エナメル質薄いねぇ
近所の歯医者に初診で診てもらった時に、開口一番、驚きと気の毒が混じった声で言われた言葉である。
6月4日はムシで歯の予防DAYということで、6月は学校に歯磨き粉と歯ブラシを持っていき、歯の磨き方の講習を聞いて、そして皆でお昼ご飯を食べた後に歯を磨く、ということがあった。
今も行われているのだろうか。
そして歯の検診が学校で行われ、夏休みに入る前に検診結果を渡されて、夏休みの間に虫歯を治しておきましょう、とプリントを渡される。
私は小学校6年間毎もらってきていた。
歯は毎日寝る前に磨いていたけれど、磨き方が悪かったのだろうか。
母親は大変だったことだろう。
生え変わるというサメの歯が欲しかった。
そんな私なので、歯はなかなかなのラインナップである。
下の奥歯は小学校低学年で抜いた。左右一本ずつ。
歯医者でこれでもかってくらい大泣きした思い出。
まだ成長過程だからと抜いたところはそのままでと言われ、大分経っていつかは忘れたけれど、抜いたところをそのままにしておくと歯が傾くからと言われ、銀歯か何かを仕込んだのだが、後に右側がよく外れてしまい、最終的にブリッジを施した。当時で八万かかった。でもそれからはびくともしなくて今にいたる。
被せの治療歯もあるし、銀歯もあるし、歯を抜き、神経を抜いたところもある。
ちなみに親知らずは4本しっかり生えて、これも虫歯により上2本は既に抜かれている。
ところで私は幼い頃は経済的理由により、家で父親に髪の毛を切ってもらっていた。
なので美容院に初めて行ったのがかなり成長してから。
そして美容院では「今日はどうしますか」とか「長さはこれくらいでいいですか」とか色々要望を聞いてくる。
私の髪の毛は多い太い硬いくせ毛のオンパレードで、伸ばしてゴムでくくる一択で、早くからスタイリングするということを放棄していた。
パーマをかけたこともあるけれど気に入らず。
だから正直そのように聞かれても「いい感じにしてください」と答える、美容院泣かせの髪質。
歯医者は、というと、どうしました~ここが痛いです~ああ虫歯ですね~治療しましょう
の会話で終わるので、美容院に行くより歯医者に行く方が敷居は低かった、というはたから見たらちょっとおかしな感覚が身についた。
とはいえ、やはり歯医者に行くこと事態は億劫。
ある夜、気にはなっていた歯の裏側にあった穴が限界を迎え、とうとう痛みが引かなくなり、眠りにつけなくなった。
家にある氷を使い果たし、それでも当然痛みはひかなくて翌日、会社を休みにして歯医者に飛び込み、案の定抜くことになった。
麻酔をされ、歯を抜いた後、なんと私は歯医者のあの椅子の上で寝てしまったのだ。
痛みが引いた途端に眠気が襲ってきたのだった。
歯医者は引っ越しなどの理由により、数回変えているが幸いにもいわゆるヤブ医者には当たっていないようである。虫歯の頻度の多さは全ては私の歯の磨き方によるものだろう。
実は今の近所の歯医者に行く前、ある歯が治療途中になってしまっていた。
後数回で終わります、と言われた後に引っ越してしまったのだ。
心に引っかかってはいたのだが、引っ越し先ということもあり、近い歯医者の場所や評判などがまだ把握出来ていなくて、しばらく放置していた。
が、ある日、虫歯の痛みというほどではないが、なんだか鈍痛を感じる。
意を決して、悪い評判は聞かない、近所の歯医者の門をくぐった。
この時に言われたのが見出しの言葉。
『エナメル質薄いと虫歯になりやすいですか』
「なりやすいというか、その下の象牙質に到達するのが早いですからね」
正直に治療途中で放棄してしまったことを告げたが、ここで衝撃の事実が発覚する。
「治療途中はこの歯ですよ」
と、鈍痛があったところとは反対側の歯を示されたのだ
!?
