挑戦が自分を創る ~第6回室戸阿南海岸国定公園ウルトラマラソン120k~
4/29 2:30起床
いよいよ120kmウルトラマラソンのスタート。
それほど熟睡はできなかったが、それも想定していたので、気にすることなく、体は休まったしいいか!といった気持ち。
静かに準備し、その時を待つ。
コースは、前半は平坦、後半60kmはほぼ峠道で、激しいアップダウンが3度ほど続く…
何がしんどいかって、100km超えてからも、まだ山道で、ラスト5kmでさえも山を登っていく、まさに死力を尽くすコース。
100km超えウルトラで平坦だけのコースをとるなんて、ほぼ無理なわけで、それも含め、12時間切りを考えなければならない。
想像できないことは想像すべきか
これはいつも思う。
何か新しい挑戦をする際には、途方もない道のりの困難さは想像が難しい。
やってみて、意外と簡単だったということもあれば、全く届かないこともある。
ただ、自分の経験では想像もできない世界のことを想像するとき、人間は大抵不安に駆られ、心配になって、臆病になる。
10kmも走ったことのない人が120kmのウルトラに挑戦しようと思うと、その苦しさは、ちょっとわからない領域になる。人間の分からないことに対する恐怖心はものすごく大きい。
実際、自分も100kmを超えるウルトラで、自分の体がどのように変化するかは想像がつかなかった。
そこで一つ疑問が生まれる。不安になるなら、想像できないことは想像すべきなのか、それとも考える必要のないことなのか。
想定から生まれる「疑似想像」
結論、必要だと思う。
そこには段階があって、想像はできなくとも、いくつかに分解して「想定」することで、全体像を疑似的に捉えることができる。
例えば、ゴールは遠く、自分ができるのかは想像できないが、この山あたりで脚攣りが起きるのではないか、ここからここまでのエイドの間隔が広く、精神的につらい区間になるのではないか、など到達地点は想像できなくとも、途中経過は「想定」できるのだ。
その「想定」される出来事一つずつに対策を講じることで、自分の意識・想像できる範囲が広がっていく。やがて初めは想像できなかったゴールに、意識が先にたどり着く。気持ちと意識は先に放り投げて、あとは体をゴールに運ぶだけ。
純粋な好奇心で
とはいっても想定していなかったことが起きるのが現実である。
そんなときには、ガリレオシリーズの湯川学教授のように、「実に面白い」と言えるかどうか。これ、意外と魔法の言葉のように思う。笑
難しい課題、解けない問題に直面し、そこで「面白い」と言える好奇心。
スポーツも勉強も仕事も、この好奇心に勝るモチベーションはない。
号砲
さあ、120km先を目指してAM5:00出発!
日の出を見ながら走る海岸線は本当に美しく、それだけで来てよかったと思えた。
挑戦するタイムを気にしながらも順調に進めた。
雨は午後からの予報に変わり、気温が上がらない絶好のコンディション。
これはいける!とワクワクしながら走っていた。
異変
60km通過は予定通り、5:00/kmを少し切るペースで推移し、後半の山でペースが落ちたとしても、粘れば目標は達成できるという位置にいた。
正直に言えば、もうこのあたりでそこそこきつかった。
ただ、初ウルトラの時のように完全に足が売り切れている様子もなく、距離走や峠走の練習効果も実感できた。
さあ、ここから山が続く…苦しい時間帯が続いた。20㎞近く山道を進むが、80km到達するころにはすっかりペースダウン。下りが激しすぎて、四頭筋や骨盤周りの痛みが大きかった。途中「脚が棒になる」とはこのことかと思うくらいに感覚がなくなり、ただ骨盤の回旋で脚を振り出し、つっかえ棒のように体を支え、重心移動させることしかできなくなっていた。
挑戦が精神的支え
100km通過は8時間45分のあたり、初ウルトラより2時間近く速い通過となった。この時点で12時間という目標は達成できると思っていた。
油断はしてはいけないが、大きな怪我で完全に止まることさえなければクリアできると思った。
この大会のいいところは、応援の方々が、ゼッケンナンバーを見て、名前で呼んでくれるところにもあると思う。
しんどすぎてうまく返せないところもあったので、申し訳なかったが、遠くから手を振って「〇〇さん!頑張って!」と言っていただけるだけで、人間こんなにも頑張れるのかと改めて思い知った。
自分だけでは走れない。ウルトラランナーは、ウルトラな人ばかりではない。自分のような凡人も、周りの人に支えてもらい、自分では気付けていないようなところまで助けていただいて、ウルトラランナーに「なる」のだ。
本当にありがとうございました。
さて、レースは終盤。いつから降り始めたかも覚えていないが、シャツは雨でずぶ濡れになっていた。
あと10kmというところで、12時間どころか、11時間が切れそうなところに。まだ山道が続くが、6分/kmを切るか切らないかくらいで行けば、11時間が切れるというライン。
あと10km無難に走っても目標の12時間は達成できるが、今は何かを目指すことで、かえって走る力が沸くと思った。
「まず次の5km挑戦しよう」そこでペースが上げられたら、11時間切りを狙おうと目標の上方修正を行った。
攻めた結果、届かなくてもそれは次に繋がる失敗だ。
「本気の失敗には価値がある」
大好きな漫画のセリフが浮かんだ。
ラスト5kmはがむしゃらにタイムを追いかけた。もうボロボロの体で、余力などとっくに失っている。
何が駆り立てたのか、それは純粋な好奇心だった。
学生時代、懸命に追いかけても全く届かなかったインターハイやインカレ。
あの頃の劣等感に溢れた自分に言ってやりたい。
「その道でいいんだ」
届く、絶対届くと信じて、一歩一歩前を向いて走った。
そして、届いた。
疲労困憊、雨が降りしきる中、気分は雲一つなく晴れていた。
課題
今回の目標は達成できた。
それでも、スパルタスロンはまだ想像もできない領域であり、意識も届いていない。難しい。が、それがあきらめる理由にはならない。
今後は体の中心部の強化に重点を置き、中殿筋や大腿筋膜張筋、内転筋など、走りか崩れないということを課題にやっていきたい。
すべての道はスパルタへ通ず。