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かっこいいと可愛いと愛『侍タイムスリッパー』

『侍タイムスリッパー』を観ました。
最近よく名前を聞くな~、と思っていたこちらの作品が近所でやっているとなれば、観に行かないわけがない。
いつも通り何も調べずに行ったので、タイトルの通り、侍が現代にタイムスリップしてくるんだろうな程度の認識で、いざ映画館。

あらすじはこんな感じ。

時は幕末、京の夜。
会津藩士高坂新左衛門は暗闇に身を潜めていた。
「長州藩士を討て」と家老じきじきの密命である。
名乗り合い両者が刃を交えた刹那、落雷が轟いた。
やがて眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。
新左衛門は行く先々で騒ぎを起こしながら、守ろうとした江戸幕府がとうの昔に滅んだと知り愕然となる。
一度は死を覚悟したものの心優しい人々に助けられ少しずつ元気を取り戻していく。
やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と刀を握り締め、
新左衛門は磨き上げた剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として生きていくため撮影所の門を叩くのであった。

侍タイムスリッパー | 公式サイト (samutai.net)


全体的な感想

おっっっっっっっっもしろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

これが当初は、全国にたくさん映画館があるというのにその中の1館でしかやってなかったって本当ですか!?!!??!?!?!?!?!? 増えてくれてありがとう!!!!!!!!!!

見る前に1つだけ不安だったのは、タイムスリップしてくる侍、高坂新左衛門と現代の人との噛み合わなさが続くこと。
高坂は侍で、格好も髪型も喋り方も現代の人とは違うわけで、当然そこは現代の人たちからすればツッコミどころ満載。そこをいじったり怒ったりする展開が続くのは、いわゆる共感性羞恥といいますか、見ているこちらも辛くなってくるもの。
が!!!!! しかし!!!!!!!! 杞憂でした!!!!!!!!!!!
全くないわけではありませんが、高坂の言動を見ればそれくらいのツッコミはまあ入るよね、程度。周囲の人の温かさが染みる……

自主製作であるこの作品、脚本の出来をみた東映京都撮影所の方々が「脚本が面白いからなんとかしたい」と協力してくださったとか。そのご協力が無ければこの作品を観ることはできなかったかもしれない……ありがとうございます……

殺陣もかっこいいんですよね~~~~~~~~~~~~!!!!!!!

殺陣師の関本さん役で出演している峰蘭太郎さんも所属している東映京都撮影所の東映剣会の清家一斗さんが殺陣をつけたそうです。
当たり前と言えばそうなのかもしれませんが、も~~~~~~~~~~殺陣がかっこいい。特にラストがね、もうね、本当に。

時代劇への愛がたっぷり

私の見たことのある時代劇、特にテレビ時代劇といえば『必殺仕事人』シリーズを数作くらい。『暴れん坊将軍』は全く見たことがないし、大河ドラマも親が見ているのをつまみつまみ視界の端に入れる程度。
映画館に通うようになってからは時代劇映画も観るようになりましたが、現代ものと比べると鑑賞数は多くありません。アニメ作品を入れたら、もう少し増えるかな。

そんな時代劇とは縁の無かった私ですが、『侍タイムスリッパー』に込められた時代劇への愛はこれでもかと感じました。


※以下、作品のネタバレあり


高坂新左衛門

可愛いの権化。
テレビに驚いたり観終わって拍手したりケーキに感動したり、可愛いね。

タイムスリップしてきてすぐ、撮影所で同じシーンが繰り返されることや口パクで会話している風の人たちを不思議そうに見ている姿が可愛いのなんの。
撮影とはそういうものだ、というのはその業界に明るくない人でも何となくわかること。そこを改めて新左衛門の視点で見ると、なるほど面白い。逆に撮影スタッフや役者にしてみればおかしな言動を見せる新左衛門は異質で、タイムスリップもの定番の違和感もちゃんとそこにある。いや~~~~~~すごいな(小並感)

優子さんの優しさにじわじわ惚れていく姿も見ていて可愛い~~~~~~~~~気が付けば目で追ってますもの。良い返事してますもの。は~~~~~~~~~~~~~~~可愛い。「今はまだその時ではない」んだね……ふふふ……

過去から未来へタイムスリップしてきた人は、そのことに気づいたらかなり取り乱すイメージですが新左衛門は比較的冷静。ポスターに書かれた黒船来航などについての文章を読んだうえで、未来に来てしまったことをしっかり理解していく姿が印象的です。
だからといって自分の生きていた時代のことをきっぱり忘れられたわけではないとわかるのが、後半の一部変更された台本に目を通し涙したシーン。どれほどの辛い歴史があったのか、経験するはずだったことを文字だけで受け止めなければならない苦しみは想像もできません。

ラストの殺陣はまさに圧巻。ぞわぞわが止まりませんでした。
2人は真剣で撮っている、という体でしたが、実際には模造刀だったわけで。ただ作品内の設定として真剣だと言われると本当にそう見えてくるのが不思議なところ。かっこよかった……!!


風見恭一郎

お、お、お、お前だったのか~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!
これまた綺麗に手のひらの上で踊ってしまいました。新左衛門共々びっくりです。あの時の長州藩士だったなんて……
新左衛門がタイムトリップしたのは2007年だそうですが、恭一郎はそこからさらに30年前、まだ時代劇作品が多く撮られていた頃にタイムスリップしていたことが判明します。

彼が時代劇から離れた理由がまた辛い。切った相手を思い出してしまう苦しみもまた、我々には縁遠い、理解できない苦しみ。
でもそれがあるにもかかわらず新左衛門がいるならと新作を計画してさ~~~~~~~~あ~~~~~~~~~~~

優子さんについて新左衛門をおちょくる姿はまるで友人同士のようでほっこりします。ラストなんてもう本当に。これからはずっとそうであれ……


山本優子

ラスト、新左衛門の頬を叩いて怒った後に彼の告白(仮)に気づかず「では次のシーン!」とすぐ仕事モードに切り替える彼女が好きです。

剣心会に入りたいという新左衛門にきちんと今の時代劇の世界の厳しさを真正面から教える姿がも~~~~~~かっこいい。ただ優しいだけでなく、ちゃんと厳しさも持ち合わせている女性ですね。


殺陣師 関本

えっ!?!?!?!?!? 峰蘭太郎さんかっっっっこよ………!!!!!!!!!!!
元々は、峰さんと同じく東映剣会に所属されていた福本清三さんが演じる予定だったとのこと。しかし残念ながら福本さんが2021年に亡くなってしまったこともあり、その代わりに峰さんに白羽の矢が立ったのだとか。
超カッコイイ殺陣師かと思いきや、それだけじゃない。新左衛門への稽古で切られ役になるはずの彼がつい癖で、手の最後に切るほうに何度も回ってしまう、という流れで見せられたギャグちっくなところがとってもキュート。新左衛門の持つ殺しの技術が、関本さんとのこのやり取りで芸術作品へと変化していくのがまた良い。


もっと明るくなれば

最近で言うと真田広之さんが出演等している『SHOGUN 将軍』がエミー賞を18部門受賞したりと明るいニュースもありました。が、確かに時代劇ではありますが、真田広之さんをはじめとする多くの日本人が出演していますし台詞もほとんど日本語だそうですが、結局製作にかかったお金を出しているのは日本ではないわけで『時代劇が~』と言いまくるのもどうなんだろうとか少し思ったり。
でも『侍タイムスリッパー』や『将軍』をきっかけに時代劇がまた盛り上がるといいな~。『カメラを止めるな!』みたいに海外でリメイクされたりしてね、世界中に広がってほしいね!



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