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3回目のデートは残酷に

年末に3年弱勤めた会社を退職し、東京の世田谷に引っ越した。
1人の時間が増え、寂しくなったので彼女を作ろうと思った。ナンパもしたが上手くいかず、アプリを使って数人と出会った。その中でみうという女の子がいた。写真のセンスが良く、インテリアの話で盛り上がった。
1回目のデートは中目黒だった。

改札口で彼女を待っていると、小柄な女性が近づいてきた。

「Junさんですよね。遅れてごめんなさい。」

玉虫色のトレンチコートに深緑色のロングスカートで洗練されたレイヤードにグレーのスニーカーで程よい抜け感を創っていた。黒髪のボブで目はくりっと大きく、想像以上のかわいさに驚いた。私はそれを悟られないよう初めの会話を急ぎ、予約したイタリアンまで向かった。商店街から離れた落ち着いた場所にあり、カジュアルでおしゃれな空間だった。

L字型のカウンター席に案内され彼女のコートを受け取り、ハンガーにかけた。そしてメニューを見ようとしたその時、彼女のパステルカラーのニットが目に入った。タイトなニットが大きく実った果実と締まったウエストを露わにした。ニットはエロを加速させる。俄然私は楽しくなった。赤ワインで乾杯し、たくさんお互いについて話した。

新卒1年目の都内実家暮らし。ただ母親の干渉が酷く、早く一人暮らしをしたいのだという。私は手の届く距離にある豊潤な果実を得るため、興味のない話をさも興味のあるようにリアクションし、会話の内容を完璧に記憶し、そのデータをもとに彼女が楽しく話せるよう会話を展開させた。エロは頭の回転を加速させる。彼女はお話好きで無邪気に話してくれた。

2時間ほどイタリアンを楽しみ、2軒目はカジュアルなバーに入った。お気に入りの音楽やカフェ、彼女のフィジー留学について話した。
「学校帰りに野犬に囲まれちゃって、怖くて泣いていたんです。するとたまたまホストファザーが通って助けてくれました。」
「フィジーの人はみんな優しくてよく果物くれるんです。だけど知らない人のは怖いので家で捨ててました。」
彼女のフィジー留学の話が長く、少し退屈だったが、彼女の一生懸命に話す姿はかわいかった。お互い5杯ほど飲み、バーをでた。私は酔っていたが、彼女はけろっとしていた。私の自己開示が足りなかったせいか、手をつなぐ雰囲気ではなかった。
談笑しながら彼女を駅まで送り、その日は別れた。

2回目のデートは昼過ぎに蔵前のマックで集合し、カフェや雑貨屋を一緒に巡った。彼女は胸元がガボッと空いたボタンの付いたニットを着ていた。私の気分を高揚させるには最適なアイテムだった。途中本屋で彼女が熱心にある写真集を見ていたのでこっそり購入し、次回渡すことにした。
同じ時間を共有するうちに「彼女を守りたい」という父性が生まれてきた。夕刻に浅草まで歩き、ホッピー通りの居酒屋に入った。残念なことに彼女は寒さを防ぐため上着で胸元を隠してしまったが、店内は賑やかでとてもフランクに話すことができた。ただまだ彼女は僕に対して敬語を崩さなかった。

一軒目を出ると完全に太陽は沈んでいた。みうが寒そうだったので私の上着を着させ、手を握った。彼女のネイルが個性的だったので褒めると、嬉しそうに顔を赤らめた。

2軒目はオーセンティックなバーに入った。みうはいつもバーテンダーにオススメを聞きながら、カクテルを選んだ。
「豊潤でスモーキーなウイスキーだとどれがオススメですか?」そんな人懐っこいところが愛おしかった。何杯か呑むと彼女はタメ口になり、一人称はみうに変わっていた。
「みうの高校は遠泳が体育の必修科目なんだよー。伝統行事らしくてこの時代に男子はふんどしだよ。5kmも全員で列を崩さず、泳がないといけなくてめっちゃ大変だった。」
前回よりみうが酔っていたことが、私への信頼の高まりに感じ、うれしかった。そしてバレンタインが近いこともあり、彼女はチョコレートをくれた。私は思ってもいなかったことに素直に嬉しかった。

