勘違いの誕生日
身に覚えのないインターホンが鳴った。
身に覚えのない荷物が届いた。
差出人は身に覚えのある友人だった。
商品名には衣類と記載されていた。衣類なんて送るようなタイプじゃないし、重みのある大きな箱だし、指定日は5月30日で何の思い入れもない日だし、送り先を間違えてたのかもしれないと思った。
念のためにと箱を開けてみることにした。
元の通りに戻せるようテープをゆっくり剥がしテープの跡が残らない様に気を遣った。リボンも結び目がズレない様にリボンの形が崩れない様に箱を何度も回しながらリボンを外した。
箱が開いた瞬間に一番に目に飛び込んできたのは、「2020年5月30日。ハッピーバースデー」と書かれたメッセージカードだった。その下には私と友人とのエピソードがぎっしり盛り込まれていた。
これは間違いなく私に届いたプレゼントだった。
焼き物のお茶碗と、「しょぼい喫茶店」という本とごぼうチップス。
友人らしいチョイスだなぁと嬉しくなった勢いで御礼のメッセージを送った。
「誕生日当日に届いてよかった。改めておめでとう。」すぐに返信がきた。
私の誕生日は5月3日。3日と30日を勘違いしているようだ。
指定日を30日にしてくれた友人の思いを無駄にしたくなかった私は
「誕生日は3日だよ。でも30日を誕生日だと忘れずにいてくれていたなら、30日も私の誕生日だよ」
と返信した。
誕生日が2回ある事がとてもいい事の様に思えた。友人にとっての私の誕生日は30日。
自分が生まれた日の記憶はない。家族がその日を毎年祝ってくれるから、その日は誕生日なんだと実感するようになっただけだ。
誰かが自分を特別に祝ってくれる日は何日だって嬉しい。
これから、5月3日と5月30日は私の誕生日だ。