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蜜蜂を探して

 知り合ってからじきに、木寺が千里中央のセルシーへ行くと云い出した。
「セルシーへ何の用だ?」
「ヘアバンドを買いに行く」
 ヘアバンドなどどこでも売っていそうだが、どうして千里中央だったかはもう覚えない。セルシーにはちょうど自分も別の用があったから、学校帰りにそのまま、モノレールで一緒に行った。

 まずは適当な店に入って木寺のヘアバンドを探したけれど、どうも見当たらない。どこにあるのだかわからない。
 木寺はちょうど手近なところにいた店員の女性を「すみません」とつらまえた。
「はい?」
 店員は何だか訝しげな顔をする。
「ヘアバンドはどこですか?」
「は? ヘアバンド……ですか……?」
「そうです。ヘアバンドです」
「それは……お子さんがなさるんですか?」
 お子さんとは突然だ。自分はつい吹き出した。
「いえ、僕がするんです」
「あの、うちは子供服(の店)なんですが……」
「そうですか」
 自分は膝から崩折れた。

 それから別の店で、木寺はヘアバンドを二本買った。黄色と焦げ茶だったから、組み合わせると蜜蜂のようである。
「これからはハニービーと呼んでやろう」と言ってやったら、「何がハニービーや」と、つまらなそうであった。
 そうして、「誰が二本一ぺんに着けるか」と言った。

 翌日学校で子供服の話をしたら、存外誰にもウケなかった。それでその話をするのは段々よした。
 自分はこの時、ライブの予定があったから衣装を買った。テラテラした生地の白いシャツだった。 このシャツはステージで二度着て、どこかへやってしまった。
 木寺にこの時の話をすると、「お前は水商売のお姉ちゃんが着てそうなシャツを買った」と言う。

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