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日常に遊びを取り入れて、今を味わおう

久しぶりに読み応えのある本を読みました。精神科医の泉谷閑示氏による「仕事なんか生きがいにするな 生きる意味を再び考える」(幻冬舎新書)です。

この本では、博識の著者が古今東西の知識人の文章を丁寧に解説し、人間の生きる意味について考察しています。

衣食住に苦労していたハングリーモードの時代は生きるのに精一杯で、「自分が何をしたいかわからない」などの「生きる意味」に関する悩みはあまりなかったそうです。でも豊かな現在はそのような自己存在の意義の悩みが若者の悩みの多くを占めているそうです。

そこで普通なら「仕事で自己実現をしよう!」となると思うのですが、著者
現代の仕事だけでは、生きる意味を実感することは難しいと言います。なぜなら、産業革命以後、「仕事」は「労働」に変わってしまったからだそうです。人間の熟練や専門によってなされていた本来の「仕事」が、大量生産を目的に、バラバラに分業化された「労働」に変えてしまった。そのような「労働」では仕事本来の喜びは感じにくいとのことでした。

そこで筆者が提案しているのは、「本当の自分」を外の世界である職業にだけ求めず、日常の中にも見つけてみようというものです。日々の生活の中に、たとえわずかであっても「遊び」を取り入れることを推しています。

そうは言っても、大人の私達は「効率的に無駄なく、損しないように動く」という考えで仕事中だけでなく、プライベートな時間も過ごしているため、遊びが苦手になっています。でも遊びはそもそも、無駄の上にこそ成り立っていて、結果は二の次で、過程を楽しむものです。

そこで、遊びが苦手な「頭」の計画性や合理性に対抗するために、筆者は日常では敢えてその対局である「即興」という概念を積極的に用いることが有効であるとしています。例としては、

  • 散歩に行き、好きな方向に心のままに行ってみる

  • スーパーに行く時に、買い物リストなど持たず行って、適当に買って、料理してみる。

  • 料理する時敢えてレシピを見ずに作ってみる

  • 何を買うか決めずに本屋に行き、ウロウロして、いつもは読まない本を読んでみる

  • 習いたいことや楽器などを気軽に始めてみる。遊びだからプロになる必要もなく、続けなくてもよい。先生に習う必要もなく、独学でもOK。

このようにすると、日常が冒険になり、「今を生きる」「今を楽しむ」という人生を味わる感覚が生まれるそうです。すなわち、それが生きていることだ、と。

私も早速、普段はやらないであろうことをしてみました。さっき室内着のまま、コートだけ被って、近所のパン屋に行って、ちょっとブラブラしてきました。いつもは外出する時は、外用の服に着替えて、傘やちり紙などの持ち物を整えてから家を出るのですが、今日はほぼ手ぶらで、即興的に行動してみました。たったこれだけのことですが、ちょっとエキサイティングで、非日常で楽しかったです。そんな時に限って、雨に降られましたが(笑)。

きちんとしていて、「石橋を叩いて渡る」という人が多い日本人にこそ、プライベートで取り入れたい考え方だと思いました。

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