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「悪貨は良貨を駆逐する」ようにウソは正論を駆逐する

「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉がある。
同一金額の貨幣ではちゃんとしたもの(良貨)が駆逐され、粗悪なもの(悪貨)だけが流通する現象のことだ。一般的には、悪人の多い社会においては善人は目立たぬよう暮らさなければならない世の中のことを指している。

この「悪化は良貨を駆逐する」現象は経済の話であるのだが、実は色々なものにとって普遍的な現象でもあるのではないか。

わかりやすいのは思想の世界である。
世の中を見渡せばよくわかるが、現代において(というか過去も)変な考え方ばかり良く広がるものである。怪しい予言とか陰謀論とか、頭を使わずに見ると「全ての帳尻があわせられて完全に理解できてしまう」類いのものは広まりやすい。
かたや現実は極めて複雑でわかりづらい。全てのものがある特定の思想に立脚すれば理解できる、というほど単純ではない。

ひとはわかりやすいものが好きだ。
それも、自分が知らないものによって世の中が動いていて…という面白いものである必要がある。
そうした条件を満たした陰謀論の類いの「思想」は、正論という良貨を駆逐する悪貨そのものである。

悪貨が良貨を駆逐する運命にあるなら、気をつけないといけないのは貨幣を取り扱う我々一般人である。
偽の貨幣を握らされて金持ちになったかのように誤解し、そしてまたその偽の貨幣で支払いをすることは我々もまた犯罪に加担したことになる。

それだけに、情報が正しいかどうかを見極めることができないと、わたしたちもまた偽情報という悪貨に思想が駆逐されていってしまうのである。

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