レゲエマスターを買ったことについて
事の発端は2023年7月だった。
Tour 20th Anniversary "Live Hell-See”というあまりにも素晴らしすぎるツアーを観てsyrup16g熱が高まっていた私は思った。
レゲエマスターがほしい。
それと同時に、正気の沙汰ではない、とも思った。
私がギターで弾けるのは明日を落としてもと翌日のコードだけ。
エレキギターなんて触ったこともない。
そんな人間が買うべきものではない。
客観的な判断はできていた。
とはいえレゲエマスターへの憧れは簡単には消えず、楽器屋さんでこの形にオーダーできるかなどと相談してみたり、デジマートの注文ページを眺めたりして過ごしていた。
事態が急転したのが2023年11月。
デジマートからレゲエマスターの注文ページが消えていることに気付く。
いざとなればこのページからいつでも買えると思っていたのに、いきなり消えてしまうなんて。
もうレゲエマスターを買えないの?
私はレゲエマスターを担ぐことなく死ぬの?
混乱と焦りで頭が真っ白になった。
極力電話を避けて生きているのに、直ちに楽器屋さんに電話で問い合わせをした。
「以前デジマートに掲載されていたムーンのレゲエマスターはもう注文できないのでしょうか?」
半ば祈るような気持ちだったと思う。
質問については、店員さんがメーカーに確認し、改めて連絡してくれることになった。
私の不安は持ち越されることになった。
翌日、さっそく電話がかかってきた。
店員さん曰く、特注品になるが作れるとのこと。
納期が半年〜1年ほどかかるとのこと。
発注や相談があれば店舗にいる、とのこと。
タイミング良く、ちょうどその週末、都心に出かける用事があった。
ものすごく緊張しながら楽器屋さんに乗り込み、電話した者です、と名乗ると、ギターに詳しい店員さんが、店舗に置いてあるレゲエマスターを見せてくれることになった。
確か水色系とオレンジ系の色をしていたと思う。
試奏をさせてもらうと、アコギとは全然違う重さにまず驚いた。
そして、思っていたよりジャキジャキした音だ、と感じた。
もうちょっと柔らかい音のほうが好きだなと思った。
実をいうと音の問題は認識してはいた。
私が一番好きな五十嵐のギターの音は、遅死の土曜日やきこえるかいで弾いているリッケンバッカーなのだと思う。
あの温かみのある音とレゲエマスターでは全然違うだろうな、と勘付いてはいた。
ただ、私がレゲエマスターをほしいのは、音ではなく、syrup16gを、五十嵐隆を一番象徴するギターだからだ。
リッケンバッカーの音は好き。
でも五十嵐=リッケンとはならないのだ。
やっぱりそこはレゲエマスターなのだ。
レゲエマスターの生音が私の好みドンピシャではなく、一瞬だけリッケンバッカーが頭によぎったが、先述した理由を覆せるほどではなかった。
さらにいえば、どちらにせよエフェクターで変わると思うし。
そして、契約書にサインをした。
25万+税。
それまで10万以上する買い物なんてしたことなかった。
現実味が薄かった。
楽器についても全然わからないので、「これの通りにしてください」と、資料を渡して帰った。
そして今年のゴールデンウィーク。
楽器屋さんから電話がかかってきて、ギターが完成した、支払いを確認次第、発送する、とのこと。
支払いフォームを作ってもらい、震えながらクレカの情報を入力するも、弾かれる。
カード会社に問い合わせると、額が大きすぎて不正利用だと思われたらしい。
解除してもらい、晴れて入力成功。
そしてレゲエマスターが我が家にやってきた。
自分の部屋にレゲエマスターがある。
はっきり言って最高すぎる。
よくわかんないけど風水とかにも良いと思う。
多分だけど。
だってこんなにかっこいいんだもん。
5年後、10年後、私がsyrup16gを聴いているかなんて正直わからない。
生半可な気持ちでファンをやっているつもりはないけれど、未来のことなんて何も保証はできない。
でも、この先、私がsyrup16gを聴かなくなったとしても、フロントマンに憧れてギターを買ってしまうぐらいにはこのバンドを心の底から大好きだったということは絶対に消えないし、大切にできると思う。
ギターなんてろくに弾けないくせに25万も出して特注品を買うという愚行も、今の私にとっては正しい行いだった。
このギターに恥ずかしくないソドシラソのソロを弾けるようになりたいです。
このMV(だけじゃないけど)をきっかけに、何人のいたいけな少年少女がレゲエマスターを手にしたんでしょうね。
少年少女と呼べる年齢じゃないって?
ロックスターの前では我々は永遠に少年少女なんだよ。