ダブり〜3限目〜I
警察署へ事情聴取の為に行った俺たちは
全てを話した。
それは、モトキタとゴウも同じように。
するとそこへ教頭がマミさんと来た。
教頭は
「ほんと困りますよ!この事が拡散でもされたりしたらどうするんですか?」
「あぁ〜ほんともう〜」
教頭は頭をかかえていた。
マミさんは
「教頭先生、安心して下さいよ!」
「今回はむしろ生徒さんのお手柄ですよ」
「モトキタ先生が無事なのは、
こいつらがいたからですから!」
教頭は
「それはそうですが・・・」
マミさんは察して
「カミイ先生の件は残念ですが」
と言うと
「刑事さん・・それなんですよ・・」
と教頭はため息を吐いた。
教頭は
「でも、今回は皆無事で何よりですがね」
と言うとマミさんは
「その通り!さすが教頭先生っ!!」
マミさんは
「ユウ、ちょっと」
俺は部屋を出た。
マミさんは話した。
「ツジタケシ、ストーカーだ」
俺は
「へぇー」
マミさんは話を続けた。
「1年前に、ツジは帰宅途中に若者が乗った自転車とぶつかりそうになった。その反動でツジは
買い物袋を落としたようだ。ツジはその若者に注意したようだが、若者はツジを侮辱するような
発言をして、そのまま去って行ったらしい。落とした袋から散乱した商品を拾っていると、たまたま通りかかった女性が拾うのを手伝ってくれたようだ」
俺は
「まさか?」
マミさんは
「そのまさか!モトキタ先生だ」
「アニメみたいな事が起こるんだぞ!」
俺は
「だなぁ〜」
「って、あんたなぁ〜」
その時のモトキタの姿に惚れてしまったツジは
最初は遠くから見てるだけだったようだが、
ここ数日ゴウと親しげにしているのを見て今回の事件を起こしたようだ。
マミさんは
「愛は自らを動かす原動力になるが
ときには罪を犯す起爆剤にもなるんだ」
「これはだな・・起爆剤の剤と罪をかけて・・」
とマミさんは説明していたが俺は
「へぇー」とだけを返した。
マミさんは
「お前、今いい事言ったのに!何だその反応?」
と笑い話しをしているとゴウが来た。
マミさんは
「オカウエ!お前にも愛を教えてやるから
ちょっとこいっ!!」
ゴウは
「はぁ?愛?」
俺は、指で頭をクルクルしながら言った
「ほっとけっ」
「じゃーマミさん。帰るわ」
と帰ろうとした。マミさんは
「真っ直ぐ帰れよ。風呂入れよ」
ゴウと外へでた。
正面に立っているお巡りに頭を下げ歩いてると
「ユウ、今回はサンキューな!借りができた」
とゴウが言った。俺は
「借りだなんて!何言ってんだ。てか、今回は
シマキとテマエじゃないか!カワヨシもそうだけど、あの2人がたまたまマンションに行ったから
もし行ってなかったらお前死んでたかもな」
ゴウは
「だなっ」
とお腹を抑えながら言った。
ゴウはポケットからタバコを出し俺に差し出した。俺は一本とり口に加えゴウも一本口に加え
ゴウがつけたライターの火にお互い同時に火を
つけた。
「ふぅー」
ゴウは俺にこう言った。
「俺、モトキタの事、好きだわ」
俺は
「あーそっ」
と言って煙を吹かした。
ゴウは
「紙タバコのほうがいいだろ?」
俺は
「だな」
と言った。
この恋の結末を見たくてストーカー探しを
始めたが、今となっては結末なんてどうでもいい
って思った。
ただ、そう言ったゴウはほんと自分に正直だって
ことを改めて思った。
警察署の敷地からでると、シマキ、テマエ、
カワヨシ、タイケ、ウエイ、ナカヒロ、イサカ
そして、モトキタと教頭がいた。
カワヨシは
「おーいっ!やっちまったな!お前ら!!」
と大声で俺とゴウに言った。
シマキとテマエは手を叩いて
タイケ達4人は笑っていた。
モトキタは、手で俺たちを呼んで
「2人とも、こっちおいでっ」
教頭は、腰に手を当てて俺たちを待っていた。
ゴウは俺の肩を叩いて
「とりあえずは解決だな」
と言った。
俺は
「だなっ」と返して煙を吐いた。
俺たち2人の煙は重なりタバコは時間と共に
短くなっていく。
そう、俺たちの高校生でいられる時間も、
このタバコのように少しずつ減っている。
俺とゴウはタバコで停学になった。
3日間の停学が開ける最終日
コンビニから家へ帰ると玄関には、見覚えのある
黒のヒールとローファーがあった。
「誰か来てる?」
と聞いてドアをあけると
「あんた、先生来てるのにどこ行ってたの?」
とヨシエが言った。
俺は、袋を見せて
「ちょっとコンビニだよ」
すると
「コンビニって・・あんたねぇ〜停学の身で」
「すみませんね、先生」
モトキタは微妙な笑みを浮かべていた。
その隣から
「お邪魔してまーす」
と、どこかで聞いた声がした。
副会長だった。
モトキタが俺の様子を見に来るとの事で、
どうやら着いてきたようだ。
俺は
「なぜ?お前がいる?暇か!?」
と言うと副会長は
「急に停学だって聞いたから心配したんだよ」
「先生から話し聞いたけど」
と言った。
「でも、元気そうで良かった」
俺は
「ただの停学だろ?元気そうって・・
病気じゃないから当たり前だ」
ヨシエは
「先生、本当迷惑ばっかりかけて申し訳ないですね。なんとか、高校だけは卒業させてやりやたいもので・・」
「それはそうと息子はクラスに馴染んでまか?」
俺は
「余計な事を聞くなって」
とヨシエに言った。
モトキタは
「はい。もちろんですよ。コニシくんは本当責任感が強くクラスメイトからも慕われてますから」
それを聞いたヨシエは
「リョウちゃんもごめんね。このバカをこれからもよろしくね」
と言った。
【おい、リョウちゃんって・・
いつの間にそんな仲に・・】
って思った。
副会長は
「はい!お母さん!!
