
【スコープ】1日約15分の運動は精神に好影響⁉
スポーツ用品大手のアシックスはこのほどスポーツがメンタルにおよぼす効果に関する研究成果をまとめた。スポーツがメンタルにおよぼす効果を研究するプロジェクト「Uplifting Minds Project(アップリフティングマインズプロジェクト)」の一環として、運動習慣の有無が精神にどのような変化を引き起こすかを測定するプログラム「Mind Race(マインドレース)」を実施し、そこで得たデータを解析したところ、自身が日ごろから行っている運動を1日あたり「約15分9秒」行うと、精神状態にポジティブな影響を与える可能性があることがわかったという。
今回のプログラムは21カ国から運動習慣のある57人を対象に3週間実施した。1週目は各人が日ごろから取り組む運動を通常通り行い、2週目に運動を休止、3週目に再び通常どおりの運動を行うといった内容で、精神状態の変化を時系列で測定した。その結果、運動をしない期間は「自信」が20%、「ポジティブさ」が16%、「エネルギッシュさ」が23%、「ストレスに対処する能力」が22%、それぞれ低下したという。精神状態を分類した計10項目を分析したところ、参加者の全体的なスコアは平均18%低下しており、運動しているときが100点満点中68点だったのに対し、運動を休止した際には55点まで減少。わずか1週間の運動不足が心の状態を低下させることがわかった。また、参加者が通常の運動習慣に戻ったときは、全員が心の状態の改善を感じていたという。
今回の研究はEEG測定(脳波測定)を使用した独自の方法により、運動前と運動後の個人の認知反応と感情反応の違いを明らかにしながら、個人の生体情報の解析も行い、適度な運動が精神に与えるポジティブな影響を定量化した。キングス・カレッジ・ロンドンに勤務し、運動とメンタルヘルス研究の第一人者であるブレンドン・スタッブス博士と協力し、2021年6月から実施している。これまでに79カ国から数千人の人々が測定を行っている。同社は「今後、この研究で得られた知見を生かし、日常的に運動に従事していない人々が、スポーツによって得られる心の高揚を感じてもらう手助けができるよう、新たな取り組みを推進していきたい」としている。