【読書記録】2020年11月(後半)

ごきげんよう。ゆきです。

11月後半の読書記録、スタートです。

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一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう…。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。最後の一行を、読んだとき、あなたは著者が仕掛けたたくらみに、戦慄する!

私の中でイヤミスの女王といえば湊かなえさん一択だったのだが、知らないところにトンデモナイ方がいたんだなと衝撃を受けた。印象としては湊かなえさんを煮詰めて煮詰めて3倍量にした感じ(伝われ)。どちらがすごいという話ではなく、どちらもすごい。

1人の女性が殺人鬼になるまでの半生を描く物語。「目を背けたくなる表現」という言葉をよく耳にするが、序盤はまさにそんな表現のオンパレードだった。小学生フジコのパートが1番読んでいてしんどい。「いやいやこれはあり得ないでしょ」と頭の片隅で思いながらも、描写がリアルゆえにどんどん引き込まれていってしまう。しかし、これだけ没頭してもフジコに一切の共感も同調もしなかったのは作者の筆致の力だろう。ホッとしている自分がいる。

この小説の面白いところは、あとがきが物語の核を担っているところ。章の1つでもなく、エピローグという名を掲げることもなく、ともすれば見逃してしまいそうな”あとがき”として存在しているその部分は、それまでの物語を丸ごとひっくり返してしまう中身を秘めている。普段あとがきをすっ飛ばすタイプの読者が、ここで本を閉じないことを切に願う。ここで閉じたらこの物語の真髄に一切触れないことになってしまうのだ。恐怖はまだまだこれからだぞ。

ところで、あらすじにある「最後の一行を、読んだとき」という表現は誤解を招くと思う、正しくは「本編のエンディングの意味を知ったとき」ではないだろうか。キャッチーを求めて内容を噛み砕き過ぎるのはよくない。

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hhttps://www.amazon.co.jp/インタビュー・イン・セル-殺人鬼フジコの真実-徳間文庫-真梨幸子/dp/4198936242

一本の電話に、月刊グローブ編集部は騒然となった。複数の男女を凄絶なリンチの果てに殺した罪で起訴された下田健太。その母である下田茂子が独占取材に応じるというのだ。茂子は稀代の殺人鬼として死刑になったフジコの育ての親でもあった。茂子のもとに向かう取材者たちを待ち受けていたものは……。50万部突破の大ベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』待望の続編。本書を読み終えた時、あの『殺人鬼フジコの衝動』のラストをもう一度読み直さずにはいられない!


11月前半の読書記録で「基本的に続編があっても続けて読まない」という旨の記述をしたばかりだが、普通に続けざまに読んだ。但しこちらに関しては登場人物に感情移入したからでも、世界に浸りすぎたからでもない。「今読まなかったら一生読まない」と確信していたからだ。それだけフジコの闇は重い。

ただ、続けて読んで大正解だった。前回の衝撃はそのままに、前作で不明瞭だった部分が明らかになったりもするので、内容を新鮮に記憶しているうちに読むことをオススメする。

フジコの育ての親の一人息子が凄惨な事件を起こしたものの、裁判で無罪判決となったところから物語は始まる。雑誌編集者とテレビ局お抱えの脚本家が、フジコの育ての親にインタビューを試みながらストーリーは進む。タイトルにもあらすじにも"インタビュー"とあるので紛らわしいが、物語中にインタビューシーンはほぼ無い。過去の記録や回想から真実に迫る、湊かなえの『告白』を想起させる作りになっている。読みやすい。

内容のしんどさは前作が上だったが、ミステリー感で言うと今作の方が大きい印象。どちらも最後にあっと驚く真実があるので、そういった物語が好きな人にはハマると思う。前作も今作も、ミソになるのは母娘の遺伝だ。

