見出し画像

シリーズ自己K発#1「リーダーシップってなにかね?」

 私がはじめて読書記録をつけたのは、この『人を動かし、自分を導くリーダーシップ』(野田稔、KADOKAWA、2014年)でした。当時、機械メーカーに勤務しており、インドにある子会社のインド人幹部・B氏とよくやりとりをしていました。インドの組織はいわゆるトップダウン型で、B氏も例にもれず部下への指示や情報の吸い上げを徹底し、そしきをコントロールされていました。とはいえ、組織の下だけでなく、上もうまく使って日本の本社にも的確に要望を伝え、思い通りに仕事を進めるような人でした。このB氏のすごさは何からくるのか、と本屋を歩いていたらこの本が目に留まりました。そうか、リーダーシップにあるのか、と。

 リーダーシップとは何なのでしょうか。この本では「他人に影響を及ぼして、望ましい行動を起こさせること」と定義されています。そのためには、本人がリーダーシップを発揮することと、周囲のメンバーが受け入れてくれることが条件となります。本人に周囲を動かそうとする想いと、信頼関係の構築が両輪となっているというわけです。

 リーダーシップの要件として正直であること、前向きであること、ワクワクさせてくれること、有能であることが挙げられています。まさしくB氏に当てはまります。いずれも他者評価なんですよね。中でも「有能であること」をクリアしていくには、自己肯定感の高さも必要になってくるでしょう。また、安心感の醸成も要件であり、利害を一致させること、同じ目線だけど少しだけ前を走っていて引っ張ってくれること、ありのままを見てくれることが求められます。引っ張っていってくれたり、ありのままを受け入れてくれたり、なんだかカレシみたいですね。

 さて、この本で興味深かったのは、置かれた状況に応じて適切なリーダーシップが異なるということでした。まず、特に物事を変える必要がない時期は、現場主導で現場が働きやすいようにすることが重要です。そんなときは周囲のメンバーを主役としてあげられるリーダーシップが適しているそうです。次に、変革期では何をおいても変革することを最優先し、変革チームを作り主導させるそうです。乗り遅れる人は切り捨てる、という荒々しいこともしなければなりません。変革と言わずも改善レベルは現場主導にもっていくリーダーの器量が試されるわけですね。変革期は、リーダーのリーダー(というかトップ)が主導してチーム組成し、そのチームリーダーにある程度、権限委譲しなければならないような気もします。

 私がB氏の仕事ぶりをみて眩しく感じていたのは、まず「自分はこうしたい」という想いの強さでした。そして、それを独りよがりのものとせず、実現させていくに足る有能さ、周りとの信頼関係がありました。インドのような、商人たちの国での仕事を通じて、よい刺激をもらったものだと思ったものです。

 最後に批判も。この本で違和感を覚えたのは、リーダーシップ論の展開でしばしばリーダーシップから「シップ」が取れてリーダーの話になることでした。リーダーとはほぼ管理職のことを指しているようで、管理される側からすれば「上はしっかりしてくださいよ」と思っちゃいました。おそらく中間管理職も「トップや幹部がしっかりしてくださいよ」と思っちゃっていることでしょう。

 この本では完璧なリーダー像が提示されており、読書中はあたかもその理想と一体化しているんですが、ふと勤務中に気づくんです。リーダー=管理職だらけで、リーダーシップのあるリーダーはどこにいるの、と。理想のリーダーって別の国の人なんだ、と。文字通り、インドのB氏のように。ここから、失われた「シップ」を求めて自己啓発本にのめり込むことになります。

いいなと思ったら応援しよう!