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「甘えるな」の後ろ側

子供の頃の話

息が苦しい。また喘息の発作だ。
親に見つかると、叱られる。
気が緩んでいるからだと、叩かれる。
だから、弱音は吐きません。

思いっきり走ると、誰でも呼吸が乱れます。
ハーハーと呼吸を徐々に整える。
でも、そのまま呼吸が戻らず発作が始まる。

ウソのような本当の話。
だから私は、思いきり身体を動かす事が怖かった。

テレビを見ていたら、面白くて大笑い。
笑いがきっかけで発作が始まり、苦しくなる。

ウソのような本当の話。
だから、思い切り笑うことも怖かった。

息を吸えても、吐く事ができない喘息。

私は呼吸と同じく、自分を出す事ができなかった。
なので、人と通じ合う事ができなかった。

通じ合えないので
はっきりと見えない、はっきりと聞こえない。

水の中から、周りを眺めている。
それはとても静かな、ひとりだけの世界。

好きでやっていた訳じゃない。
この水の中から抜け出す方法が、わからなかっただけ。

自分を臆する事なく表現できて、誰とでも通じ合える。そんな未来を、夢見ることもなかったな。


自分を表現しようと思っても
上手く出来ない人も居るのだ。

そんな姿を見て
甘えるなの一言で片付ける人がいる。

はっきりしなさい!
と言われても、黙るしかなかった。

今なら分かる。
甘えるな!の言葉の背後で、
私も甘えたいと叫んでいる。

子供の頃の話です。

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