文を書く
自分の中学校では班ノートというのがあった。班のメンバーで一冊のノートへ毎日順番に何かを書いて、提出するのである。すると先生がコメントを書いて返してくれる。内容は、日記でもその時思っていることでも何でもいい。
中二の時、詳しくは覚えないけれど何だかちょっとふざけたことを書いて出したら、担任の加山先生から「君の文章は面白い」というコメントが返ってきた。加山先生は国語教師だったから、国語の先生に云われるのなら本当だろうと感心した。
以来、班ノートも作文もあんまり真面目に書くのは止したのだけれど、どうかした弾みでたまに真面目なことを書くと、「百はもっと面白いやつを書くのがいい」と云われた。それでこちらも段々図に乗って、いよいよふざけた事を書きだした。
国語の授業で修学旅行の紀行文を書いた時には、明日香村を班ごとに散策中、道に迷って現地の人に案内してもらった、相手は変な冠をかぶってしゃもじみたいなのを持った人だった、口髭を長く伸ばして、目が存外パッチリしていた、と随分な嘘を混ぜて出した。さすがにやり過ぎたかと思ったが、加山先生はやっぱり「面白いじゃないか」と笑いながら返してくれた。認めてもらったのは甚だありがたいが、その割合にはあんまりいい点をもらえなかったようである。
高校に入った後、何かの用事で中学校へ行ったら加山先生がいた。
「国語の先生を目指すことにしました」と言ったら、「え、だって百、そんなに国語得意じゃなかったろう?」と驚かれた。それでどうやら、認めてもらったのはふざけた作文だけだったとわかった。
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