短歌25首「低温発火」(第3回U-25短歌選手権予選通過作品)
低温発火 /汐見りら
やきたてメロンパン鞄に匿えばシュレディンガーの魔法美少女
図書室のSeventeenは立って読む 葉と葉が擦れる音にも怯む
はとちゃんは巫女になりたい教科書に殴り書く激裏夢小説
レモン石鹸を手首に塗り込んでわたしの選手生命はどこ
新人賞発表号だけ飛んでいる部室のすばる 多分南へ
ロボットに負けない単純作業しよう 呼吸、駆け足、ふたりきりのUNO
「先輩のイケボ配信聞きました 吐息が夜にひかってました」
はじめてのちゅーは吸入ステロイド 愛のにがいところをいち早く
三次関数の尻尾を切り裂いて完成される折丁見本
修羅場って響きをちゃんとくちびるで感じるための(それだけの)部誌
ういちゃんまた爪噛んでるの誕生年ひく受賞年まだやってるの
八月の体育館の灼熱のことをユニコーン想うこころで
賞レースって言われたらなんか走んなきゃって気になっちゃってborn to be
ポケットに獣を飼いたかったけど火鍋チェーンでもらう髪ゴム
書く人じゃなかったわたしは ワールドと名の付く球技すべてたのしむ
ぬいぐるみの体臭決めるミーティング「あの子は早生まれだからミント」
指定靴下が刻んだ激流で襲いたいのはつめたい建物
ブランコは春の季語 ああそれで今こんなにも息継ぎがおいしい
瞼まで熱うつされて馬鹿みたい 蛇語ネイティブっぽい舌さばき
車らしく見えますようにママチャリを二台ならべて月のない道
街灯をたどれば離陸できそうな、 先輩ずっと書いてください
コピー機は薪で言葉はほんとうに火だった二月の文芸部室
たましいを貰うみたいにネクタイの寛やかな輪は移されて 雪
校門で猫背をさがす猫背見つからずわずかに蕾ほころぶ
林檎畑に吹く風はどんな色 わからないまま握る鉛筆
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