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映画『ナミビアの砂漠』感想 好きになれなくてよかった

空虚で無意味で白けている。しかし軽やかで躍動感がある。主人公が診断される病気と同じように、この映画全体が躁鬱を繰り返している。全然こちらが予想している方に行かない展開と、まったく解決しない目前の問題と、ひたすら冷静さを欠いたコミュニケーション。
僕はこの主人公にまったく共感できないし、共感できてしまえなくてよかったと今のところ思っている。同様にこの映画も全然好きではないし、好きになれなくてよかったと思っている。こういう作品に正当な評価を与えたカンヌは凄いし、映画評論家は大変な職業だなとおもう。

主人公を演じる河合優実がとにかく”河合優実”していて素晴らしい。いつもどこか不機嫌で仏頂面で気怠くて、タバコを吸いまくっている。時折はっとさせる美しい横顔を見せる。作中彼女が映っていないシーンはほぼ皆無と言っていいほどの密着ぶり。裸の姿も、彼氏と一緒に1つの便器で小便をする(!)様子も、道を歩いていて急に側転する姿も見事にキャプチャーされていく。彼女の一挙手一投足がそのままこの作品の推進力であり、よすがになっている。ゆえに特に何も起こらないと言えば起こらない。しかしまったく退屈ではない。

あと個人的には唐田えりか、中島歩、渋谷采郁といった濱口竜介組?と共通したキャスティングが嬉しかった。

繰り返すが、全然好きになれなくて本当によかった。今後わかった風な口を利かずに済んで本当によかった。山中監督、次の作品も必ず観に行きます。『あみこ』もこれから観ます。今後の目標は生存です。

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