私たちがユウさんを卒業させますから」
「ねっ、先生っ」
と言った。
【お母さんって・・
てか、させますって何様だ・・】
って思った。
ヨシエは
「いやっ心強いわ〜っ。じゃーよろしくね」
「あんた、いい友達持ったね!?ほんと」
時計を見て
「あら、こんな時間!お腹空いたでしょ?」
「先生も、リョウちゃんも食べてって」
と言って冷蔵庫の中をヨシエは確認したがそこに
何も無かった。
それを察したモトキタは
「お母様、おかまいなく」
と言ったがヨシエは食器棚の下の扉を開き
「良かった袋麺ならあるから、ラーメン鍋
しましょ!みんなで食べると絶対美味しいから」
「ねっ!?美味しいよね?」
と言ってカセットコンロを出して鍋に水を入れ
用意をしていると
「あらっ!やだっ!
ご飯スイッチいれてないわ!!」
「今から炊くから、
ちょっとテレビでも見て待ってて」
「ほら、あんた・・テレビつけて」
モトキタは
「お母様、ほんとお構いなく」
と言ったがヨシエは
「いいから、いいから」
と言ってテレビのスイッチを入れた。
「お母さん、私手伝います」
と副会長は台所へ行った。
【米炊いて、袋麺作るだけなのに
何を手伝う事があるんだ?】
俺は思った。
ヨシエは
「えっ!?ほんと!?助かるわ」
と言って何かを手伝わせていた。
ご飯ができる間、俺はモトキタに聞いた
「あれから何ともないのか?」
するとモトキタは
「お陰様で、何もないよ。本当ありがとうね」
「実は引越しするの」
「もともと引越そうって思ってたんだ。あんな事もあったしちょうどいいかなぁって」
俺は
「そっかぁ、いい物件見つかったのか?」
と聞いた。
モトキタは
「うぅーん。。まだ」
「でも、なんとなく候補は決まってるかな」
「あの次の日から実家に帰ってるの。ガラスも
まだ修理してないし」
俺は
「あぁーあれはわりぃ」
と言うと
「そんな意味で言ったんじゃないから!」
「だから、気にしないで」
あんな目に遭ったモトキタだが
どうやら大丈夫そうだ。
俺は
「なぁ?」
と言うと、モトキタは
「どした??」
「今月、誕生日なんだろ?」
と俺は聞いた。
モトキタは、
「そうだけど」
少し間をあけ
「いやぁ〜。。また歳とるぅ〜」
と嘆いていた。
俺はそんなモトキタに
「プレゼントって程じゃないが、俺たちのLive
招待するよ」
と言って財布からチケットを渡した。
「まぁー売れ残りだけど、ほれっ」
モトキタは
「えっ!?ほんと?いいの?」
「やったっ!」
と言って喜んだ。
俺は
「てか、そんなものでいいのか?」
と聞くと
「うん。コニシくんの音楽活動、1度見たかったから」
と言ってくれた。
これが本意か教師だからかはわからないが
モトキタは喜んでくれた。
モトキタは
「ナカタさーんっ、コニシくんからもらったよ」
と台所へ向かって行った。
「えぇ〜先生、いいなぁ〜」
「会長、私にもチケット頂戴よー」
と副会長が俺に言った。
俺は
「お前は買えっ!」
と言うと
「えぇ〜!いいじゃん。どうせ余ってるんでしょ?」
「まぁいいやっ!買いますっ!!」
「てか、買ってあげますよ」
と言った。
「しゃーねっ、やるよ」
っと言って俺は副会長にチケットを渡した。
「やった!!」
「先生、一緒に行こうよ」
「行こう!」
ヨシエは
「あんた、私には無いの?」
と言ってきた。俺は
「くんのかよ!?」
と言ってチケットを渡した。
チケットを見て
「キンキじゃないの?」
「じゃーいらない」
と言って俺にチケットを返した。
そんな会話をしていると弟が帰って来て、
次に妹。
そしてご飯も炊けた。
カミイから聞いた話しは本当のようだ。
うちの先生は、いい先生だ。
ヨシエは鍋を持って
「はいっ、ラーメン鍋っ」
と言ってカセットコンロに鍋を置いた。
「何をたいそうにっ!ただの袋麺じゃねーか!」
その日、それはそれはたいそうな
インスタントラーメンをみんなで食べた。
3限目Jにつづく