治療途中の歯の位置がいつの間にか私の中で変換されていた。
そんなに長く放置していたのか、その前に、治療途中の歯がわかるのか、さすがだ、とわけわからないところに感動した。
で、その治療途中の歯の処理は数日で終わり、鈍痛の方は昔、神経抜いた後にそこに薬を入れたのだがその薬が切れて、異物が流れ込み、炎症を起こしていたからだという。
その異物の掃除、新たな薬の注入ということで、こちらもそんなに時間がかからずに終わった。
同じ治療をした箇所は他にもあり、ここもそのうち痛くなるかもしれないからその時は又来てね、と言われた。
幸い、痛みはまだない。
そしてこの時、こうも言われた
「歯磨き頑張っているね」
ほ、褒められた!!!
とにかくしょっちゅう虫歯が出来るので、手を変え品を変え、色々と試していた甲斐があった。
就寝前に食べカスが残っていることが一番虫歯になると聞いていたので、就寝前は絶対に歯を磨き終わっていること。
磨いた後はし好品は食べないこと。
もし口にしてしまった場合は必ず歯を磨く、最低でも口をゆすぐこと。
電動歯ブラシは使っていないけどヘッドが取り替えられる歯ブラシを使用している。歯は一本一本磨くつもりで、ということでブラシ部分は小ぶりの物。
細かく振動させるように手を動かしている。しんどいけれどね。
泡立ち過ぎると磨いたつもりになって磨かれていないそうなので、まず何もつけないで一通り磨いてから歯磨き粉を少量つけて磨く。歯磨き粉は絶対フッ素入りの物を使用。
口をゆすいだ後、勧められて歯間ブラシを使用し始めたのは数カ月前。
最後にキシリトール入りのガムを二粒。
適当に長く歯を磨くより短くても正しく磨く方が有効と聞いている。
鏡を見て丁寧に一本一本磨くように心がけている。
時折数十分かけてより念入りに磨いている。
必ずよだれが垂れてしまうので、洗面所占領。
ヘッドは違和感を感じたらすぐに取り替える。頻度は月に一回か二回になる。
CMでラバー素材のブラシが出たと知って早速試してみたが、実は私はアレルギーにラテックス、つまりゴムを少々持っている。
当然というかやっぱりというのか、程なくゴムの味が口の中に残るようになってしまったので、早々に元の歯ブラシに戻した。
そうそう、治療途中放棄を診てもらうために行った時に、別に小さい虫歯が見つかったのだが、それもその日に処置して終わったのだ。
歯医者は早いに限る。
そして
歯の痛みは歯医者に行かないと治らない。
その後、一回検診に行き、歯の掃除だけで「この調子で引き続き歯磨き頑張れ」のお言葉で終わっている。
思い出といえば。
この歯医者の初診時にも歯のレントゲンを撮ったのだが、レントゲン室に連れていかれて、椅子に座らされ、レントゲンを撮るために色々施された。口の中に何かを入れられ、軽く噛んでこのままなるべく動かないでください、と。
そして吊り下げられているレントゲン撮影の機器の位置を定めてスタッフが出ていき、扉が閉まる。
1.5畳くらいの狭い部屋に座ったまま身動き出来ずにいる私一人。
と、私の顔の高さに合わせられたレントゲン用の機械が、「エリーゼのために」の曲を電子音で流しながら私の顔回りを右往左往し始めた。
かなりシュールな光景である。
考えてみてほしい。
狭い部屋の中で何か噛まされて座って拘束されているわけではないのに身動きできない私一人。
♫テレテレテレテレテ~
ゴツい機械がエリーゼのためにのメロディで初期の家庭用ゲーム機の挿入曲のようなチープな音で私の顔回りをウロウロし始めたのである。
普通に駆動音にしておけばいいものを、緊張を和らげるためなのか、はたまた少しでも楽しませようと思ったのか。
笑いがこみ上げてきて、耐えるのに必死だったのだ。
何かの罰ゲームでも受けていたのか、私は。
余計なことは仕込まないでほしい、ホントに。
そろそろ検診に行こう。