高田宏「言葉の海へ」の感想&メモ。
大槻文彦の伝記。優れた伝記はしばしば優れた編集的営み。洋学の血筋(祖父/玄沢【杉田玄白・前野良沢に学ぶ】、父/磐渓)があったことと、明治維新の英雄・英傑たちと国を思う志(ナショナリズム)が同じだったことが感動的。辞書編纂は文部省の事業としてスタートしたが、発刊は私費。
仙台藩の人脈(富田鉄之助/旧明六社員・元日銀総裁・後の東京府知事)、和歌の大家/高崎正風(薩摩藩、宮中顧問官)で発起。明治24年6月の出版祝賀会(ロシア皇太子傷害事件/大津事件、大隈重信暗殺未遂事件等、国会開設が起きた時代)。列席者は明六社(幕府開成所系の洋学者集団/文彦も元明六社員)社員、伊藤博文、勝海舟、榎本武揚など。列席者を3つの円が重なっていると作者は分析(①条約改正の関心②反藩閥の心情③洋学を背景にした国家意識。この3つを結ぶのがナショナリズムの感情)。福沢諭吉は政治家と距離を置くために不参加。
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