雨の袋
風神、雷神、雨神の三人の若い神様がいた。
彼らが成人すると、それぞれに袋を父神から授かった。風神の袋には風、雷神の袋には稲妻、雨神の袋には雨が、いつも満タンに詰まっている。
雨神は、袋の重さにうんざりしていた。他の二人の袋は軽い。
「頼むよ、私の袋と取り替えて欲しい」
「お前は雨を司る神ではないか、交換してどうする」風神は諭す。
「袋が重いのであれば身体を鍛えよ。私も稲妻の制御に苦労しているのだよ」雷神は言葉をかけた。
父神は、そんな雨神を神としての自覚がない故と叱った。
面白くない雨神は、思わず雨の袋を地上の川に投げ捨ててしまった。
川は増水して暴れ川となり、人々は逃げ惑う。
雨神は慌てて雨の袋を回収し、袋の中の水を頭から浴びた。すると彼は龍の姿に変わる。
彼は、水を得た魚のように自由に空と大地を飛び回り、神としての務めを忙しく果たし始めた。
喜んだ父神は、雨神を龍神と名を改めさせた。
雨の袋は龍の玉となり、龍神を守ったと伝わる。
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俵屋宗達の風神雷神図を初めて見たのは中学の教科書だったかな。
その時思ったのは、なぜ雨の神様が描かれなかったのか、という事。雨って、とても大事だから。
まあ、迫力という点では不足だろうけど。
で、こういう出来事があったので、俵屋宗達は風神と雷神の姿しか描かなかったと勝手に思う事にしたのです。ほんまかいな。
ちなみに宗達は、雲竜図屏風なども描いています。