【読書記録】ゲームをテーマにした短編SF集「スタートボタンを押してください」感想
ゲームをテーマにした短編SF集「スタートボタンを押してください」を読み終わりました。
個人的に自分のお気に入りの作品は
・リスポーン
・1up
・キャラクター選択
・ツウォリア
・機械仕掛けの兵隊
です。
結末に関するものは記載はしていませんが、簡単なあらすじについては書いています。
リスポーンは、死んだ時に別の場所に復活する話。
主人公の「おれ」は牛丼屋でバイトしていたら強盗に殺されてしまった。次の瞬間その強盗になっていた。どうやら死ぬと、その近くにいた人間になって生き返るらしい。
そのあと「おれ」は、何度も死んで別の人間に「リスポーン」していく。
途中で主人公が、リスポーンしてもそのリスポーンした人間の地位や日常を幸せと感じられるのは、それを実際にした肉体の持ち主だけで、リスポーンした「おれ」ではないと言っているのが印象的でした。
たとえゲームのようにリスポーンしてずっと生きることが出来たとしても、自分として生き返る訳では無い、それは本当に生きているといえるのか…?
リスボーンすることによる「おれ」とはいったい何なんだろう…と思いながら、あっという間に読み切ってしまいました。
「1up」ではオンラインゲームで友達だった友人の葬式に行った主人公たちが友人のPCでゲームを見つける。
ゲームを解いていくと、意外な事実が判明して…?ゲームの展開と謎が解けていく課程が面白かった!この展開は次の「キャラクター選択」と「機械仕掛けの兵隊」にも共通しますね。
「キャラクター選択」のほうは、本来は殺し合いをするはずのFPSのゲームで、子供の育児休業中の主人公が人を殺さない選択をし続けるプレイをすることで、ゲームの特別な場所へたどり着く、実はそこは…という話です。
途中で伏線があるので結末は予想できるけど、そこに至るまでの展開も面白くて興味深く読めました。
「機械仕掛けの兵隊」も、ゲームを進めていくと最後の方で謎が分かるのですが、謎を知った後の主人公たちの行動が、お話の最初に書いてあって、どういうことなんだろうと読み進めて行って、後からもう一度読み直すとそれがまたグッと来ました。
ツォウォリアは他のお話と比べると短いですが、インパクトはあり。
その話で出てくるプログラム(AI)の一人称が「漏れ」で、相手のことを「主さん」と言ったり、「香具師」と言ったりと完全ににちゃんねらーなのです。
原文は英語なので、おそらく英語のネットスラング的なものを訳したのかな?と思いますが、なかなかこのインパクトが強くて最初読んだときは衝撃でした。
機会があれば原文を読んでみたいです。
ゲーム好きの人なら楽しめる作品になっているのではないかと思います。