脳卒中後遺症 〜痙縮について〜
脳卒中後に「手足が突っ張る、強張る」など、勝手に筋肉の緊張が高まりコントロールがうまくできなくなる痙縮という症状があります。
今回は、リハビリの阻害因子である痙縮について解説していきます。
痙縮について
脳卒中後の麻痺の特徴として、痙縮により上肢屈筋優位、下肢伸筋優位の姿勢(ウェルニッケマン肢位)が特徴です。
そして、麻痺側の手足では腱反射の亢進、他動的に動かそうとすると筋が抵抗したり、自動的に動かそうとすると拙劣さやパターン化した動きしかできない状態になります。
痙縮については、脳の損傷がきっかけで脳からの筋肉への運動を調整する司令が適切に送られなくなることで起こると考えられています。
脳は筋肉を動かすだけでなく、余計で無駄な緊張を抑えるような司令も出しているのです。
なので、痙縮については脳からアプローチ方法を考える必要があります。
まずは痙縮が起こる原因から解説します。
痙縮(けいしゅく)は4段階ある
痙縮はただ緊張が高まる症状と思われがちですが、段階的に症状が変化していきます。
自分がどの段階なのかを把握した上で適切な介入をしていかないと変化をすることはできません。
痙縮の段階
伸張反応の異常
放散反応
原始的運動スキーマ
運動単位の動員異常
1.伸張反応の異常が制御できない
伸張反応とは「手足をストレッチされた時に筋肉がぎゅーっと固くなりが伸びにくくなる」という現象です。
病院で腱反射(脚気)をされたことがあると思います。打鍵機で膝の下をコツっと叩かれると膝が伸びる現象です。
脳卒中により脳が損傷することで、この脊髄レベルでの反射に異常が起こり普段は起きない筋肉も動かされるとぎゅーっと緊張が高まりやすくなります。
伸張反応の異常は、筋肉が動かされたといった感覚を脳がキャッチすることができず、「急に伸ばされた!危険だ!」と判断することで起こります。
2.放散反応が制御できない
放散反応とは「身体の一部が、随意的な努力、または反射による刺激によって、動作を行おうとすると、身体の他部位の肢位が変化する自動的な動作である」
例)腕相撲をするときに反対の手足の緊張も一緒に高まる。etc
健常者でも起きている現象ではあるが、脳卒中片麻痺の方は「歩くときに腕がギューっ曲がってくる」「手指を動かそうとすると肩や体幹も動く」など放散反応によって他部位への影響が出やすくなります。
3.原始的運動スキーマが制御できない
原始的運動スキーマとはパターン化された動きです。
例えば上肢の例だと「手で物を掴んで動かそうとした時に手関節屈曲、肘屈曲、肩甲骨挙上・後退」のパターン化した動きになりやすくなります。
これは脳が複雑な動きを選択することができず、簡単な単調な動きを選択して筋肉へ指令を出すために起こる現象で、脳が体の細かな感覚を感じることができないことが原因だと考えられています。
4.運動単位の動員を制御できない
「麻痺によって力が入りにくい」この原因は筋肉の量的な問題ではなく、質的な問題だと言われています。
先に説明した1.伸張反応の異常 2.放散反応 3.原始的運動スキーマによって脳が細かな筋出力が調整できなくなることで4.運動単位の動員異常が起こります。
運動単位の動員とはより細かな筋出力の調整になり、脳卒中片麻痺ではスピードを要する動きや目的に合わせた力の入れ方といった協調性が著しく低下します。
痙縮のリハビリのポイント
痙縮のリハビリのポイントは「正しく動かし・正しく感じる」ことを脳に学習させることです。
そして、脳の学習=痙縮からの回復につながります。
単純な動きから複雑な動きへ
痙縮の4分類で説明したように、痙縮は段階的に変化していきます。
いきなり歩行や物を持つなど体全体を動かすような複雑な動作でリハビリを進めて行っても脳が混乱して痙縮が強くなる可能性が高くなります。
まずは、「肘を動かした感覚がわかるか?」「膝や股関節がどのように動いているか?」など単純な動きから感覚を感じることから始めましょう。
そして、感覚が分かり動かしても緊張が高くなりにくくなってきたら、徐々に複雑な動作へと繋げていくことが脳の学習としては重要です。
感覚への意識は「ゆっくり」と「予測」
脳を変化させるためには感覚を感じることが重要であり、感覚を感じやすくするためにはポイントはあります。
それは「ゆっくり動かす」「予測」することです。
痙縮は動きの速さに依存して出現しやすくなり、早く動かそうとすればするほど痙縮がでやすくなり、結果的に感覚を感じにくくなるのです。
つまり、ゆっくり動かすことで筋肉が伸び縮みしている感覚が脳に伝わりやすくなり、痙縮が起こりにくくなるのです。
また、体を動かす前に「肘が曲がる感じはこんなんかな〜」「足首を動かす時はアキレス腱がグーッと伸びるな」など予測を行うことで、脳が感覚を感じる準備ができます。
このことによってより感覚を感じやすくなります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回はリハビリの阻害因子でもある痙縮について概要をまとめました。
痙縮について理解していないままリハビリを進めても結局つまずくだけになります。
また痙縮とは脳の問題で最終的にはご自身でコントロールしていかないといけないものです。なので、セラピストにしてもらう「受け身」のリハビリでは根本の解決にはいたりません。
まずは自分で理解し、実践してみましょう。