ところで、子を虐待死に追い込んだ親の報道を見ていると「自身も虐待された経験があり〜」と紹介されることが多いのは気のせいだろうか。もちろんその人間に育てられているので少なからず何かしらの影響はあろうが、虐待された経験があっても立派に育った人だって沢山いるだろう。前述のような報道の仕方で「虐待経験がある人は自分の子供も虐待しがち」みたいな変なバイアスを生んでしまうのはいかがなものかと思う。「容疑者はアニメやゲームにはまっており〜」みたいな報道も然り。人を殺めるのは悪いこと。そこに趣味だの過去だのを結びつけるのは部外者の下世話な好奇心に過ぎない。

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元アイドルの小川ルミに、初めて主役の話が舞い込んだ。高視聴率の再現ドラマ番組で「殺人鬼フジコ」を演じることになったのだ。フジコは十五人も殺害した平成の鬼女として、世間で大きく騒がれた犯罪者だった。大きなチャンスに、ルミは全霊を賭けてフジコを演じようと試みるが……。ベストセラーとなった戦慄のミステリー「殺人鬼フジコの衝動」と、その続編『インタビュー・イン・セル』の間をつなぐ短篇が電子書籍で登場です!

『インタビュー・イン・セル』読了後、「こちらもおすすめ」とkindleが提示してきたこちら。インタビュー読む前に読みたかった……。これからフジコを手に取る方はご注意を。100円ちょっとで20ページの超短編番外。読んでおいた方が楽しめると思う。『〜衝動』の方の限定盤に収録されていたものだそうだが、だったら初めからまとめて売ってくれ!と思った。しかしまぁまともな生き方をしている人間がいないなこの小説。一気に読んだ疲労感がすごい。

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ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題されたノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。
この一家の過去にいったい何があったのか?絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!
まほかるブームを生んだ超話題作、ついに文庫化!

前半を読んだ感想は「フジコだ……」だった。フジコが自分の邪魔な物を排除していくタイプの身勝手なサイコパスだとすると、こちらに出てくるのは人を殺める事が心の拠り所となっている純度100%のサイコパス。

またこんな本を選んでしまったのか……と若干鬱々としながら読み進めていた私はまだ知らなかった、この本を閉じる頃には溢れる涙を懸命に堪える必要があるということを。

前半と後半でこの本に抱く印象はゆっくりと、だが確実に変わっていく。根っからのサイコパスが人を愛すること、人に愛されること、人生の楽しさや幸せという感情を知ったときに見えてくる世界の、なんと鮮やかで哀しいこと。人を愛することはこんなにも苦しい。

めちゃくちゃ豪華なキャストで実写化されているのを知っていたので、読了後に映画のネタバレを見てみた。どうやら若干小説と展開が異なるらしい。映画を観てはいないのにこんなことを言うのは失礼極まりないが、私は小説以上のエンドは無いと思っている。それくらい、小説は文句無しの哀しく儚く美しい締めだった。

映画に関して「所詮サイコパスだし感情移入は出来ない」という口コミを多々目にしたが、それなら小説を読んでほしい。否が応でも、そのサイコパスに同調してしまう箇所があるはずだ。少なくとも私は、何度も何度も自分の胸が締め付けられるのを感じていた。ここで描かれている愛の大きさを2時間程度の映像にまとめるなんて、はなから無理な話なのだ。

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あまりにも重すぎるラインナップでお届けしました……。今はとにかく、誰も死なない本が読みたいです。

本はその時の気分で買っているのですが、似たような内容を選んでしまっているためか、サイコパスだったり親からの虐待だったり完全犯罪だったりという設定を何度も読むことになっています。書きやすいテーマなんですかね。おかげで、人は失踪届を提出されてから7年後に死亡扱いになる、という知識が私の中で定着しました。できれば一生使いたくない知識です。

11月はシリーズで読むことが多かったので、来月はいろんな作家さんの本を満遍なく読むことをテーマにしようと思います。リクエストやオススメ本などがあればコメントいただけると嬉しいです!

See you next note.

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