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エッセイ? 日記? 雑文?

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#短編小説

日記#25『液状の寂しさ』

ついこの間までは夏だったのに、あっという間に冬になった。冬になってようやく冬服を買った。冬は夏よりも好きだ。だけど冬特有の寂しさがやって来て僕をいじめる。冬を共有できないという寂しさ。僕はこの冬を一人きりで乗り切らなければならないという絶望。
駅前はイルミネーションが施されて、浮き足立っている。僕だけがしっかりと地面に着地している。はずなのに、ずぶずぶと沈んでいくような感覚にとらわれる。
世界は僕

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かく語りき・飛んだ虫、雨に墜つ

虫は飛んだ、空を夢見て。そして死んだ。
22日に給料日が入って、嬉しい反面、このまま1ヶ月間この給料は増えることなく減ってく一方なのだと思うと悲しくなった。僕は貯金なんてしてないから、増えることはない。じゃあ貯金しろよってね。
うるさいバカ、何万と貯金したって死ねば使えないんだぞ!
僕の貯金肯定派と否定派が争った結果、否定派が勝った。というより欲に負けて好き放題使ってるだけだ。まぁいいや、今が良け

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八月某日、赤パチ、猫の轢死体

夏といえば、朝焼けだ。というのも僕は七月、八月にかけての夏、ホテルの朝食番として働いていたからだ。朝の四時くらいには起きて、六時前にはホテルで働いていた。朝食番というのは平日は忙しくないものなのだが、夏だけは違った。常に百人程度の宿泊者が朝ご飯を食べに来ていた。
朝焼けは好きだった。キラキラしていたし、何より、駅のホームには誰もおらず独り占めしているような気分が好きだった。惜しむらくは高いところか

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反復横跳び、馬鹿の一つ覚え

特に言うことはないけどさ、と僕はいわれた。含んだ言い方に「すいません」と何かをした訳でもないのに謝った。謝ったもん勝ちだ。向こうが気に障っていたのなら謝って正解だし、向こうが何も思ってないのならこっちが謝り損するだけ。なんて素晴らしいことだろう。少なくとも、怒られることはない。僕の自尊心だけがガリガリもかき氷機のように削られて溶けていくだけ。
僕の知人ももう何人かが仕事を辞めた。新しく仕事をする人

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夏のサ終

夏のサ終

もう夏は終わりました。今は夏ではなく、残暑という最も要らない季節です。秋ほど涼しくなく、夏ほど煌びやかではない季節、それが今。夏を取り戻そうと必死に足掻き、無駄に終わる今。昨日は半袖、今日は長袖、明日は半袖、それが今。カンカン照りだったはずがやたら重い雲が空を支配する。タバコを吸うと蚊に血を吸われるのに、少し肌寒い。
曖昧で、ぼやけてて、どうしようもない人達からエモい、なんてバカにされる季節。

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