終電ギリギリでバーを出た。腕を組み、彼女を駅まで歩いた。みうの胸が私の腕にくっつくほど近い距離になっていた。改札口で彼女を抱きしめた。私の腕の中にいる彼女はとても暖かく、この瞬間を何としても守りたいと思った。彼女を見送った途端、私の体温は急激に下がった気がした。微かに胸に残る彼女の匂いさえ愛おしかった。

3回目のデートのアポを取り付けたあと突然、彼女からの連絡が途絶えた。前回の様子とLINEの履歴を分析しても原因が全くわからなかった。

そうして、とうとう3回目のデート当日になってしまった。私はとりあえず待ち合わせの場所で待った。時間になっても彼女は現れず、電話も出なかった。レストランにキャンセルの連絡をし、近くのカフェで待った。しかし、終電間近になり、やむなく私は帰宅した。
以前はあんなに楽しい時間を過ごせたはずなのに、もっと関係を深めたかったのに、私の思い込みだったのだろうか。連絡もなくドタキャンをした彼女は少しでも私を想像してくれたのだろうか。彼女にプレゼントするために買った写真集が惨めにカバンの中に入っていた。

次の日も連絡はなく、そのまま1ヶ月が過ぎたある日。
みうから
「ごめん、今度会えない?」
と連絡が来た。ぼーっと気が抜けて酸欠状態だった私の肺に新鮮な酸素が送り込まれた。海底まで沈んでしまった3回目のデートのチャンスがやってきた。

土曜日の夜。銀座の割烹料理を食べに行った。ドレスアップした彼女は相変わらずステキだった。お互いの近況を色々と話したが、前回のことは触れなかった。その方が良いと思った。

2軒目は彼女が好きそうなウイスキーバーを選んだ。何杯か飲んだ後、僕は1ヶ月温めておいた写真集をプレゼントした。彼女はすごく喜んだ様子で私をハグした。抱き合った状態で僕が告白すると彼女はそれを受け入れた。

タクシーでホテルに向かった。少し前に僕を夢中にさせたその果実は僕の胸に密着した。何となく揉むと股間は膨らんだが、心は動かなかった。ホテルの部屋に入ると私は激しくみうを抱擁し、キスをした。胸を揉み、服を脱がせ、ベットに押し倒した。脇を舐めようとすると少し嫌がったが構わず舐めた。そして胸やへそ、足先から太もも、最後は下半身を舐めた。普段のかわいらしい声はより野生的な音に変わっていた。下半身の中心部分は小さな海が発生していた。茂みをかき分けるとそこは深く濡れており、塩辛かった。
「Junくんお願い入れて」
彼女は押し殺した声で懇願した。
僕はその深い海に慎重かつ大胆に入った。海面付近こそ静寂だったが、海底が深くなるにつれて火山活動が活発になっていった。
世界のどこかでいや、それこそ北海道や沖縄に彼の国から攻撃があったとして、私の神聖なる歩みを止めることはできないだろう。海底探索を続けていくと何度もみうから警告を受けたが、私の高貴なる好奇心を止めることはできない。案の定、火山は噴火してしまった。「マグマが冷えて固まる前に早急に海底探索を続け、さらなる噴火を起こしたい」という衝動に駆られた。

複数回続けていくとみうの身体は不規則に振動し、顔は放心状態であった。私は頭を撫でながら、優しくおでこにキスをした。みうを寝かしつけた後、そうっと服を着て、彼女のカバンから写真集を回収した。彼女は穏やかに眠り、きれいな顔できれいな裸体のままだった。その胸に以前の恍惚さや神秘性を感じることはなかった。
深夜3時部屋を出た。ラブホテルの前でネオン色の悦に浸った。タクシーで帰宅すると私はそのまま眠ってしまった。

朝起きた。心地良い朝日が部屋に差し込み、清々しい。熱いシャワーを首元に浴び、チルいヒップホップMixをスピーカーで流し、お気に入りの深煎りの豆でコーヒーを淹れた。手元のスマホには大量のメッセージと電話の履歴が表示されていた。
彼女にプレゼントするために買った写真集が無造作に床の上に置かれていた。
その日のコーヒーはひどくまずかった。

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私は変態です。変態であるがゆえ偏っています。偏っているため、あなたに不快な思いをさせるかもしれません。しかし、人は誰しも偏りを持っています。すると、あなたも変態と言えます。みんなが変態であると変態ではない人のみが変態となります。そう変態など存在しないのです。