【週末投稿】つれづれ有用植物#72(ヒユ科フダンソウ属:フダンソウ)
葉物野菜は私達の食卓には欠かせません。
季節を通して見てみますと、1年を通して収穫できるものは意外と少ないのではないでしょうか。
そこで有望な野菜としてお勧めするのが、フダンソウ(不断草)です。
暑さ寒さに強くて葉が次々に成長します。冬は成長が止まりますが、雪さえ降らなければ1年を通して収穫できる、なんとも頼もしい野菜です。
「フダンソウ」という名前では、ピンと来ないかもしれませんが、「スイスチャード」、「うまい菜」、「いつも菜」、「ンスナバー」とたくさんの呼び名がありますので、どれか一つはご存知かもしれませんね。
ほうれん草と同じ「ヒユ科」の野菜で、葉が大きくて肉厚で、軸は太めです。苦味やクセはなく、さまざまな調理に利用できます。また根菜類の「ビーツ(テーブルビート)」や、砂糖の原料「てんさい」は、同じ「フダンソウ属」の仲間で葉の形が似ています。
【砂糖の原料:甜菜(テンサイ)】
いろいろな名前と分類上いくつかの種がありますので、ここで整理したいと思います。フダンソウは亜種がありまして、在来種と西洋種に分類されます。
在来種は比較的葉が他の物より小さく、葉茎が緑です。
西洋種は、葉が大きくて茎の白いものと、茎の色がカラフル(赤やオレンジ、黄色)なものがあります。前者は白茎種と呼ばれ、現在栽培されているふだん草の多くはこの種類になり、癖が無く柔らかいです。「うまい菜」、「いつも菜」、「ンスナバー」がこれに該当します。
【フダンソウ:白茎種】
カラフルな後者は「スイスシャード」と呼び、ゆでてもあまり色落ちせず、料理に彩りを加えたいときなどにも良いです。
【フダンソウ:スイスチャード】
種の殻は非常に硬く、ごつごつした殻の中に数粒の種が入っています。
播種前日に一晩水につけてから播種します。発芽温度は25度前後で、生育適温は15〜20度と限定的ですが、暑さ寒さに強く、ビニールハウスや暖地の露地栽培ではほぼ一年中育てることができます。
【寒い冬ロゼット状で寒さを乗り切る フダンソウ】
フダンソウの種は面白い性質がありますので、少々話を脇道寄りします。
雑草のこぼれ種は発芽条件が整うまでの長い間、土の中で休眠出来るものがあり、干ばつや長雨などで仲間が枯れてしまっても、時を越えて永続的な種の継続が可能なものがあります。古代ハスの種が現代によみがえった話は有名です。
畑の土を天地返した事で土中で眠っていた種が表層に移動し、発芽条件が整って一斉に雑草が発芽する事があります。プランターでフダンソウを育苗した土を、翌年他の野菜に利用した場合、突然フダンソウが発芽する事を何度か経験しています。これは自然農法を考えた時に、こぼれ種による永続的な栽培が出来る可能性が強い野菜だと思っています。
フダンソウは、一度越冬して2年目以降にトウ立ちして、ホウレンソウと同様に目立たない花を咲かせます。自分の株だけでは種が出来ず、他の株の花粉を受けないと結実しない他家受粉です。
【トウ立ちした、フダンソウ】
ホウレンソウより育てやすいフダンソウ。
あなたも育てて収穫してみませんか?