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「口コミ」から生まれる他者との「きっかけ」

昨日の記事の続きのような感覚で書いています。

大量のコンテンツから何かを選び取るきっかけに、口コミが大きな役割を果たすと書きました。多すぎる選択肢の中で一つの道筋を示してくれるもの。それは見知った人や信頼する人の言葉だと思います。

見知った人は言うまでもなく顔見知り。仮に一方的であっても、顔の見える安心感から生まれる親近感はあると思います。けど”顔”っていうのも、本当の顔だけでなく、タイムラインのアイコンでも良かったりするから不思議です。

信頼する人というのは、ここでは結構曖昧。顔の見える見えないは案外関係なく(そういう意味では上記の”顔”に近い)、私としては、”気持ち”を伝えられる人といった感じです。(それすら曖昧。。。)

自分が気になっているものを「それいいよ!」と言っている人。そんな口コミを見た瞬間に、その人がとても気になる人になっちゃいます。もっと詳しいことを教えてほしいと思うし、発信してほしい。手に取るきっかけを加速させてほしい。

コンテンツにおける物語の軸は2つあり、それは生まれた背景育つ背景です。

①生まれた(生まれる)背景

これは文字通り、どのようにして誕生したかの物語。生産者の苦労やアイデアの出所。楽しかったことや工夫したこと。手にした人へ伝えたい作者のメッセージなんかもここに含まれます。

個人的な話をします。昔買ったジャケットにフラワーループが付いていました。下襟の裏側にある、花の茎を固定するための糸のことです。これまで買ったジャケットにそういうものは付いておらず、初めて知る世界に、店員さんの説明を聞きながらとてもわくわくしたことを覚えています。現代ではほとんど使われることのないフラワーループをあえて付ける心意気。伝統を忠実に再現し、しかし遊び心も忘れないそのジャケットが、今でも一番のお気に入りです。

②育つ背景

これは、生まれたコンテンツがどのように人々へ渡っていくかを描いたもの。私の思うそれが、今回も取り上げている「口コミ」です。

コンテンツを通して得た体験や感想。そこから発信されるユーザの「気持ち」。その内容がいいものであれ悪いものであれ、”気持ち”の積み重ねがコンテンツを育てていきます。

個人的な話です。気になる商品を見つけたとき、その商品名のハッシュタグをtwitterやInstagramで検索することがあります。商品だけでなく体験も検索します(飲食店や美術館など)。いい口コミもありますし、もちろん悪い口コミもあります。単純に検索すると、その混沌とした状況に胃もたれし、何がいいのか分からなくなります。私たちの身の回りはどうでもいい情報であふれているんだなあと思わされます私が勇気づけられるとき、それはタイムラインに流れる見知った人の投稿です。気になる展覧会や映画、飲食店の感想を投稿していたり。そんな些細なことが決め手になり、安心することがあります。

いいも悪いも付加価値となり、コンテンツをアップロードし続けます。作者の関与しないところでのみ、作品は育っていきます。コンテンツという苗木は、口コミという環境に左右されて育ちも廃れもするのかな~と思います。

ものがあふれ、何を手にしたらいいのかみんなが不安。だからせっかく手にするなら”意味”のあるものにしたい。その意味とは、実体験を通して得られる快感のようなもの。音楽をじっくり聞くことや(レコードって分かりやすい)フェスへの参加、陶芸やサイクリング。

じゃあ体験を意味あるものにするにはどうしたらいいのか。

一つは手あたり次第興味のあるものを手に取ること。自身のアンテナに素直に、自分自身で物語を構築していく。

もう一つは、誰かの”気持ち”をもとに手に取ること。自分の気持ちと誰かの気持ち、2つを合わせて自分の物語として昇華させていく。(書いていて思ったことで、興味に”気持ち”が合わさると、すごいエネルギーになりそう)

みんなが何か「意味」を求めている。何でも手に入る世界では、何かを手にすること以上に、「なぜ」手にしたかという理由があると嬉しい。体験に付随する物語は、そのモノだけにとどまらず、自身の物語ともなっていく。

みんなが求めている”意味”とは、実は「物語」のこと。みんな何かを伝えたいと思っていて、そのベースとなる物語を求めている。自分語りをする「きっかけ」を求めている。

誰かの「語り」が誰かの”物語”となり、そしてまた誰かへ向けて”語られ”ていく。自分を軸に、みんなの物語が連環のように連なっている。大げさだけど、発せられる言葉というのはその人の人生の切れ端のようなものだと思う。他人の人生を、私たちは案外簡単に咀嚼している。けどその手軽さが、本来分かりあうことはできない他者との懸け橋となっているのかもしれない。

書いていて「口コミ」っていいな~と改めて思いました。他者とのきっかけを作ってくれる口コミが、私は好きです。誰かと生きていたいという気持ちはいつだってあります。口コミを通して感じられるみんなの気持ちや、そこから見え隠れする人生を、これからも大切にしていきたいです。