体感を尊重する
歩くことを覚えた幼児が勢いよく歩いていました。すると突然転んでしまい今にも泣き出しそうです。
慌てて駆け寄ったあなたはなんと声をかけるでしょうか。
こんばんは!突然質問から始まりましたが今回は声かけの中でも相手の感覚受容レベルについて考えてみたいと思います。
さて、先の質問ですが例えば以下のように声をかけるのではないでしょうか。
「大丈夫?痛かったね〜、頑張って歩いたもんね〜。」
多くの方はこれに近い言葉をかけるでしょう。
この一言には次のような要素が含まれています。
①心配(受容)
②感覚理解(共感)
③経緯理解(エピソードの共有)
④激励(賞賛)
ほとんどの人はこれらの要素を「伝えたい!」と考えて言葉をかけません。条件反射的に声をかけるのですがあえて要素を抽出してみました。
今回は②の感覚理解です。
発達課題がある場合、五感のうち一部に突出して反応しやすい感覚があったり、全部の感覚が敏感だったりと目立って反応しやすい場合があります。
しかし大人でも辛さの感じ方が異なるように感覚の捉え方も人それぞれです。
最近ではHSP(ハイパー・センシティブ・パーソン)といって周囲の音やにおいに過剰に反応してしまう傾向にある人をこの枠で捉えられるようになりました。下記のコラムで気質傾向を指す、と記されているように特定の病気や症状を示すものではないと考えられます。
新宿ストレスクリニック「HSPとは」
さて、こうした感覚過敏について理解するためにはまず、あなたの感覚がどれほど他者と一緒なのか、ということについて考えてみましょう。
先ほど辛味について触れたのでそのままカレーを例に出してみましょう。
カレーには某チェーン店でも採用されている「1辛」「2辛」「3辛」のように辛さを選択することができます。これは店舗側の「辛さを選ぶことができるように」というサービスでもありますが、裏を返せば「味覚は個人差があるよ」ということを示しています。
そしてこれと似たようなことが聴覚・視覚・触覚・そして相手の気配への反応など様々な感覚で怒っています。
でも、他者の聴覚や視覚・触覚、ましてや相手の気配なんて分かりづらいですよね。
そこでカギになるのが①の「まずは受け止める」ということなのです。
このとき気を付けたいのは相手の年齢や他者との比較を抜きにして受け止めるということですね。
そして②をどのように行うのか。それは私たちの表現力によって大きく左右されます。
例えば「痛み」ということを表す際にはズキズキする、ジンジンする、ひりひりする、えぐられた感じ、殴られたように痛い、このくらい押すと痛い、衝撃的、雷が落ちたよう、そしてユーモアに「まるで象に踏まれたみたい?」
と運んでいく。
一回で理解されることは望んでいないし、だからといって放っておかれては悲しい。それでいてこの気持ちも盛り上げてほしいという(少しわがままでもあるけれど)状態にあるのです。
これは聴力や視覚であっても同じプロセスを踏むと考えて良いでしょう。
特に10歳ごろまでは自分の感覚が他者と同じと理解しているので、自分が苦痛なのに他の人が平気なのは自分が弱いからだ、と自己解釈しやすい。ですから大人が
「あなたにはあなたの感受性がある」ということを伝えていかなくてはなりません。
個別性を尊重するということはこうした観点からもできるので、もし何か感覚的に苦しんでいると相談があったらまずは
「それは困ったね。」
から始めてみてください。
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