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【ヒットのカギ】“免疫”を前面に押し出し攻勢へ(上) キリンビバレッジ「iMUSE(イミューズ)」

 飲料大手のキリンビバレッジが、プラズマ乳酸菌飲料「iMUSE(イミューズ)」で攻勢をかけている。2020年11月末のブランド戦略の刷新で、機能性表示食品として免疫機能の維持を前面に打ち出し、昨年11月末の発売から約3カ月半の販売本数は合計5000万本を超えた。ヒットの影には、昨今、ヒトの免疫機能が注目された面もあるが、プラズマ乳酸菌を消費者により深く知ってもらうための緻密な戦略があった。  

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取材に応じるキリンビバレッジの遠藤楓さん

 「iMUSE(イミューズ)」は17年に産声をあげたキリングループの健康関連商品の新ブランド。キリンビールやキリンビバレッジ、小岩井乳業、協和発酵バイオといった同グループの事業会社各社が免疫の活性化に効果があるとされるプラズマ乳酸菌を使った商品をそれぞれ発売している。キリンビバレッジは18年1月にプラズマ乳酸菌飲料「キリン iMUSEレモンと乳酸菌」を発売した。キリングループの横断ブランドという話題性もあり、滑り出しは上々だった。しかし、一巡すると売り上げは減少。こうした中、社内では早くもブランドのてこ入れが不可欠という機運が高まっていた。

【画像】商品イメージ②

キリングループの健康関連商品ブランド「iMUSE(イミューズ)」の商品

 「これから大変だ。どうしよう」。マーケティング部ブランド担当主任の遠藤楓さんは「iMUSE(イミューズ)」のブランドてこ入れ担当者への打診があった時の胸の内をこう明かす。当時、遠藤さんはキリンビバレッジの紅茶ブランド「午後の紅茶」のブランディング業務に携わっていた。同社の「午後の紅茶」は緑茶ブランド「生茶」、缶コーヒーブランド「FIRE(ファイア)」と並ぶ旗艦ブランド。消費者にブランドが浸透しているため、認知獲得に手間をかける必要はない。しかし、「iMUSE(イミューズ)」が属する健康関連商品分野に対する知識は乏しく、販売の減少傾向に歯止めがかかる兆しも見えていない。遠藤さんの不安は募るばかりだった。

プラズマ乳酸菌画像

プラズマ乳酸菌(キリンホールディングス提供)

 いざ仕事にとりかかると一つの疑問が沸いた。それは「『プラズマ乳酸菌とは何か?』『プラズマ乳酸菌を摂取するとどんな効果があるのか?』という情報が消費者にきちんと伝わっているのだろうか」(遠藤さん)ということだった。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)の関係でパッケージなどに“免疫機能の維持”といったことを前面に打ち出すことができなかったためで、単なるスポーツドリンクの一つと思われている可能性もぬぐい切れていなかった。

研究風景

 そこでキリンビバレッジがプラズマ乳酸菌をアピールするためのツールとしたのが「機能性表示食品」だった。機能性表示食品とは飲料・食品メーカーなどの事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能を表示した食品のこと。事業者が安全性や機能に関する科学的根拠などを販売日の60日前までに消費者庁長官に届け出ると、「おなかの調子を整えます」や「高めの血圧を下げる」といった健康のサポートが期待できるということを商品パッケージなどに表示できる。キリンビバレッジは機能性表示食品の受理を「iMUSE(イミューズ)」のブランドてこ入れ策の柱とした。

(下)に続く


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