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【ヒットのカギ】“免疫”を前面に押し出し攻勢へ(下) キリンビバレッジ「iMUSE(イミューズ)」
(上)から続く
てこ入れ策はこれだけにとどまらない。商品ラインアップも大きく見直した。18年の発売当初の「iMUSE(イミューズ)」の味は「レモン」のみだった。しかし、「SUPLI(サプリ)」ブランドで発売していたプラズマ乳酸菌が入ったヨーグルト風味の飲料を「iMUSE(イミューズ)」ブランドに加えた。
キリンビバレッジのプラズマ乳酸菌飲料「iMUSE(イミューズ)」のブランド刷新に携わった遠藤楓さん
さらに、20年1月には「iMUSE(イミューズ)」ブランドに「水」も新たに追加した。「健康飲料なので毎日飲んでもらいたい。このため『水』はどうしても出したかった」と力を込める。もっとも、商品化のハードルは高かった。プラズマ乳酸菌を培養させる際、独特の味が発生してしまう。味や甘みがついていればこのプラズマ乳酸菌の独特な味を隠すことができる。しかし、水だと砂糖を入れることができない。このため、キリンビバレッジの強みであるレシピ開発力で、なるべく自然に味わうことが出来るよう、ほんの少しのフレーバーを重ねることで、プラズマ乳酸菌が持つ独特の味を隠し、商品化にこぎつけたという。
キリンビバレッジのプラズマ乳酸菌飲料「iMUSE(イミューズ)」。左から「レモン」、「水」、「ヨーグルトテイスト」
「水」の発売直後、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうという想定外の事態となった。未知のウイルスの流行で、世の中の多くの人が様々な情報に踊らされていた。テレビの情報番組や新聞の報道などで新型コロナウイルスは納豆を食べると良いと伝えられれば、翌日のスーパーマーケットの店頭では納豆が消えてしまうような日々が続いていた。
プラズマ乳酸菌を研究しているキリン中央研究所(横浜市金沢区)
そんな状況を目の当たりにして、「冷静な判断ができないという状況はとても不安で、どうにかしないといけないと思いました」と当時を振り返る。プラズマ乳酸菌はこれまで実施してきた研究で免疫機能を維持する効果があるのがわかっていた。このため、「パッケージでどのように表示したらお客様に理解してもらえるのか。チームのメンバーと何度も何度も議論を重ねた」という。もっとも、これまでの市場調査でプラズマ乳酸菌の機能をきちんと説明し、理解してもらえば購入してもらえるということがわかっていた。「それだけにプラズマ乳酸菌の機能をお客さまに上手く伝えることができれば、大化けする可能性がある」とにらんでいた。
キリンビバレッジの遠藤楓さん
「とにかく免疫維持に良いですということを伝えたかった」(遠藤さん)というように、新たに生まれ変わったパッケージの上部には「健康な人の免疫機能の維持をサポート【プラズマ乳酸菌の研究報告】」と大きく書かれている。消費者からは「パッケージからプラズマ乳酸菌の機能が伝わってくる」との声も少なくなく、遠藤さんの読み通りになっているようだ。売れ行きは好調だが、遠藤さんは「現状では『免疫を維持したい』と思っている人しか購入してもらえていない」と早くも気を引き締める。「需要が顕在化している層はほんの一握り。ブランドをさらに広げるためには、潜在層の掘り起こしが必要です。引き続きプラズマ乳酸菌についてさらに広く伝えていく」と意欲を燃やしている。