のろまなウサギ
今日も挨拶出来なかった。
朝、出かける時には、今日こそはと頭の中で何度も練習している。
なのに、いざとなるとしり込みしてしまう。
帰宅してからも、出来なかった事ばかりを思い出す。
いつもいつも、私はこうだ。
なにかやりたい事があっても、躊躇して止まってしまう。
結局は何もしないまま、時間だけが過ぎて後悔だけが残る。
自分でも、自分の性格がイヤになる。
どうにかしたい。
なんとかしなければ。
友人が飼っているウサギを見せてもらいに行った。
ケージから出て来たウサギは、フワフワしていて可愛い。
私は友人が抱いているウサギを撫でようと手を伸ばした。
その途端、ウサギは友人の手から飛び出し、部屋の隅へと隠れてしまった。
「ごめんね。この子、知らない人に触られるのが怖いみたい。
憶病なんだって」
なんとなく、自分と似ているな、と感じた。
「あなたはウサギの月の一番初めの日に生まれて来たの。
だから、誰よりもすばしっこくて、優しいのよ」
母は私に時々そんな事を言う。
全然すばしっこくなんかない。
ただの憶病でのろまなウサギだ。
でも・・・・・。
憶病だから、怖いという気持ちがわかる気がする。
そんな気持ちのとき、どうして欲しいのかもわかる気がする。
優しい、ならなれるかも。
「年中さんになってから、年少さんの面倒を良く見てくれているんですよ」
あと3時間遅く生まれてきたら、まだ年少さんだったと思うと、あの子に申し訳ないような気持ちになる。
同じクラスの子の中で一番下。
この年頃の子の1年は大きい。
他の子と比べると、体力も話す言葉も劣っている。
でもきっと、誰にも負けない程優しい子。
ウサギの月の初めの日の子。
私を見つけて、あの子が大急ぎで駆けて来る。
「ママ!きょう、いっぱい、あいさつできたの!
みぃちゃんに、あっちゃんに、ひろとくんと・・・」
ワンド9 逆位置(左側)
準備不足や理想を叶えるための手段を検討する。
主人公は、母の言葉をうのみには信じず、自分が出来る事は何なのかを考えて、行動を起こしています。
ま、4,5歳の子がこんな考え方はしないだろうけど(笑)
ソード8 逆位置(右側)
今まで自分を縛っていた物から解き放たれる、自由になる。
主人公が出来ないと思い込んでいた自分の殻を、すこしだけ割って思った事が出来るようになっています。
うさぎの月とは卯月の事ですが、4月の事です。
本来は旧暦3月を卯月と言います。
子丑寅卯・・・は月の数え方で、旧暦11月が子の月となってます。
お母さんは、この事は知らず、干支の卯はうさぎだと思っていたのかもしれません。
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