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引き出し(140字小説)

古い棚の一番上の引き出しが開かなくなって久しい。歪みによるものだろう。
母は言う、多分大事なものが入っていたと。
私も全く覚えていない。
それが無くても困った事は無いと母は話すが、何か引っかかるようだ。

棚を買い替えた。
古い棚の引き出しが、弾みで開いた。

中にあったのは、私の臍の緒だった。



臍の緒は、母と子の最初の絆。
結婚した時、夫の母に一番最初に頂いた?ものが、夫の臍の緒。これ、どうすれば良いのかしら?
私のものは、すでにありません。



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