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忘れられない旅#5
忘れられない旅。
私は旅が好きだ。学生時代から47都道府県制覇を目指して、1週間近く家を空けることもあったくらい好きだ。
お気に入りの旅行先は普通で、王道の北海道や沖縄、京都、金沢、熱海、仙台あたりにも思い出はたくさんある。
「忘れられない旅」そう考えるとどうだろうか。忘れられないにも色々な種類があると思う。素敵な思い出が出来たから忘れられない。ひどい出来事があったから忘れられない。忘れられない人と行った旅。これはもしや、ものすごくざっくりとしたテーマなのかもしれない。
困った。私には忘れられない旅がたくさんある。せっかくの機会なので創作意欲の赴くままに、過去の様々な「忘れられない旅」を振り返ろうと思う。
ep.5夢の国への旅
これを旅と呼ぶかどうかは別として。心の中に残っていたモヤモヤのような、わだかまりのような、何とも言えない感情が昇華出来たので、残しておこう。
高校1年生から7年間、私は同じ人と一緒に居た。正確に言うと、くっついたり離れたり、切っても切れないような縁だった。今なら分かる。彼は私の気持ちに、大いに甘えていた。「こいつは大丈夫だろう」くらいになっていたのだと思う。
大学4年生のある日、夢の国に誘われた。「有給が取れるし、福利厚生で割引も効くからどう?」私の大好きな場所に、大好きな人と一緒に行ける。心から嬉しくて、新しい服を買ってサンダルを買って、ダイエットまでしてその日を待っていた。
当日、車で迎えに来てくれた彼はスーツだった。「家族にばれたくなくて」車内で私服に着替えていた。「職場の人に言いたくないし」お土産は何も買わなかった。「疲れたから休もうか」せっかく来たのに、数時間車内で休憩した。なんだか今までで一番、ワクワクしなかったのだ。私はこうしたい!こうして欲しい!何も言えない自分に気づき、絶句してしまった。
これがきっかけという訳では無いが、翌春あっけなく私の7年は終わった。ものすごく泣いたし、切り替えられない、忘れられないと思っていたが、全ての痛みは時間が解決してくれた。(このあっけなさはいつか記事にしたい。当時の私よ、そこで終わってよかったよ!)
約10年後、同じ場所に、違う人と行くことになった。私がしつこく誘い、相手は渋々。10年前と違ったのは「私はこうしたい」が前面に出せたこと。それに対して「いいよ」「いやだ」相手も意見を言ってくれたこと。「言いたいことが言えている」と私が思ったように、相手も同じように思ったそうだ。
行くなら朝から行こうよ!と言われてものんびりを貫き、ゆっくりランチをして。やりたいことを詰め込んで、へとへとになるまで遊んで、待ち時間にもずっと喋ってふざけて笑いあって。私が望んでいたのは、こういう関係性なのだと思う。私が私らしく居られるのと同じくらい、相手が相手らしく居てくれる。この安心感は何にも代えがたいものだ。
相手の意見を受け入れるだけでも、相手に自分の意見を押し付けるだけでもなく、譲れないものの軸はしっかり持ち、双方が納得出来る妥協点を探し、相手の意見に耳を傾ける。簡単そうで難しいこれらのことが出来る関係性を、わずかな期間で築いてくれた、今の彼には感謝しかない。
「楽しかったけど、次は10年後でいいや」えーっと言いたかったけど、ぐっと堪えた。きっと10年後は2人ではなく3人で来られるから。
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