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マンガ感想『サトコとナダ』


           LINEマンガ 作品情報欄より

漫画のあらすじ

日本人の大学生サトコとサウジアラビア人のルームメイト ナダのアメリカ留学生活を描いた4コママンガ
二人がほのぼのとした日常を紡ぐ中で、お互いの文化を尊重し友情を深め合う姿がフラットに描かれている


きっかけ


先日別の記事でドバイ王族女性の国外逃亡について触れたが 物事を負の側面に偏らず多面的にとらえたいという個人的こだわりから、
少し前に読んでとても気に入ったこのマンガについてここで触れておきたいなと思った


私はここ数年、長期休暇が取れる度ドバイを訪れている。
宗教だけでなく経済・気候・人種・食事 あらゆる面で日本と大きく異なる中東のイスラム文化圏の国。
もしも自分がこの国に生まれていたらどんな人生だっただろう? あそこで出会ったあの人は何を思いどんな日々を過ごしているのだろう?
旅のあれこれを振り返り 異世界転生気分で妄想がとまらない。
イスラム文化圏の人々の暮らしのリアルをもっと知りたくて LINEマンガにて発見した本作を離陸直前に課金し帰りのフライトで一気に読み切った。


感想

二人の関係性が尊い

サトコとナダの距離感がいい。
お互いを尊重し相手を信頼し合えているからこそ 自分のやり方・思いを相手に率直に伝え合えている
こんな関係性 本当に憧れるし 尊い。

サトコはナダ自身を見て友達になっているのがいい
作中でナダは、サトコと出会う以前に何度もルームメイトを断られていた。また、ナダを「サウジアラビア人でヒジャブに身を包んだ女性」 というカテゴリーで捉えて 『早く移住したら』『こわい国だね』『かわいそう』といった印象を勝手に持つ人も多かった。

しかしサトコにとってのナダは
オシャレで、甘いものが好きで、世話焼きで、エネルギッシュな可愛いらしい女の子。
もちろん初めはサトコもとまどいがあったが、すぐに打ち解けられたのはナダの人柄あってこそなのだろう。

ナダのカッコいいところは
自身の宗教・文化と他国の違いを冷静に受け止めて、決して他者を批判することなく自身のアイデンティティを大切にしているところだ
自身の立場か少数派であればなおさら 多数派への批判精神がもたげてもおかしくないものだが ナダは「みんなからすると可哀想に見えるのかもしれないけれど、私に取ってはこういういいところがあるのよ」とフラットに伝えられている。

攻撃は最大の防御 なんて言葉もあるが
やっぱり私は北風と太陽を推したい。

自分の立場を伝えたかったら
相手を批判するところから離れて
あなたの立場をとても尊重しているけれど 私にとってはこんなふうに利点があるものなのだ
と 二項対立派から離れた伝え方ができるようになりたいものだ


・・脱線したが
ふたりにはとことん価値観の押し付けがない。
相手が大切にしているものを踏み躙らないこと。
相手を尊敬していたら自然とできることなのかも。


それだけがナダ達の全てじゃない

漫画の一コマで イスラム文化に懐疑的な日本人留学生に対しサトコが伝えた一言

イスラムの礼拝では女性は男性より後ろで祈るというしきたりに触れ

『なんじゃそりゃ〜って感じだよ。
でもそれだけがナダ達のすべてじゃないってわかるでしょ』

『サトコとナダ4』17頁

ほんとそれなのだよね。

『名誉殺人も割礼もコーランで命ぜられたことじゃない』
『ヒジャブをかぶれともどこにも書いてないわ
髪とか腕を隠した方がいいよって書いてるのを 私たちの祖先がそれぞれ解釈して今の形があるの』
『”教え”ではなく地域の文化なの』

『サトコとナダ3』100頁

コーランの教えに対し それを解釈して受け継がれてきた文化
解釈は受け手によって異なり 一部過激な解釈をする人もいる

名誉殺人や 肌を露出した服を着た女性を罰する などは実際に起こってしまっているいたましい事事実だ


でもそういう人はあくまでも一部であって
全員が同じ解釈をしているわけではない

どの社会にも モラルを振りかざして人をジャッジしたり罰することで自己肯定感を得ようとする人はいるし(いましたよね、マスク警察とか)

階級意識を利用して対立構造を作り集団を操作しようとする為政者もいる(江戸時代の部落差別や、近年だと移民を排除する発言で白人低所得層を煽る某国次期大統領とか・・)

どの社会にも大なり小なり歪みはあって
でもそこに生まれ育ったら住み心地も良く愛着もでてくる
多くの人は 不都合や不満も感じながらも その中で折り合いをつけてうまいことやっているのだ


ナダのように父母兄妹に大切にされ育ってきた子にとって 家族も大切にしてきた伝統の暮らしを自分もつむいでいくというのはごく自然に受け入れられること 多少の不便があろうとその中で見出せるかけがえのない幸せを知っているから。

だが逆にもし 家族に恵まれず 宗教を過激な解釈で自己満足のために濫用するような人に当たってしまったら 宗教もろとも反発の対象となり この社会から逃げたい という気持ちになるだろう

おわりに



世界的にもますます注目が高まるエリアらしい

世界の宗教別人口は現在キリスト教徒が最大勢力だが、2070年にはイスラム教徒とキリスト教徒がほぼ同数になり、2100年になるとイスラム教徒が最大勢力になるという

イスラム教徒、2100年には最大勢力 世界の宗教人口予測:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM04H0I_W5A400C1EAF000/


来年もドバイに行くぞ。
次回は現地の友達が作りたいなぁ

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