天穂のサクナヒメ レビュー・感想(ネタバレあり)
天穂のサクナヒメをクリアした。
リリース前からも注目作ではあったが、リリース後の大きな話題性は、これまでの国内インディーゲームでは見たことのないようなものとなった。
その大きな話題性から、多方面の注目を集めている本作について、稚拙ながらもプレイ後の感想を記してみたいと思う。
どんなゲームだったか
親の残した功績のおかげで悠々自適な生活をしていた豊穣神「サクナ姫」は、とある事情により神の都に逃げ込んできた人間とともに未だ神の力が及ばず鬼の蔓延る島へと左遷されてしまう。
食べるものにも何にも困ることなどなかった都での暮らしから一変、神として、共に暮らす人間たちの先頭に立ち、何もない土地に田を起こし、日々の食べ物を自らの手で確保しなければならなくなってしまった。
都へ帰るための条件として、蔓延る鬼の元凶を突き止める指令を受けたサクナ姫は、それまでとはまるで違う環境での暮らしに初めは戸惑うものの、人間たちと共に暮らしていくうちに、神として成長していくのであった……
サクナ姫は父が武神、母が豊穣神なので、豊かな稲作が出来れば出来るほど、恩恵として武力を得られるという設定で、これがゲームの2大メイン要素として、米作りパートとアクションゲームパートに割り当てられる。
拠点で米作りを行うことでサクナ姫のステータスを成長させると、より難易度の高いマップが探索可能になり、探索範囲が広がると、米作りに必要な肥料などをより手に入れやすくなる…といったように、米作りとマップ探索のサイクルを繰り返すゲームとなっている。
また、マップの攻略が進んでいくうちに、島に出現する鬼たちの元凶とサクナ姫の両親との因縁や、共に暮らしている人間達の背景なども徐々に語られていく。
こういったストーリー部分は、綿密な世界観の元で語られていくため非常に見応えがあるものとなっている。
やや人を選ぶかも
まず、何かと話題の米作りパートは、様々な要因により稲の状態が変化するシミュレーションゲームだが、どういった要素が稲にどういった影響を与えるのか、細かな情報はゲーム中にほぼ明示される事がない。
プレイヤーが稲に対して行った行動に対し、稲の状態がどういう風に変化したのかを試行錯誤していく事になるが、選択できる要素数の多さ、またそれらの組み合わせの多さが相まって、なかなかに道筋が立てにくいゲーム性に感じた。
その分やり込みの楽しさや奥深さはあるのだが、試行出来るパターンの多彩さと結果確認の難解さから、難易度は高い部類に入るだろう。
やり込みでなければ、とにかく数値がいい方に向く行動を繰り返せばそれなりにいい米は出来上がるため、ストーリーの攻略で詰まってしまう事は少ないと思われるが、その分単調な繰り返しに陥りがちでもある。
次にアクションゲームパートだが、往年の同人ゲームのような雰囲気のある、軽快でテンポのいいゲームとなっている。
一定のエリアに出現する複数の敵キャラクターに対し、方向入力ごとに変化する弱攻撃、強攻撃、4つずつ設定できる戦技と、衣アクションを組み合わせて入力しコンボを発生させながら撃破する作りで、ボタンをテンポよく入力し、空中に浮かして無防備な状態になった敵に、連続攻撃を打ち込む爽快感や気持ちよさがある。
また、特定の攻撃では敵を吹っ飛ばす事ができ、吹っ飛んだ敵が衝突した敵はダメージを受けながらまた吹っ飛び、また衝突し…と、横並びの敵を一掃できるようなパターンもあり、こちらも上手く決まった時は非常に爽快だ。
しかしながら、ややピーキーに感じる操作性もあり、面白く遊ぶための難易度はやや高めに感じた。
ゲームの全体的な流れは、前述の通り米作りでのパワーアップがベースとなっているようで、ある程度上手に操作できたとしても、サクナ姫の成長が足りない場合はあっという間に負けてしまうバランスとなっている。
コンボで敵に連続攻撃を決められる気持ちよさはあるが、ゲームが中盤から終盤に差し掛かってくると、これらもある程度ワンパターン化してしまい、ひたすら決まったボタンを入力するような単調さを覚えることもままあった。
