
Photo by
aco_shizumori
怪人雪達磨
母方の墓所は広島の北の方で、中国山地だから冬には存外雪が降る。墓守をしている従叔父の話だと、島根県との分水嶺がすぐ近くなのだそうだ。
この従叔父は、自分が幼い頃頭に鍋を被せ、風呂敷のマントも着せて、「よし、行こう」と云って往来で三輪車を押してくれた。自分は随分喜び、一度家に戻ってからも「もう一回行こう」とせがんで、再度押してもらった。都合三回ばかりそうして繰り返したそうだ。
その話を後で母から聞いた時、そういうことがあったとは覚えていたが、回数までは記憶になかったから、何だかいい話を聞いたように思われた。何がいい話かは判然しないけれど、こうして随筆のネタになったのでよかった。
ある時、墓参りに行くと随分雪が積もっていた。自分の家の方では降っていなかったから何だか得をしたような心持ちで、早速雪だるまを作り始めた。
雪はたっぷりある。雪玉を転がすと段々大きくなるのが楽しくて、いい気になってころころ転がしていたら、じきに腰を落としてしっかり構えなければ転がらないほど大きくなった。それでも続けてゴロゴロやっていたら、とうとう直径一メートルほどになった。
それで胴体部分は終わりにして、今度は頭の方を作り始めたけれど、胴体で張り切りすぎたせいで急に面倒くさく思われてきた。結局、頭は二十センチ大でやめにした。
できあがった雪だるまは、果たして随分不格好である。何しろ頭が小さくてバランスが甚だ悪い。
「何か、頭がえらい小さいねぇ」と従叔父がニヤニヤした。
その当時は時々、身長二メートルほどのゴリマッチョが幼児の顔で、赤ちゃんの泣き声をしながら追ってくる夢を見た。あれはこの雪だるまだったろうと、最近思った。
いいなと思ったら応援しよう!
