへ行ってから片付けることに決めた。
時間潰しにスマホを眺めていたら、おじさんの反対隣りに座った女性がPCを開いて何だかカチャカチャやり始めた。果たして画面が丸見えだ。自分はおじさんの視線に注意していたけれど、別段興味もない様子でスマホを眺めている。むしろ自分の方が他人のPCを覗いているような按配になって、どうもよろしくないから見るのを止した。
地下鉄に乗り換えたら、発車間際に若者が一人駆け込んで来た。
体格の良い、屈強な男である。随分汗をかいている。白のドレスシャツを着て、紺色のズボンを穿いている。靴は黒いスニーカーだ。ビジネスマンらしいが、あんまり身なりに関心がないのか、ズボンがずり下がっている。ウエストが緩すぎるのである。そうしてベルトばかりが頑張って腰の上に巻き付いている。ベルト穴はもう、一番端のを使っている。最初は一番内側の穴だったのを、太るにつれて段々ずらしていったのだろう。普通はここまでずらす前に買い換える。
どうも見苦しい。
一体この若者の身なりはどこから直せばいいのかと考えるうちに、目的地に着いたから電車を下りた。
よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。