月と日を編む…2020.11.16
実家にはちょっとした裏庭があって気づかないうちに木が植っていたり、花が咲いている。父の部屋が1階なので、恐らく父が植えているのだろう。
父は単身赴任をしていて滅多に帰って来ない。
結局世話をするのは妻である母で、何かハプニングがある度に父にテレビ電話を掛けている。少し前から木があるな…と思っていたら、その木に柿が成った。初の実だ。めでたい。
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隣の家が取り壊され、あっという間に"新築一軒家"が建った。関係者である不動産屋さんも請負であろう鳶職のお兄ちゃんも優しくて、建つまで大きな音が鳴りますよ〜とか、明日も来ますね〜とか声をかけてくれた。その姿を見てドラマの予告みたいだと眺めている…私は呑気だ。
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ある日重々しい顔をして不動産屋さんが声をかけてきた。どれどれ話しを聞いてみると、うちの柿の木に問題があるらしい。奔放に育っていった柿の木に、ついに手が入ることになった。
一大事と母は相談したわけだが、リアクション薄めですんなりと受け入れていてる父。
電話の終盤、庭の一角に茗荷が沢山生えているはずだと父がこそっと私に教えてくれた。
ずっと気にかけていたのは柿の木ではなく茗荷で、試しに育てた茗荷が間違って抜かれていないか心配だったらしい。
私は食の趣味が父に似ている。茗荷や独特な食べ物が好きで、母はそれを変わっていると言うが良いのだ。茗荷好きな自分がなんとなく好きだ。
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人格は自分で作り上げる様な気になっているが、親が親なら子も子な部分はどうしてもある。生かすも殺すもは自分で、私はようやくその選択ができるステップにきた。
父が世を去っても"実家の裏庭"は心にも残り、"家宝"という根は伸びていく。その根を腐らせぬよう、大切に間引きをしたい。そう思いながら今年最後であろう"茗荷"をいただく。