これらの事から、キャラクターの可愛さや米作りゲームというキャッチーさ、SNSでの話題性から気軽にゲームを始めると、思わぬゲーム性の複雑さや難易度で離脱してしまうプレイヤーも多いのではないかと感じた。
なお、オプションによって難易度の調整は可能になっているため、少しでも大変に感じたら難易度を下げてプレイする事をオススメする。
ストーリークリアまでがやや冗長か
コンソールタイトルらしい値段設定に見合うボリューム感を出したかったのか、もしくは、牧場ゲームのようなゆっくりとしたテンポでのプレイを想定していたのか、狙いは定かではないが、ストーリークリアまでの展開に冗長さがあるように感じた。
(私のクリア時間はちょうど30時間だった)
順にマップを解放していき、解放が進むとストーリーのクリアに近づくのだが、この解放の条件を満たすためにどうしても米の完成を待たなければならないようなことが何度かあった。
このような状態になると、マップの探索側でやれることはほぼ無くなってしまい(素材集めぐらい)、冬になって米が完成するまではやることが一気に少なくなってしまう。
マップの探索と米作りがいい感じに循環していると、テンポよく楽しめるのだが、この米完成だけを待つ状態はただただプレイが間延びしてしまい、ストレスに感じた。
これと合わせ、ゲーム中盤の展開にもテンポの悪さがある。
ゲームが折り返しに差し掛かかる頃、ストーリー進行上の理由でサクナが弱体化されてしまい、その状態ですでに探索済みのマップを強制的に周回させられる場面が到来する。
これが、本当に、ただ弱くなった主人公で全く同じマップ、同じ敵との戦いを強制させられ、ゲーム全体のプレイ時間の中でも、非常に辛い時間となった。
サクナヒメの成長を演出する材料として、このプレイ時間のボリュームがいい感じに効いているような面もあるのだが、クリア後のやり込み(米作り)は十分にあるのだし、ストーリークリアまではもっとテンポのよい作りだと良かったなと強く思った。
世界観とストーリーの素晴らしさ
さて、なぜここまでに、やれちょっとゲームが難しいだの、やれテンポが悪いだのとケチを付けるような事を言ってきたかというと、サクナヒメの世界観やストーリーが非常に素晴らしいものとなっているからである。
せっかく興味を持ってくれたプレーヤーには、是非ともストーリーをエンディングまで見て欲しいし、各キャラクターに発生するクエストとストーリーも、一通り見て欲しいと感じる。
主人公サクナの葛藤や、その友との確執、友情、田右衛門たちの背景など、
それら全てがしっかりとした世界設定の上で織りなされており、エンディングで受ける感動は強烈だ。
込み入った面もあるが、ベースとしては誰もが共感できるようなテーマ性になっており、ゲームを始めた人が途中でやめてしまうなどして、このストーリーを体験出来ないのは非常にもったないと思った。
アニメ化などの映像化をすると、また人気を博すものになるのではないかとも感じた。
米は力だ!
天穂のサクナヒメというタイトルは、秀逸なクオリティのインディーゲームである。
実際にプレイするまでは、ゲーマーならその名を知らない者はいないデベロッパーが制作しているタイトルでありながらも、大手コンシューマータイトルメーカーをパブリッシャーに据え、プラットフォームが展開するプロモーションでも度々取り上げられたりなど、もはやインディーゲームと呼べる範疇を超えているのでは…?などと考えたりしたものだった。
しかしながら、実際にプレイしてみれば、このタイトルが生粋のインディーゲーム、いや、むしろ、同人ゲームであるとすぐに理解した。
実に同人ゲームらしい、制作者のスキやこだわりの詰め込まれっぷりと、すっきりとした割り切り具合のバランスが心地の良いタイトルだった。
この制作者の思いに呼応するように多くのゲーマーがプレイし、SNSを通じて大きな話題となり、これまでの国内インディーゲームーシーンでは類を見ないような展開を生み出しており、サクナヒメという作品が持つ力強さを物語っているように思う。
この米が生み出す力強さに、今後も様々な展開が続くことを期待せずにはいられないのである。
おわり
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