タクシーの運転手から道順を聞かれても困る
最近、タクシーの運転手は非常に接客が丁寧である。私としては、ただ目的地に安全に到着できればいいだけなのに「車が寒くないか」とか「道はどうするのか」とか、いろいろと聞いてくる。
車内の温度についてはともかく、私として困るのが道順の話を聞かれた時だ。
よく「環八沿いを…」とか「靖国通りのところを…」などと言われるのだが、これが極めて難儀だ。
そもそも、タクシーで向かう時というのは急いでいるのに場所がどうにもこうにもよくわからない時である。それだけに「●●通りのところですよね?」とか言われても「いや、知らないです(てか、とりあえず住所伝えたのでそこに行ってください)」と言うしかない。
そして私は結構な方向音痴であり、どこに何があるのかをあまり把握できていないという由々しき問題もある。京都のように碁盤のような規則正しい道であればまだやりようはあるが、全国津々浦々道などクネクネ曲がっているわけで、通りの名前など方向音痴のやつにわかるはずもない。自宅前の通りの名前も怪しいほどである。
当然方向音痴なので今自分がどちらを向いているのか、方角もわからない。道を聞いたときに「南に行くといいよ」と言われても「南はどっちですか?」というバカな質問を恥を忍んで投げかけざるを得ない。
方向音痴ではない人からすると「どう考えてもこっちが靖国通りだろ」みたいなことを言われたり、「こっちが北だろ」とか言われたりするのだが、方向音痴の人には何もかもがわからない。
方向音痴ではない人からすると理解し難いほど、方向音痴の人間は方向感覚が全くないのである。
むしろ、なぜ今立っているところで方角がわかるのか、タクシーで急に聞かれた時にも通りの名前がわかるのか、そして道になぜ迷わないのかが、方向音痴の人間からするとわからないのだ。
よく男と女は理解をしあえない生き物だというが、おそらくそれと同じくらい、方向音痴の人と方向音痴ではない人とは理解をしあえないのだろうと思う。分かり合えないまま道を違えて会えないのが普通なのに、不思議なことに方向音痴の人と方向音痴ではない人とが出会う現代社会とは実に不思議なものである。
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