あとはないの


木こりが斧を失くしました。

泉から、女神さまが出てきて言いました。

「あなたが欲しいのはこの金の斧ですか?」
「いいえ、違います。普通の斧です」

女神さま、引っ込みました。


しばらくして、女神さまが泉から出てきて言いました。

「あなたが欲しいのは、この銀の斧ですか?」
「違います。普通の斧です」

女神さま、引っ込みました。


しばらくして、女神さまは出てこなかったので、木こりが女神さまを呼びました。

女神さまは言いました。

「なんですか?」
「普通の斧はありませんか?」
「ここにはないです。」
「え?…  通常だと普通の斧を出してきて、『正直者ですね、全部の斧をあげます』ってなりませんか?」
「いいえ、あとはありません。あなたは泉に斧を落としていないので。見ていて困ってるのかな?と思ったので、手持ちの斧を安くお譲りしようかと、出してきただけです」
「…。」
「なので、あなたは正直者ではないですね?落とした斧を探しておいでなさい。そして真面目にコツコツと仕事に励むが良いですよ。きっといいことがあります」

女神さまは引っ込みました。

木こりは呆気に獲られてしばらく動けませんでしたが。腑に落ちない顔をしながら、自分の斧を探し当てました。


それから、木こりは真面目にコツコツと仕事に打ち込みました。斧は不思議なことに使えば使うほど軽くなり、どんどん仕事がはかどりました。

頑張ったので筋力がついたのでした。そして、立派な木こりになりました。

<おしまい>

無限連句で遊んでいるうちに、書きたくなりました。

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